親の何気ない関わりが、子どもの心の発達に大きな影響を与えます。子どもの心を荒らさないために、今、大切にすべきことを一緒に考えてみましょう。

 

 

心の発達を知って強くしなやかな子に

 

心が強くしなやかな子、人にやさしく関われる子に育てるのに一番大切なのは、日々の親子の関わりと言っても過言ではありません。

コミュニケーション能力は、自分の働きかけに対して、相手が応えてくれることの繰り返しで育まれていきます。幼児期に、親子で気持ちのキャッチボールを重ねておくことが、子どもの感情コントロール力を育み、コミュニケーション能力を高めることにもつながるのです。

 

・あなたの感情の揺れにも目を向けて

 

豊かな感情のキャッチボールは、親に気持ちのゆとりがあってこそできるものです。しかし今は、「わが子の育ちよりも周りの目が気になる」「泣くのが当たり前の子どもに対して『なぜ泣くのだろう』と不安になる」など、子育てに余裕のない親御さんが増えてきているように感じます。

子どもは親の心的環境に大きく左右されます。自分自身の感情の揺れにも、ぜひ意識を向けてみてください。

ここでは3~6歳、7~9歳、10~12歳といった年齢別の心の発達もみながら、どう子どもと関わっていけばいいのかを考えます。今の関わりが、子どもの5年後、10年後に影響してくるので、この機会に、子どもとの日頃の関わり方を振り返ってみましょう。

 

できるだけ多くの人と関わる機会を設けましょう

 

今、人づきあいが苦手な子が増えていると言われていますが、その原因に、核家族化や子どもが遊ぶ環境の変化などにより、人と関わる機会が昔に比べて減ってきていることが挙げられます。

コミュニケーション能力は、人と関わることで育っていくもの。親が積極的に人づきあいをしていけば、子どもが人と関わる機会も自然と増えていくので、意識していろいろな人と関わっていきましょう。

 

【3〜6歳】

「ごっこ遊び」から「集団遊び」へ。相手との考えの違いに気づき始める

個人差はありますが、2歳くらいから自我がめばえ始め、「△△はイヤ」「○○がやりたい」などの欲求が出てきます。3歳くらいになると友だち同士のやりとりが少しずつできるようになり、簡単なルールのもと、少人数で「ごっこ遊び」を始めます。5歳くらいになると友だちと関われる力がつき、集団遊びの中でリーダーが生まれたり、役割分担ができるようになります。

友だちとの関わりの中で、2〜3歳くらいは「とった」「とられた」から、4〜5歳くらいは自分と相手の考え方の違いからケンカが起きることも。イメージをふくらませて遊ぶ中でさまざまなやりとりを交わしながら、相手の存在を少しずつ意識するようになります。

 

・親の関わり方…子どもの気持ちを言葉で代弁する

親が先回りせず、子どもがやりたいと思った“その時”にさりげなく手を貸し「やった!」「できた!」を増やしていきましょう。ケンカをして泣いていたら「オモチャをとられて悲しかったんだね」など、子どもの気持ちを言葉で代弁する働きかけを。子どもが自分の気持ちを理解することにつながり、感情をコントロールできるようになっていきます。

 

【7〜9歳】

万能感にあふれ、親の言葉にも素直。ケンカをあしてもすぐ仲直りできる

少しずつ周りを見ることができるようになりますが、まだまだ自己中心的で「自分は何でもできる」といった万能感にあふれているのが、この時期。親の言葉を素直に聞き、自分が思ったことは心にためず、ストレートに口に出してきます。

小学校という新しい世界で集団生活が始まり、友だちと関わる中で、言い争いなども起こりますが、あとにはひきにくく、「朝ケンカして絶交したのに帰るときには仲直り」といった単純さを備えています。

時間の流れをイメージする能力が徐々に育っていき、1週間、2週間としだいに長く見通しが立てられるようになっていくため、先を見越して不安になるということも、少しずつ出てくるでしょう。

 

・親の関わり方…子どもの気持ちに共感し、解決のヒントを

「小学生になったのだから」と急に突き放すと、子どもは不安になります。甘えてきたらしっかり受けとめましょう。友だちといざこざが起きたときも、「あなたが悪い」などと“裁判官”になるのでなく、「ケンカしたらいやな気持ちになるよね」「どう言ったらいいか悩むよね」などと子どもの気持ちを受けとめ、共感した上で解決のヒントを与えましょう。

 

