幼少期から「性差」はある~男の子・女の子の違いとは?
個人差はありますが、幼少期の子どもでも、男女の「性差」は存在します。それぞれの特徴を見ていきましょう。
※本稿は、高濱正伸著『子育ては、10歳が分かれ目。』(PHP文庫)から一部を抜粋し、編集したものです。
高濱正伸(花まる学習会代表)
1959年、熊本県生まれ。東京大学大学院修士課程卒業。93年に、「国語力」「数理的思考力」に加え「野外の体験教室」を指導の柱とする学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック問題作成委員・決勝大会総合解説員。
「すげえ」と崇められたい男の子
男女の性差。それは子どもが幼いときからすでにあります。
幼少期の男の子は、とにかくじっとしていません。危険なことに挑戦し、ぎりぎりセーフのスリルを味わうことを好みます。「誰が一番、高いところから飛び降りられるか」といった、ケガ寸前のところで競い合うのも大好きです。
好きな遊びは、戦いごっこ。鉄砲らしい形のものを見つけると、すぐに「バン!」と撃つ真似をします。
下品な言葉を言い放つのも好き。「うんち、おしっこ、ちんちん」などと言ってゲラゲラ笑っています。
マニアックなところも男の子の特徴です。山手線の駅名を全部覚えたり、ポケモンカードを全部そろえたがったり。消しゴムのカスをせっせと集めている男子生徒も、以前にいました。
「そんなつまらないものを集めても」という発想は、男の子にはありません。内容が何であれ、完璧に集め尽くすところに価値があり、男の子の間では一目置かれるのです。あいつが十グラムならぼくは二十グラムと、「すげえ」と言われたい一心でがんばります。
そう、男の子の世界で最高の勲章は、仲間に「すげえ」と崇められることなのです。
給食の牛乳で早飲み競争をし、「すげえ」と言われたがるのも男の子です。私が小学校のときには、びんを立てたまま飲める子がいて、「あいつは牛乳飲み神だ……」と尊敬されていました。女子から見れば「バッカじゃないの」という話でしょう。
こういった男の子の特徴は、どれも本質から来るものですから、一生続きます。大人の男性も、実はそういう面を隠し持っているのです。幼少期の男の子は、男性の特徴のすべてを一番素直に表現している存在だと見ていいでしょう。
お母さんたちは、そういう男の子を「かわいいけれど、わけがわからない……」と悩むものです。でも「夫は犬だと思えばいい」のと同じで、男の子はカブトムシか何かだと思えばいいのです。お母さん自身の常識にあてはめようとするのではなく、「そういうもの」としてかわいがる。それが幼少期の男の子を育てるコツです。
男の子の勉強面での特徴は、例外はあるし一概には言いきれませんが算数には興味を持ってとり組めるけれど、国語はどうも……という子が多いということです。
女の子のほうが一般に言葉は早く、本や物語にもすっとなじめるので、どうしてもそう見えてしまうのです。しかし、男の子の国語力はあとから伸びてきますので、そこは安心して大丈夫です。
よく息子を読書好きにしなくてはと焦っているお母さんがいますが、男の子が本に目覚めるのは、少し遅めかもしれません。私が読書の楽しさに目覚めたのは、中学生のときでした。お母さんは心配などせず、その子のきっかけや時機が来るのを、ゆったり待ってあげていてください。
小さい頃は本より図鑑のほうが好きな男の子も多いでしょう。図鑑も大いにけっこうです。最近は非常に面白く編集された図鑑がたくさん出ています。
あとは、親が読書する姿を見せたり、読み聞かせを続けたりしていれば、自然に子どもは本に親しんでいくでしょう。