“同意”の意味、正しく説明できる? 子どもに伝えるべき「からだの境界線」の話
人間関係の基本となる「同意」の考え方は、子どもの健全な成長に欠かせないものです。自分のからだの守り方、そしてお互いを尊重することの重要性について、児童性被害予防教育の専門家であるキンバリー・キングさんの解説を紹介します。
※本稿は、キンバリー・キング著『子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド』(東洋館出版社)から一部抜粋・編集したものです。
「同意」は性的な活動に限らない
「同意」は、最近の流行語であると同時に、論争の種ともなっている言葉です。多くの大人が、この言葉は性行為に関するもので、性的な活動に対して拒否または同意の意思を示す能力を指しているのだと思いこんでいます。
しかし、「同意」の核にあるのは、子どもたちの多くが家庭や幼稚園で身につける習慣です。そうなんです。落ち着いて聞いてください。皆さんも、おそらくすでに、知らないうちに、お子さんたちに「同意」について教えはじめているのです。
同意についての教育は、誰もがお互いにルールを守り、からだの境界線(自分のからだは自分のもの)を尊重し合うべきであるという考えが出発点になります。つまり、幼い子どもたちに「同意」を教える際に、性行為や性的な活動についての話を出す必要はありません。そもそも、子どもには性的行為に対する同意能力がないので、その点にふれる必要がないのです。
それでも幼いころから「同意」について教えるのは、お互いの安全を保ちつつ仲良く過ごしていくためには、ルールを守り境界線を尊重するのが大切だということを学んでほしいからです。その学びはやがて、性被害から身を守る力につながっていきます。「同意」に関する子どもとの対話は、その子の生涯にわたって意味を持ちつづけることになります。
現時点で、幼い子に対して「同意」という言葉を使うことに抵抗があるなら、別の言葉に置きかえても問題ありません。簡潔な言葉を、一貫性を持って使えれば、それで十分です。たとえば、「許可」はどうでしょう。そしてのちに、親子双方の準備が整ったと感じるときが来たら、「許可」に加えて「同意」という言葉も使いはじめてみてください。
からだの境界線=シャボン玉の中のわたし
わたしが幼稚園で子どもたちに「同意」について教えるときは、自分のからだが大きなシャボン玉に包まれている様子を想像してもらうところから始めます。そして「お互いのからだを包むシャボン玉を大切にしましょう」と伝えます。シャボン玉の中は、その子だけの個人的な空間です。相手のからだを触るには、その子のシャボン玉に入れてもらわなくてはいけません。だから、「いいですか?」と聞かなくてはいけないのです。
同意なく触ろうとするのは、シャボン玉を割ろうとする行為です。シャボン玉が割られてしまったら、それはレッドフラッグだということです。「同意」が必要になる場面は、親子のふれ合いでも、友達との遊びの中でも、簡単に見つけることができます。具体的な例で考えてみましょう。
たとえば、くすぐり遊び。最初は楽しくじゃれ合っていても、くすぐられた子が「やめて!」と言ったら、それは「同意しない」という意思表示です。相手はシャボン玉の外に出されます。それでもくすぐりつづけようとしたら、シャボン玉が割れます。
たとえば、お子さんが、年上のいとこたちとレスリングをして遊んでいたとしましょう。最初は楽しくじゃれ合っていても、からだに触られることが不快に思えたり、その遊びの乱暴さが嫌になってきたりしたら、お子さんはいつでも「やめて」あるいは「もうやりたくない」と言うことができます。その意思を示した時点で、相手はシャボン玉の外に出されています。いとこたちはすぐに息子さんから手を離さなければなりません。そうでなければ、シャボン玉が割れます。
プライベートパーツと「同意」
子どものプライベートパーツにかかわることについては、それが何であれ、子どもだけで同意することはできません。本人の同意に加え、保護者の同意が必要です。子どもの病院受診は、それを示す重要な例の一つです。お子さんを医者に診せるとき、思い出してほしいことがあります。グルーミングの手口「二人きりの状況をつくる」です。 多くの親は、医師という権威ある立場にある相手を、盲目的に信じてしまいがちです。しかし、親からの信頼のもと、子どもと二人きりの状態で子どもに接触できる機会を持つこともできるこの立場は、加害者が職業として選ぶにも魅力的なものなのです。
子どもの年齢を問わず、保護者は、診察室に同席するようにしましょう。
医師は症状を確認するためにプライベートパーツを診察することもあること、しかし、それは保護者が同じ部屋にいてその診察に同意し、その子自身も了承したときに限られる ということを、子どもたちに説明することができます。たとえ医師でも、プライベートパーツにかかわることは親の同意を得なければならないと、お子さんに示すチャンスで す。
「いやだ」を言える・受けとめる
「同意」について理解を深めていくには、子どもたちが自分の感情を認識できるようにし、嫌なときにはきっぱり「いやだ」と言えるよう教えておくことが不可欠になります。わたしが好きなのは、子どもが「いやだ」と伝えるときに使えるさまざまな言い方を、本人たちと一緒に考えてみることです。あわせて「いいよ」のさまざまな言い方を考えてみるのもいいですね。このとき、「いやだ」を伝えられたらどう受けとめるべきかも教えましょう。「そうかな」は「いいよ」の意味にはならないこと、「いやだ」が示されたらそこで頼むのは終わりにする(「だめ」と言われたらすんなり受け入れる)ことは、話しておきたい点です。からだとその働きについて学ぶことが、子どもにとってとても魅力的であることは確かです。子どもたちが自分のからだ、相手のからだに好奇心を持つのは一般的なことで、プライベートパーツを観察することや、さまざまな疑問を持つことも、発達上適切なことです。しかし、そうであっても他人の「からだを包むシャボン玉」は尊重しなければなりません。相手に「いやだ」と言われたときは、それを受け入れなければならないのです。
幼いうちから「いやだ」と「いいよ」の表明と受けとめ―「同意」の実践―を意識させていくと、それはその子のアイデンティティの一部となります。自分の思いをしっかりと伝えられる人間になるのを助けてくれるのです。
「同意」の実践が身についているかは、ほかの子と遊んでいる姿を見ればすぐにわかるものです。追いかけっこをしたり、ブランコを押したり、砂場で一緒に遊んだりする前に、きちんと相手の子に許可を求めているでしょうか?
「いやだ」と言われたときには、それをすんなりと受け入れていますか?
お子さんが「同意」を実践する姿を目にしたら、そのたびにしっかりと褒めてあげてください!
『子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド』(キンバリー・キング 著, 栗田 佳代訳/東洋館出版社)
からだの安全絵本が全米ベストセラーとなった性被害予防専門家から、3歳〜10歳の子どもを育てる保護者へ
どんな状況であっても、被害者である子どものせいでは決してありません。
しかし、保護者が知識をつければつけるほど、子どもたちをより安全にすることができるのです。
子どもが性被害の危険に晒される可能性を最小限にするために、必要なこと全部を1冊にまとめました。