【10〜12歳】

本音と建て前が理解できるように。性差が顕著になる

自分が得意なことと不得意なことを自覚し始め、“他者の目に映る自分”を気にしだすようになり、親と距離を置くようになる子もいます。時間の展望能力がますますつき、2、3力月から1年先くらいまでを見通せるようになるため、先のことを考え、不安になることも増えていくでしょう。

対人関係も広がり、本音と建て前が少しずつ理解できるようにもなるため、友だちとの間でいざこざが起こると心のしこりがなかなかとれず、不登校につながるケースもあります。また、性差がより現われるようになり、男の子は外で一緒に体を動かしたり共通の好きなことを通して、女の子はお互いの感情を言葉に出し合って、仲間意識を高めていきます。

 

・親の関わり方…親子の距離は離れても、見守る姿勢は忘れない

自分のことをあまり言わなくなってくるため親のほうは目を離してしまいがちですが、思春期目前のこの時期、子どもは心の中で葛藤を抱えているかもしれません。「今日は学校で何があったの?」などとしつこく聞く必要はありませんが、何かトラブルが起きたときにスムーズにサポートできるよう、常に子どもに目を向けておきましょう。

 

心を荒らさないために子どもの性格を“プラスの枠組み”で受け入れよう

 

子どもの性格をマイナスにとらえてしまうと、子どもを追いつめてしまいます。

環境変化への敏感さ、順応の早さといった生まれもった気質と、生まれてからの環境の影響を受けて、性格には個人差が見られます。

親は子どもが“できない”理由を性格のせいにすることがありますが、安易に悪い性格のせいにすると、子どもはレッテルをはられたように感じ、問題が悪化しがちです。しかも「なんでお友だちに言いたいことが言えないの?」などと責めてしまうと、子どもは自信をなくし、言いたいことが言えなくなって、親子間でのポジティブな感情のキャッチボールができなくなります。

 

・視点を変えることが大切です

 

そんなときは、わが子の性格を“プラスの枠組み”で見てみましょう。たとえば、「無口」を“プラスの枠組み”で見ると「おだやか」に変換できます。「うちの子は〇〇だから」と決めつけず、わが子を日々“プラスの枠組み”で見つめる習慣をつけ、よい部分をほめることが大切です。それが子どもの自己肯定感を高め、心の安定へとつながっていきます。

 

心のしなやかさを育てるために親が心がけたいこと

 

子どもだけでなく親自身も、心が豊かになるような体験を重ね、幸せな感情を積み重ねていきましょう。

 

私たちは、毎日いろいろな感情を抱きながら暮らしています。子どもが自分の感情をコントロールできる、強くしなやかな心を育むために大切なのは、繰り返しになりますが、「悲しい!」「くやしい!」などと、子どもがぶつけてきた感情を受けとめ、共感すること。その時はマイナスの感情でも、身近な人に自分の気持ちを理解してもらえれば、プラスのエネルギーを蓄えることができ、「よし、明日からがんばろう」と気持ちを入れ替えることができます。泣いているときも、「泣いたらだめ!」などと頭ごなしに叱りつけるのでなく、「友だちにオモチャをとられてくやしくて泣いているんだね」と、子どもの気持ちを代弁してあげましょう。

 

・「嬉しい!」「楽しい!」と思える時間を共有して

 

幼児期に、子ども自身が「嬉しい!」「楽しい!」といった幸せな感情をたくさん味わっておくと、たとえつらいことや悲しいことがあっても、「またあの時のような楽しい気持ちを味わいたい!」といった、“しなやかに立ち直る力=レジリエンス”を自然と身につけることができます。

そのためには、子どもだけでなく親自身も日々の暮らしにゆとりをもち、心を豊かにし、幸せな感情に浸れるような時間をもつことが大切です。「お星さま、きれいだね」「鳥が鳴いているね」など、ちょっとした発見を楽しみながら、子どもと一緒に見たり、聞いたり、触ったりして会話を重ねていきましょう。ボキャブラリーを増やすことも豊かな心を育てます。親子で幸せな感情の共有を重ねていくことが、生きていく強さ、心のしなやかさにつながっていくのです。

 

【著者紹介】

渡辺弥生(法政大学文学部心理学科教授)

筑波大学、静岡大学を経て現職。教育学博士。育児に不安を抱える保護者のカウンセリングや家庭教育講座などの講師も務める。著書に、『子どもの「10歳の壁」とは何か?』(光文社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など多数。

 

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2017年2月号の特集は<3・7・10歳がわかれ道! 心が荒れる子・おだやかな子>です。

 

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