脳科学的「友だちづくり」の3ステップ
友だちづくりの3ステップ
【1】「思いやり」を育てる
前述のように、一朝一夕に「友だちとうまくできる」脳が完成することはあり得ません。でも、10歳以降に完成することを目標に、日々の生活の中で「思いやりの芽」を子どもにつくっていくことは重要です。
「思いやりの芽」づくりに最も必要なのは「言葉」です。言葉は人間ならではの脳の機能であり、勉強はもちろん、考えごとをするときにも、そして友だちを思いやるときにも、人は言葉を使います。言葉を覚え始めた子どもには、遊びの中でたくさんの言葉を大人がかけてあげましょう。
絵本を読んであげることも良いですが、より脳を刺激するためには、子ども自身の言葉を引き出す遊びが有効です。たとえば、お花の名前の言い合いっこをするとき、しりとり遊びをしているときなどに脳の前頭葉が刺激されます。
幼児期からこのような脳への刺激を繰り返すことで、「自分の置かれた状況に対して最も適切な行動や言葉を判断する」、すなわち「思いやり」の脳機能が形成されます。
たとえば、友だちのおもちゃを取って泣かせたときに、「そんなことをしたらダメ」と、ただ否定するのではなく「次に、○○ちゃんのおもちゃで遊びたいときにはどうする?」と聞いて、「次は、『貸して』って言う」など、自分で考えた言葉を引き出しましょう。
ただし、まだまだ脳は未発達なので、言ったからといって必ずしも次回そのように行動できないかもしれないことを、大人は重々承知して、おおらかに構えましょう。
【2】「聞く力」を育てる
人の話をじっくり聞くためには、聞き手の脳の状態が「安心」していることと、「注意・集中」モードになっていることが大事です。
「安心」している脳では、「セロトニン神経」が活発に働いています。セロトニン神経は特に5歳までの子どもの脳で発達しますが、その発達の善し悪しのカギを握るのが生活リズムです。
具体的には、朝日が昇る時間帯(7時前後)にはちゃんと目覚めて、しっかりと目の中に太陽の光を入れること。夜は20時前後から十分な睡眠時間を確保して、ぐっすり眠ること。そして、3度の食事をしっかりとること。これらがセロトニン神経を育てるコツです。
一方、「注意・集中」できる脳に育てるには、刺激を与えすぎず、緩急をしっかりつける環境が必要です。
部屋の中にたくさんのおもちゃや絵本が散らばっていて、さらにテレビがついていて、ゲームやパソコン、タブレットもある状態では、じっくり聞けないのはあたりまえです。
できるだけすっきりした部屋で生活することを心がけて、テレビなどのメディアは最小限の接触にとどめたほうがいいでしょう。
また、幼少期にしっかり手足を動かして遊んでたくさん興奮させた脳ほど、その後、注意・集中力が高まることが証明されています。たとえば、親子で思いきりじゃれ合って手足を動かしたあとに、今度は静かにパズルに集中するというような、メリハリのきいた親子遊びがおすすめです。