赤ちゃんの発達に「ハイハイ」はなぜ重要? しないときはどうする? 医師に聞いた実際と対策
最近では、ハイハイをせずに歩き始める赤ちゃんも増えているといわれますが、実はハイハイには運動機能だけでなく、呼吸器や脳の発達にも重要な役割があるようです。
札幌中央整形外科クリニック院長の亀田和利先生に、ハイハイの意義と親が見守る際のポイントについてお話を伺います。
ハイハイはいつから始まる? 個人差はある?
――赤ちゃんは一般的にいつ頃からハイハイを始めるのでしょうか?また、個人差は大きいのでしょうか?
亀田医師:一般的には生後6~10ヶ月ごろにハイハイを始めることが多いですが、早い子では5ヶ月頃から、遅い子では1歳近くになってから始めることもあります。すぐにハイハイをする子もいれば、「ずりばい」(お腹を床につけたまま腕を使って進む動き)を長く続ける子もいますし、ハイハイをあまりせずにつかまり立ちや歩行に移る子もいます。
個人差はありますが、ハイハイには赤ちゃんの発達において重要な役割があるため、できるだけこの動きを経験させることが望ましいですね。
ハイハイの意味と赤ちゃんの発達への影響
――ハイハイは単に移動のための手段ではないということですね。具体的にどのような影響があるのでしょうか?
亀田医師:はい、ハイハイには筋力の発達、呼吸器の強化、脳や神経の発達、視覚の発達といった、さまざまな効果があります。順番に説明しましょう。
① 上半身と体幹の筋力の発達
腕や肩の筋肉(上腕筋・三角筋・大胸筋)
体を支えながら前に進むことで、自然と鍛えられます。
体幹(腹筋・背筋)
体を安定させるために重要な役割を果たす。
下半身の筋肉(大腿四頭筋・殿筋など)
膝を曲げ伸ばししながら動くことで、下半身の発達も促されます。
これらの筋肉が発達することで、後のつかまり立ち・歩行の基盤が作られます。
② 呼吸器の発達
ハイハイをすることで胸郭が広がり、肺活力が増加し、呼吸機能の向上につながります。胸筋(大胸筋・小胸筋)が鍛えられることで、肺をしっかり動かす力がつき、呼吸が深くなります。これにより、酸素の取り込みがスムーズになり、持久力や全身の健康にも良い影響を与えます。
また、赤ちゃんはハイハイをする際に適度な運動量を確保するため、体温調節機能も発達しやすくなります。
③ バランス感覚と脳の発達を促す
ハイハイは、左右の手足を交互に動かしながら進む動きです。この交互運動が、左右の脳を連携させる働きを持つ「脳梁(のうりょう)」を活性化し、運動能力の向上や、手足の協調運動能力の発達に寄与します。
また、ハイハイの過程で「どこに手をつけばいいか」「どのくらいの力で進めばいいか」といった感覚を身につけることで、後の歩行にも役立つバランス感覚を養います。
④ 視覚の発達に役立つ
ハイハイをすると、赤ちゃんは床に近い視点で周囲を観察します。この視点の変化によって、距離感や奥行きを把握する能力(空間認識能力)が高まります。
また、手を前に出して動くことで、目と手の協調性も鍛えられ、物を正確に掴む力が発達します。
ハイハイを促すための環境づくり
――ハイハイをあまりしない赤ちゃんもいると聞きますが、しないと問題があるのでしょうか?
亀田医師:必ずしも問題があるとは限りません。ただハイハイをすることで得られる発達上のメリットが多いため、可能であれば経験させることが望ましいです。次のような場合には注意が必要です。
片方の手足ばかり使う
片側の筋力や股関節に問題がないか確認が必要です。
ずりばいしかしないまま歩き始める
体幹の発達が不十分な可能性があります。
全くハイハイをせず、1歳を過ぎても移動しない
筋力や神経系の異常で運動発達が遅れている可能性があるため、医師に相談すると安心です。
――もし赤ちゃんがハイハイをあまりしない場合、親ができるサポートはありますか?
亀田医師:無理にさせる必要はありませんが、以下のような工夫をするとハイハイを促しやすくなります。
1.床の環境を整える
フローリングは滑りやすいので、マットなどを敷くと動きやすくなります。
安全なスペースを確保し、ハイハイしやすい環境を作ることで動きやすくなります。
2.おもちゃで誘導する
少し先におもちゃを置き、興味を引くことで自然とハイハイを促すことができます。
3.親が見本を見せる
大人がハイハイをして遊びながら促すと、赤ちゃんも興味を持ちやすくなります。
4.腹ばいの時間を増やす
仰向けの時間が長いとハイハイのきっかけが減るため、積極的に腹ばいの時間を作るのもいいですね。ただし、無理はせず、必ずしっかりと見守りながら行なってください。
「発達が遅れている」と決めつけない
ハイハイは、筋力・呼吸器・脳・視覚の発達に良い影響を与える重要なステップです。個人差はありますが、ハイハイをしやすい環境を整え、赤ちゃんのペースに合わせて成長を見守ることが大切です。
「ハイハイの期間が長い=発達が遅い」というわけではなく、むしろしっかりハイハイをすることで歩行が安定するようです。焦らずに、楽しみながらハイハイを応援してあげましょう!