子どもとの接し方がわからない…親を悩ませる「大人の発達障害」

姜昌勲

周りから浮いていると思ったら、それは大人の発達障害が原因かもしれません。しかし、「大人の発達障害」を診察してくれる医療機関は多くありません。そこで求められるのが「セルフヘルプ」の確立です。

2012年6月新刊の書籍『他人とうまくいかないのは、発達障害だから?』では、これまで千人以上の「大人の発達障害」を診療してきた精神科専門医・姜昌勲氏に、セルフヘルプの一助として「どうしたらいいの?」に効く行動をアドバイスしていただきました。

本記事では、「子育て」の事例から、発達障害の方々が具体的に困ったことにどう対応し、どう解決していったのかをご紹介します。

※本記事は、姜昌勲著『他人とうまくいかないのは、発達障害だから?』(PHP研究所)より、一部を抜粋編集したものです。

姜昌勲(医学博士)
精神科専門医。きょうこころのクリニック院長。専門は小児・児童精神医学。院長を務めるrきょうこころのクリニック」にて、子どもから大人まで、精神疾患をはじめ発達障害などの診察を行なう。診断にこだわらず、その人の特性や特徴を活かすための診察・治療を心がけている。

親の会話に入れない

子育てをしていると、お母さん同士の付き合いが多くなります。幼稚園や保育園への送り迎え、小学校のPTAの集まり、塾やクラブでの打ち合わせなど、多くのお母さん方と接することになります。

その際、発達障害のお母さんのなかには、ほかのお母さんたちのようなコミュニケーションができなくて悩んでしまう方もいます。
私が診察したKさんもその一人でした。

【Kさん、40代後半、子どもは小学生一人】 

PTAの集まりや送り迎えの井戸端会議で、
お母さん同士の会話ができなくてつらい。
どう対応したらいいのかわからない。
お弁当が作れない。子どもの行事を忘れる。

「子どもは遊びたがっているんだけど、私はすぐに帰ってしまいます」とKさんはおっしゃいました。そこで、「子どもが遊びたがっているのなら、何時何分まで、または何分間というように、時間を具体的に決めて、そのあいだだけちょっと我慢してみましょう」とアドバイスしました。

このように、お母さん同士の会話がつらいというのでしたら、期限を区切ってみてください。そのあいだだけはがんばることができるようになります。

発達障害の人のなかには、先が見えないと不安がどんどん高まっていってパこックに陥ってしまう人がいます。お母さん同士の会話は、次から次へと会話が移り変わり、いつまでたっても終わらない気がするものです。

自分のなかで「30分だけ」というように期限を区切っでしまえば、なんとかやり過ごせるようになります。