手がかかる子、かからない子の違い

須賀義一
2023.10.13 16:26 2023.02.20 18:42

手がかかる子、かからない子の違いの画像1
子どもはみなひとつの「容れ物」を持っています。その大きさというのは、これはもう人それぞれなのです。おそらく生まれつきと言っていいと思うのですが、人によりその「容れ物」は小さかったり、とても大きかったりします。そしてどんな子も、この「容れ物」にたくさんのプラスのものを入れてからでなければ、マイナスのものは受け付けられないのです。

※本稿は、須賀義一著『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』(PHP研究所)の中から、一部を抜粋・編集したものです。

須賀義一(すが・よしかず/子育てアドバイザー)
1974年生まれ。東京都江戸川区の下町に生まれ、現在は墨田区に在住。大学で哲学を専攻するも人間に関わる仕事を目指して、卒業後国家試験にて保育士資格を取得。その後、都内の公立保育園にて10年間勤務。子どもの誕生を機に退職し、子育てアドバイザーとして、子育てについての研究を重ね、執筆、講演活動、ワークショップを展開。従来の子育てを見直し、個々の子どもを尊重した関わり、子育ての仕方を提案している。家族は妻と一男一女がいる。

プラスのものとマイナスのもの

手がかかる子、かからない子の違いの画像2

では「プラスのもの」とはいったいなにか?

それは親に優しくしてもらったり大切にしてもらったり、温かい声がけや関わり、楽しいコミュニケーションやスキンシップをしてもらったり、食べ物を食べさせてもらったり、おっぱいをもらったり、「かわいい」「すごいね」「上手だね」などの自分を肯定してもらう言葉を言ってもらったり、抱きしめてもらったり、心の余裕を持って絵本を読んでもらったり、歌を歌ってもらったり一緒に遊んで楽しい時間を過ごしたり……などなどなど、そういった子どもとしてうれしい喜ばしい経験のことです。

「マイナスのもの」とはなんでしょう?

それは叱られることや怒られること。我慢すること。誰かに頼りたい気持ちを抑えて自分でそれをなしとげることや、誰かに自分のものを譲ってあげたり、苦手なこと・新しいことに挑戦してみたりなどなど、です。

クッキーの缶をいっぱいにする

僕はこれをクッキーの缶でイメージしています。

子どもはみなそれぞれクッキーの缶を持って生まれてきます。その大きさは子どもによりバラバラです。それのサイズが小さい子もいれば大きい子もいます。でも初めはみんな空っぽです。

その子を周りの大人がかわいがってくれたり、その子を見て微笑んでくれたり、寂しいときに側にいてくれたり、甘えたい気持ちを受け止めてくれたり、何かできたとき誇らしげにしていると褒めてくれたり、そういうことをひとつしてもらうと、子どもの持っているクッキーの缶にはそのたびごとにクッキーが一個貯まります。

それが缶の中にたくさんある子は、気持ちに余裕が持てて自然と笑顔になることも多いですし、なにかに取り組むのも前向きです。少ない子はなかなか余裕が持てません。前に進むことにも自信が持てません。ですから、その他のことよりクッキーを貰うことについつい必死になってしまいます。

多い少ないといっても、純粋な数ではなくて缶の大きさに対しての割合です。缶を振ってみると、もともと缶の小さい子は少しの量でもたくさん入っている手応えを感じられるでしょうし、缶が大きい子はたくさん入っていてすら心許なく感じてしまうこともあるでしょう。

つまり、ちょっとの大人からのプラスの関わりで缶が満たされてしまう子と、たくさんのプラスの関わりが必要な子がいるのです。もちろん中くらいの子も多いです。

その缶の大きさは本当にその子が持って生まれたものでまちまちなのです。それは個性ですから、小さいからいい、大きいから悪いというわけでもありません。そういうものなのです。

この缶にクッキーがいっぱいに入っている子は「満たされた」状態にあります。子どもらしく明るく無邪気で、なにかをするにも前向き、人の気持ちを考えてあげることができたり、優しくしてあげたりすることもできます。

絵を措いたり、ダンスをして自分を表現したりすることにも臆せず取り組めます。集団で行動しなければならないときにも、自分を抑えて周りと足並みをそろえることもできます。

もし、叱られたりしたときも、それが自分のために言われているということを理解することができ、それらを受け入れ反省することなどもしやすいのです。

クッキーの貯まっていない子は、そういったことを本人もしたいと思っていてすら、なかなかできないのです。

須賀義一

須賀義一

1974年生まれ。東京都江戸川区の下町に生まれ、現在は墨田区に在住。大学で哲学を専攻するも人間に関わる仕事を目指して、卒業後国家試験にて保育士資格を取得。その後、都内の公立保育園にて10年間勤務。子どもの誕生を機に退職し、子育てアドバイザーとして、子育てについての研究を重ね、執筆、講演活動、ワークショップを展開。従来の子育てを見直し、個々の子どもを尊重した関わり、子育ての仕方を提案している。家族は妻と一男一女がいる。