子どもを伸ばす「しつけ方」

河井英子

2 人間関係の基礎を築く

生まれてすぐの子どもにとって、世界は自分中心です。そこから次第に周りの状況を認識し、自分以外の他人という存在を知って、いわゆる社会的存在として成長していくのです。

子どもが初めて出会う他人は親です。親からの温かいスキンシップを通して子どもの情緒は安定し、外の世界へ向かう自信と周りの人への信頼感を育てます。つまり子どものその後の人間関係に大きく影響していくのです。

また一方で、近年の核家族化、少子化の中では、子どもの相手はいつも親ということにもなりかねません。できるだけ多様な人間関係を経験させる機会を作る工夫も大切です。

そして、それぞれの人にはいろいろな考え方や立場があることを知らせたいものです。自分中心の世界から、自分以外の違う他人がいることを教えることが大切です。

さらに「ママはいつも叱る人」とか「いつも命令する人」などワンパターンな接し方になっていないか反省してみてください。親にもいろいろな生活があり、一方的に親が子どもの付属物であったり、逆に子どもが親の付属物ではないことも知らせたほうがよいでしょう。

3 善悪の判断力を養う

現代の社会はいろいろ多様で複雑な仕組みになっています。大人にとってさえ、時には善悪の判断が難しいことがあるかもしれません。しかし「人の命は大切で、傷つけてはならない」などの基本的で絶対的な判断力は、幼児期の早い時から身につけさせておかなければならないと思います。

判断力と言いますが、頭で考える、いわゆる理性的な判断力ではなく、もっと深い感覚的な感情として植えつけておきたいものです。

子どもに残虐な暴力的シーンを見せることが、その子どもを暴力的、攻撃的にすると言われて、テレビなどでそういうシーンの自粛がなされたこともありますが、徹底には程遠い状況です。

また、子ども向けのゲームなどでも「殺す」とか「死ぬ」という言葉が頻繁に使われたりしています。幼児期の子どもはまだ空想や架空と現実との区別が明確ではありません。この時期にはできればこういうことに無制限に触れさせることは控えるべきでしょう。

小さいときの感覚はその後の子どもの性格形成にも影響していきます。また視点は少し違いますが、最近の幼児・児童虐待ほど心の痛むニュースはないと思います。