「大学合格が人生の全盛期」な人を生んでしまう誤った勉強法
欧米では課題を見つけ、探究する勉強法が当たり前
地頭力があれば、人生を主体的に考え、自分で考え実行できる力や、いろいろな人と対話や協力をして働く能力、さまざまな問題に疑問を持ち、探究できる能力が育っていきます。そのため、大人になってもそれらの能力を駆使して、変化の大きな社会を乗り切っていくことができます。
例えば、アメリカでのAIの開発は国家プロジェクトで国が率先して行なっていたり、名だたる大学や企業が中心となって研究開発したりしているわけではありません。
実際には、AIは無名の人たちが何人か集まった小規模なプロジェクトでつくられています。それをグーグルなどの大企業が買い取っているというわけです。
ですから、アメリカではどこの大学を出たかも、国の組織や大企業に所属しているかもあまり関係ありません。知識とアイディアがあれば誰でもどこでも社会を動かすプロジェクトができる、下剋上の社会になっています。その基礎となっているのが教育です。
欧米では子どもの頃から、自分で課題を見つけてきて、探究することが前提となっています。だからこそ、刻々と変化していく社会に対しても対応できるのです。
日本では依然として、子どもは有名な中高一貫校に入れて、その後は有名大学に行き、一流企業に就職できれば人生は安泰という考えがまかり通っています。そして勉強は、受験のためだけのものという意識が根強く残っています。
しかし、繰り返しますが、変化の激しい今の社会においては、従来型の教育では対応できません。とくに、日本はどんどん人口が減ってきていて、労働人口も少なくなっています。
ということは、一人ひとりが生産性を上げていくためにも、言われたことをやるだけではなく、もっと創造的な仕事をしていかないと、国は衰退するばかりで発展していかないでしょう。国が衰退していけば、個人も経済的にも精神的にも豊かな人生を送ることは難しくなるのではないでしょうか。
受験を乗り越えるためだけの勉強では、「大学まで」で終わる
先ほど日本の教育は時代遅れだといいましたが、徐々にではありますが、変化も起きています。
教育現場では、文部科学省が探究学習の考え方を学習指導要領や大学入試に(記述式の問題が増えるとされている)取り入れることを示し、その対応も始まっています。
僕の近著(『本当に頭のいい子を育てる 世界標準の勉強法』PHP新書)では、徐々に広まりつつある探究学習のやり方と、時代遅れとはいえまだまだ日本社会では重要視される従来の受験、両方ともに対応できる「オールマイティ勉強法」を提案しています。
まずは、地頭力を鍛え、創造的でユニークな人材やグローバルな人材を育てるための探究学習のやり方を第一段階ととらえます。そして第二段階では、探究学習で地頭力が鍛えられたうえでの受験に受かるための勉強法をお教えします。
といっても、第一段階の探究学習ができていれば、第二段階の受験のための勉強はそれほど苦労することもないでしょう。
というのも、受験で問われていることは、天才的な小説を書けとか、画期的な発明をしろ、というものではなく、基本的なことです。
100メートルを9秒台で走る能力を求められているわけではなくて、12秒くらいでいい。つまり、第一段階で鍛えた考える力があればそれなりに受験には対応できてしまうわけです。
また受験のノウハウやテクニックだけを追求する勉強法だと、受験には受かるかもしれませんが、「大学まで」で終わってしまう人になる危険性があります。
一方で、オールマイティ勉強法を実践すると、社会に出ても活躍できる、創造的でユニークな人材やグローバルな人材になれるというわけです。つまり、地頭力にも受験にも効くのが、オールマイティ勉強法の肝なのです。