わが子が孤立しないために……大切なのは「親の関わり方」

有光興記
2023.10.13 16:02 2023.02.15 14:46

コミュニケーションスキルは小さい頃からの積み重ねが重要

たとえ1人で過ごすことが多くても、本人が苦痛に思っていない、あるいは周りの子どもたちから攻撃されていないという状況であれば焦る必要はありません。

ただ、将来のことを考えると、ある程度は人とコミュニケーションをとれるスキルを身につけておいたほうがいいでしょう。

思春期に入ると、お互いの悩みを打ち明け合うなど、コミュニケーションはさらに複雑になります。先輩や後輩との交流も生まれます。そしてその延長線上には、社会人という立場があります。

いずれ社会に出た時、いかにふるまうか。性格や価値観はそれぞれですが、「人の話をきちんと聞く」「感じのいい受け答えができる」「聞き取れる声でていねいに話す」といった基本的なコミュニケーションスキルは大前提です。どんな関係性を築いていくかは、それができたうえでの話です。

多くの子どもたちは小学校で集団生活を送り、ケンカをしたり仲直りしたりの繰り返しのなかで、どのような場面でどうふるまえばよいのかを身をもって学んでいきます。家庭や地域も大切な学びの場になります。

しかし少子化や地域の変化(少子化による子どもだけの活動の減少で、学校以外に遊べる場が減ってきたなど)に伴い、学びの場も少なくなってきました。

おけいこ事に通う子どもも増え、子ども同士で会話をしたり遊んだりする時間も短くなっています。つまりコミュニケーションスキルを学ぶ機会自体が減っているのです。

結果として、今は家庭がコミュニケーションスキルを学ぶ、あるいは学び直す場とならざるを得ません。荷が重いと感じる親御さんもいるかもしれませんが、自分の子どもが学校や子どもたちだけの場面でどんなコミュニケーションをとっているのかを知ることができやすいとも言えるでしょう。

10歳を過ぎると、友だちのなかでも特定の相手やグループとの「深く狭い」つきあいが始まります。その時に「友だちと遊びたいのに遊べない」という状況になってしまわないよう、そして最終的には社会人になった時に孤立しないよう、10歳までに必要最小限の「友だちづきあいのスキル」を身につけておくことはとても大切です。

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子どもが友だちで悩まないために10歳までに親がすべきこと(PHP研究所)
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有光興記

有光興記

1971年兵庫県生まれ。関西学院大学文学部総合心理科学科教授。博士(心理学)、臨床心理士。カウンセリングや認知行動療法、マインドフルネスをベースに、発達障害の子へのソーシャルスキルトレーニングを実践している。監修書に『発達障害の子のコミュニケーション・トレーニング』『発達障害の子の「イライラ」コントロール術』『発達障害の子の「友達づくり」トレーニング』『発達障害の子の「励まし方」がわかる本』(以上、講談社)がある。