早すぎる塾は逆効果? 小学校入学前までに必要な「勉強で自走できる子になる」準備

一般社団法人Raise
2026.03.24 11:14 2026.03.24 11:15

勉強する小学生女子

入学シーズンが近づいてきました。小学校の入学を控えている家庭では、筆記用具の準備などを進めている頃でしょうか。道具の準備もさることながら、お勉強の準備も余念なく進めようと年明けから塾に入る家庭もあります。

入学を前に、スタートダッシュが肝心と焦る気持ちも分かりますが、入学前の準備としてはもっと大事なことがあるそうです。自宅学習の専門家で「おうち受験コーチング」代表の鈴木詩織さんに聞きました。(聞き手・文/一般社団法人Raise)

入学前に読み書きができていないと出遅れる?

塾の授業を受ける小学生の子

最近、学習塾への入塾が低年齢化していると話題になっています。小学校入学準備コースを設ける所もあるため「うちも早くお勉強をはじめなくちゃ!」と不安になる親御さんもいます。でも大丈夫です。小学校ではひらがなの読み方、書き方から教えてくれるので、入学前に読み書きが完全にできている必要はありません。

とはいえ、授業だけだとさっと終わってしまって、できるようになるか心配という親御さんもいるのですが、学習塾に入るよりも前に、実はもっと大切なことがあります。それは、人の話を聞けるようにしておくことです。え、そんなことでいいの?と思う方もいるかもしれませんが、私の指導経験上、これができていれば順調に1年生のスタートを切ることができます。

人の話が聞ける子は、学校の授業もしっかりと聞くことができるため、授業で学んだ内容をたくさん吸収し、自分のものにして帰宅します。同じ授業を受けていても、人の話を聞けない子の場合、教わった内容が頭に入っていません。

私はこれまでに約3500家庭のお子さんを見てきました。その中には、学校で習った内容を10聞いて10持ち帰ることができる子と、10聞いて1しか持ち帰れない子がいました。そして、両者の間には明らかに学びの差が生まれていました。

学校で習った内容を100%持ち帰れた子は、さほど苦労することなく宿題も進めていきます。ところが、10%しか持ち帰れていない子の場合は宿題をやろうと思っても、なかなか進めることができません。分からないことが多いからです。

こうして分からないことが多くなると、勉強を面白く感じづらくなりますから、子どもは勉強を嫌うようになります。すると、家庭での学習習慣を付けるのに手こずることになります。親も口うるさく言わないといけなくなるのは辛いですよね。

そうならないための第一歩が、人の話を聞ける子になることなのです。幸い小学校1年生1学期に学ぶ教科的な学びはそれほど多くはなく、学校生活に慣れることを重点に置いた指導がなされるため、宿題も少しずつ出す学校がほとんどですから、ここで授業をしっかりと聞ける子に育てておくと、家庭学習もかなりスムーズに進めることができるようになります。そしてこの力は学年が上がっても役立つ基本の力になります。

目を見て話す習慣で聞く力を育てる

見つめあう親子

人の話を聞ける子にするためには、家庭での関わりがとても大切になってきます。私が出会った家庭の中に、家では子どもが好きな動画サイトをずっとつけていますという家庭がありました。

理由は、子どもが静かにしてくれるからということでした。見せている内容が教育系の動画ならいいのでは?という質問を受けることもありました。確かに、静かにしてくれますし、学習系の動画ならば良さそうな気もするのですが、そうでもありません。常に何かを見ている状態が続きます。

親から声をかけられる時も当然ながら画面を見ながらになります。これが常態化してしまうと、見逃す力や、聞き逃す力が育ってしまうのです。親御さんが声をかけても、生返事になるなんてことが起きてきます。そして、自分の興味、関心のあること以外は“聞けない子”になってしまう可能性が高まります。

学校の先生方は勉強することが楽しいと思ってもらえるような授業をしようと頑張ってくれていますが、人の話が聞けない子の状態で入学すると、本人の興味、関心のないことは耳に入らない、聞き逃す習慣がついているため、いくら先生が頑張っても話が頭に入らないことが起こるようになります。

昔から「ながら〇〇」はよくないと言われますが、動画の視聴も同じです。動画を見るときは見ることに集中させて、画面を切るときは切る。メリハリをしっかりとつけることが大切です。そして、親子の会話の時間を設けてください。家庭は子どもたちのコミュニケーション能力を育てる大事な土壌です。

人の話を聞くことができるようになるために、まずは親子で目を見て話す習慣をつけてみてください。これができるようになると、学校でも人の話を聞ける子になっていきます。

コミュ力高めの子の親ほど聞き上手さんが多い

ママの話を聞く子

ところで、お子さんに話しかけられたとき、スマホの画面を見ながら返事をしていることはないでしょうか? これはお子さんに「目を見て話さなくてもいいんだよ」とインプットしているようなものです。

お子さんも人の目を見て話せない、聞けない子になる可能性が高まってしまうのです。ですから、お子さんが話しかけてきた時にはできるだけ本人の目を見て聞くようにしてあげてください。どうしても手が離せない場合は、「あと3分待ってくれる」など、目を見て話ができる時を教えてあげるようにするといいでしょう。

お子さんの話しを聞くときに、もう一つ親御さんに気にかけてもらいたいことがあります。それは、お子さんの話す声を聞くだけでなく、心の声にも耳を傾けるようにしてほしいのです。話の奥にあるお子さんの気持ちに目を向けるよう心がけてみてください。心の内面にまで目を向けて人の言葉を聞くことを傾聴といいますが、親が傾聴できるようになると子どもは自然といろいろなことを話してくれるようになります。

そして、たくさん話すお子さんは、話すことも上手になっていきます。他者に自分の考えや気持ちを伝えることが上手くなりますから、聞ける子になるだけでなく、伝え上手な子となり、コミュニケーション能力が高まります。入学前準備の第一歩は家庭内でのコミュニケーション向上です。勉強系ばかりに目がいきがちですが、どうぞ焦らず、親子での時を大切にしてください。

鈴木詩織

鈴木詩織

一般社団法人受験コーチング協会代表理事代表。自宅学習の専門家。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。『塾なしで、中学生が学年1位を取る勉強法-偏差値40〜60の子が自走しはじめる日本初の性格タイプ×受験コーチング』著者。大手家庭教師派遣会社にて12年にわたり学習コンサルタントとし活躍、4000人の家庭を訪問し、子どものやる気を挙げてきた。プログラム受講生の95%以上が学習の習慣づけと成績UPに成功している。