あそぶだけに見える療育に意味はある?悩んだ母が9年後にわかった、自閉症の“ことばの脳”が育つ時間

自閉症のお子さんは、「あそばない」「反応がない」ように見えることがあります。声をかけても目が合わず、不安になる親御さんも少なくありません。発達科学コミュニケーションマスタートレーナーの今川ホルンさんは、本当に大切なのは「反応があるか」ではなく、「脳が動いているかどうか」だといいます。
子どもの“ことばの脳”を育てるあそびと関わり方のヒントとは? 自身も自閉症児の母である今川ホルンさんの著書より、抜粋してご紹介します。
※本稿は、『ことばが遅い自閉症児のおうち療育実践編 脳を育てるあそび 77』(今川ホルン(著), 吉野加容子(監修)/パステル出版)から一部抜粋・編集したものです。
あそびの時間は、「ことばの脳」をつくる時間
私の自閉症の娘が3歳で療育の親子教室に通い始めた当初、「あそんでばかりで大丈夫なのかな?」「もっとことばの練習をしてくれないのかな……」と思っていました。
娘の最初の療育は、1時間の親子教室でした。
自由あそびをして、朝の会で手あそびと名前を呼ばれ、体操してさようならの会。
先生からは「今日も笑顔が可愛かったです!」と言われ「えっ!?あそびに来ているだけじゃないんだけど……」「もっとことばへのアドバイスはないものか」とモヤモヤしていました。
あれから9年。自閉症の娘が12歳になった今なら、はっきり言えます。「あそび」こそが、ことばを話すための脳を育てる、最高の栄養なのです。
あそびでは、
・見て、聞いて、触れるなどの、動くことで得られる「五感」
・手指を使って何かをつくったり動かしたりする経験
・笑い合うようなやりとり
といった体験ができます。こうした体験が、脳を刺激してネットワークをつくっていくのです。教材やプリントよりも、親とのふれあい、そして笑顔で一緒に楽しむ時間のほうが、ことばの理解は進みやすく、子どもの脳に届いていきます。
あそびの時間は、「ことばの脳」をつくる時間なのです。
とはいえ、自閉症児を育てる親たちは、本当に毎日忙しいです。それでも、たとえ家事を手抜きしてでも、親子で笑い合えるあそびを、脳が発達していく幼児期に子どもに届けてあげてください。
「ことばの脳」を刺激するあそび

脳を育てるあそびに、高価なおもちゃは必要ありません。
理由は2つあります。1つ目は、五感を使えば脳が刺激されるため、高価かどうかは関係がないからです。2つ目は、成功体験を脳に記憶させることが、何より大切だからです。
「見る・聞く・触れる・匂いを嗅ぐ・味わう」ためには、家にあるタオル、布団、お風呂、泡、氷などが立派な道具になりますし、「抱っこしてぐるぐる」といった親子のふれあいこそ、「ことばの脳」を刺激するあそびです。
時間をまとめてとれなくても大丈夫。子どもの集中力や特性に合わせて1分あそんで、3分休んで、また1分、といったように、「できた!」が感じられたら、それで十分です。
むずかしく考えずに、「なにか一緒におもしろがれることないかな?」「これって五感が刺激されるかな?」「反応がなくても脳に届いていると信じてやってみよう!」くらいの感覚でいいのです。
「うちの子とあそぶのは、無理難題です」
「うちの子、全然あそばないんです」
「おもちゃをわたしても、並べるだけ……」
「一緒にあそぼうとしても、マイワールドに入り込んでいて、この子とあそぶのは無理難題です」
実はこれ、自閉症児の親子にとてもよくある壁です。
子どもが一緒にあそんでくれないように見えるとき、それは「あそべない」のではなく、自閉症の脳の特性のために「心地よいあそびが違うだけ」と理解するといいでしょう。
たとえば、
・「人と関わるのが苦手」でやりとりをするあそびがむずかしい
・「見通しが立たないと不安」なので新しいあそびをやろうとしない
・「感覚が過敏/鈍麻」で、特定のあそびだけをくり返してしまう
というような場合に大切なのは、「正しくあそばせなきゃ!」と焦ることではなく、「今その子がハマっていること」に関心を持って寄り添ってみることです。包装紙を触っていたら一緒にくしゃくしゃ音を楽しむ、車を並べていたら「駐車場に停めてくださーい」と声をかけてみる、など、子どもが自発的にやっているあそびに、親が「お邪魔しまーす」と入っていけばいいのです。
高価なおもちゃよりも、“興味”があるもののほうが脳への刺激になります。子どもが「あそばない」わけではなく、“あそびへの入り方”がちょっと違うだけ。その入り口を親が見つけてあげることで、あそびの世界がぐっと広がっていきます。
反応しなくても、脳はちゃんと動いている

あそばない。ママやパパだけノリノリで、子どもは興味なし。それどころか、こちらも見ず、目も合わない……。
そんなとき、頭には「やっぱり無理かも……」という思いがよぎるかもしれません。
けれど、本当に大切なのは「反応があるか」ではなく、「脳が動いているかどうか」です。反応がなく、あそべないように見える子どもでも、ちょっとした工夫で脳を動かすスイッチを入れることができるのです。
●チラ見だけでもOK
ママもパパも、ひとりで楽しそうにあそんでいる姿を見せてみましょう。チラリとでも見てくれたら、その姿は脳にしっかり届いています。
●まねっこあそびから始める
「ママが手を叩いたら、次は○○ちゃんね」と楽しそうに伝えると、“まねをするあそび”として取りかかりやすくなります。最初は親が子どものまねをするのもOKです。
●実況中継の声かけが効果的
子どもが車をじっと見ているだけでも、「赤い車、停まってるね!」「タイヤが回ってるね」と声に出してみましょう。意外と耳に届いているものです。
無理に子どもを参加させなくても大丈夫。あそびの主役は親でもいいのです。反応がなくても、子どもを脳の中ではことばと体験をつなげる作業がちゃんと進んでいます。
「楽しいことが近くにある」という空気を感じることで、子どもの脳は少しずつ安心して、やがて親を見るようになり、そして外の世界に向かって動き始めます。
『ことばが遅い自閉症児のおうち療育実践編 脳を育てるあそび 77』(今川ホルン(著), 吉野加容子(監修)/パステル出版)
脳が育てば、ことばは伸びる!
「うちの子、いつになったら話せるようになるんだろう…」
そんな不安を抱えるママやパパへ。
本書は、『ことばが遅い自閉症児のおうち療育』の実践編。
実際に親子であそんで「ことばが伸びた!」と効果のあったものだけを集めた、あそびで自閉症児のことばを育てる新しいおうち療育の教科書です。






























