子どもの利き手の矯正~子育て相談室

斉藤孝子
2023.10.04 15:15 2013.08.29 12:00

ご飯を前に表情を歪める子

子どもの利き手を、左手から右手に矯正するべきか悩んでいる相談者。こんな時、どのような対応をすればいいのでしょうか?日本ベビーコーチング協会理事の斉藤孝子さんが、子育ての悩みに答えます。

※この記事はWEBサイト「PHP INTERFACE」に掲載されたものです。

斉藤孝子(さいとう・たかこ/日本ベビーコーチング協会理事)
1963年生まれ。日本ベビーコーチング協会理事。1990年から1992年の2年間、衛星チャンネルで公開授業を放映。各種雑誌での執筆の傍ら、幼稚園などの研修や教材開発を手がける。かぞくの雑誌「きらら」、シングルエイジ教育誌に連載中。「幼児は表現の天才」(アドア出版)「母と子と先生と」(創教出版)「生き方の原理原則を教える道徳教育」(明治図書)などにも執筆。2児の母。

左利きの娘…矯正した方が良い?

親を見上げる子ども

3歳3カ月の娘の利き手のことで相談です。私は、娘を1歳から保育園に預けて、現在は共働き中です。

教育方針は「できるだけ細かいことは言わない」です。感情的にしかることをできるだけ避けて、危ないときや、これだけはしてはいけないというときだけ怒るように気を付けています。

娘はどうも左手の方が使いやすいようなのです。今はまだ両手を使っています。お箸はどちらでもOK。えんぴつやはさみは左の方が本人も楽だと感じているようです。

親としては、今の時代でもまだ左利きだと苦労というか生活しにくいのではないかと思い、できれば右手を使うようになればと、ちょこちょこ注意しています。

右利きの方がいい、でも生まれ持ったものを大切にしてやりたい、左利きでもこれからの時代大丈夫かな? 等、親としても色々な思いが頭をよぎります。それに無理に矯正すると悪いなども聞いたことがあります。

なにしろ「細かいことは言わない」というのが前提にあるので、注意するたびに心が痛み、葛藤があります。両親とも思いは同じですが、本当のところはどうなのでしょうか?

保育園では親の考え方次第でという方針で、矯正を望むなら3歳までにと言われています。はじめの頃、鉛筆とお箸は右手に、と伝えたところ、指の発達の関係で、どちらの手も使うと発達が遅くなるので難しいと言われました。

ちなみに父親は左利きを矯正して、お箸など細かい作業は右手で、スポーツなど力のいることは左手でやっています。体と心の発達にどのように関係しているのか、先生の個人的な意見も含めてアドバイスお願いします。

斉藤孝子先生からのアドバイス

手

まず、「利き手と脳」について、触れておきましょう。

右利きの人のほとんどは左脳で言語の機能がいとなまれているのに対して、左利きの人は、右利きほど多くありません。右脳に言語の機能をもつ人、あるいはが左右両方に言語の機能をもつ人がそれぞれ15%もいると言われています。

また、脳にはメカニズムがあり、身体の右側の神経は左脳、左側の神経は、右脳にクロスしてつながり、脳に刺激が伝わっていきます。このようなことからわかるように、左利き(右脳が発達している)の人は、音楽や絵画、空間認識が必要なスポーツなど能力を発揮すると言われています。スポーツ選手には、左利きの人が多いのも頷けますね。

利き手に関しては、遺伝説がありますが、まだ決定的とはいえないようです。0歳~2歳頃は、右手を使っているかと思うと、左手にしてみたりとコロコロ変わることが多いものです。

この時期に、利き手が見えているのであれば、生活スタイルをすべて右を一番先にし、自然な形で矯正していくと利き手を変えることができるかもしれません。洋服の袖を通すのも、くつをはくのも…全て右からにするのです。

笑顔の子

しかし、3~4歳頃になると、利き手ははっきりとした形で見えてきます。この頃から利き手を変えるということは、脳の側方化に逆行することになるので、無理強いしないほうがよいと思います。

脳の活動パターンが右利きの人とは違うからです。それを無理に矯正しようとすれば、チック症状や夜尿症など起きてしまうという実例があります。

ただし、楽しい雰囲気の中で、教えることが出来るのであれば、利き手を変えることも出来ると思います。怒られたり、注意されたりし、お子さんが泣きながら変えるようであれば賛成できませんね。

もし、変えるのであれば、お父様が子どもの時矯正されたように、細かい作業とその他に分けてみて、その部分だけをチャレンジしてみたらいかがですか?

斉藤孝子

斉藤孝子

1963年生まれ。日本ベビーコーチング協会理事。1990年から1992年の2年間、衛星チャンネルで公開授業を放映。各種雑誌での執筆の傍ら、幼稚園などの研修や教材開発を手がける。かぞくの雑誌「きらら」、シングルエイジ教育誌に連載中。「幼児は表現の天才」(アドア出版)「母と子と先生と」(創教出版)「生き方の原理原則を教える道徳教育」(明治図書)などにも執筆。2児の母。