プロゲーマーになるための条件は? ふぇぐ選手が子どもに伝えたい「勉強はちゃんとしたほうがいい」

吉澤恵理

「初めて父に殴られた…」留年からプロへの決意

留年が決まっていたふぇぐ選手は、両親に留年時の授業料は自分で支払うと話し、両親の理解を得た。

【ふぇぐ】「父は、『ちゃんと卒業してくれるなら…』と留年することを許してくれました。大会の優勝賞金400万から留年の授業料は支払い、残ったお金はとくに派手に使ったりはせず貯金していました。最初は、将来のことはあまり考えていませんでしたが、ゲームを介して仕事のオファーが来るようになって、大学生のアルバイトと比べると高額なギャラに驚き、こういう世界もあるんだなって思いました。
 

留年中の2017年12月にシャドウバースの世界大会があり、賞金は500万円でした。特に練習や準備もしないまま出たのにベスト8に残って、そこでその年の優勝者に負けたんです。そこで、ゲームで初めて悔しいと感じました。

『もっと練習していれば勝てたんじゃないか?』と自分に問いかけて、その時をきっかけに『シャドウバースに打ち込もう!』と思いました」

留年するときに父から「ちゃんと卒業してくれるなら」と言われていましたが、ふぇぐ選手の向かった道は卒業からは遠いものでした。

【ふぇぐ】「本当に真剣にシャドウバースに打ち込むと決心し、さらに次の1年を休学することを決断しました。当然、両親はすぐには賛成してくれなかったし、特に父は、かなり怒っていて、その時、初めて父に殴られました。

それでも、僕の決心も少しも揺るがず、どんなに父が怒っても僕はプロの道を進むと決めていました。ちょうどその直後にシャドウバースのプロリーグが創設されることが発表され、『絶対にプロになる』という思いで応募しました。

KDDI、吉本興業、おやつカンパニー、サッポロビールがスポンサーを務める4つのプロチームが発足されることになり、僕はその中で吉本興業がスポンサーの「よしもとLibalent」に応募しました。それまでの僕の大会優勝やゲーム実況の実績も強みとなり、選手として所属が決まりました」

よしもとLibalent所属後のふぇぐ選手は、ゲームに打ち込む環境も整い、eスポーツのプロ選手として日本初の1億円と言う賞金を勝ち取り、日本のeスポーツを世界レベルまで押し上げたと言っても過言ではありません。そして、プロゲーマーとしての実力、知名度も一流となったふぇぐは、明治大学を中退しました。

【ふぇぐ】「この先の僕の人生で『明治大学卒業です』ということは、自分の経歴としてアドバンテージにならないと思いました。逆にeスポーツのプロ選手として成し遂げた実績や経験は、たとえ僕が引退した後でも僕の人生にとって大きなアドバンテージになると思い、大学を中退することを決めました」

このふぇぐ選手の言葉は、非常に深いと感じます。現在の日本では、いい大学を出ることが勝ち組へのチケットだと感じている人が少なからずいると思います。

しかし、どの大学を出たかと言うことよりも自分が何が強みであり、どう努力できるかと言うことが希望ある将来への扉を開く力になるのではないでしょうか。反対していた父も今では、ふぇぐ選手の一番のビッグファンとなっていると嬉しそうに笑います。

【ふぇぐ】「父は、大会も応援してくれますし、TVや雑誌などの出演情報を知ると周りに宣伝したり、すごく喜んでくれています。母は、昔から放任なので特には何も言いませんが、いつも僕がやりたいことに理解を示してくれましたね」

ゲームが好きだけではプロにはなれない

【ふぇぐ】「子どもが長時間ゲームをしていることが心配という親御さんたち気持ちはわかります。ですが、『否定を押し付けない』ことも大事だと思います。子どもがやっていることに対する理解も必要です。
 

子どもがゲームに夢中になっているとするなら、どんなゲームでなぜ夢中になっているかを知った上で考えるべきだと思います。ゲームに限らず、子どもが本気でやっているなら応援してほしいと思います。いい大学に行くことだけが正解ではないと思います」

そして、子どもたちにもふぇぐ選手からのメッセージがあります。

【ふぇぐ】「ゲームに夢中になることは悪いことではないと思います。でも、夢中になるからには、親に分かってもらう努力も必要だよね。勉強や家の手伝いなどもしっかりとしてからゲームをやる。そうすれば親も安心して見守ってくれるはず」

最後にふぇぐ選手にeスポーツのプロ選手を目指すにはどうすればいいのか、また、勉強は必要かを質問してみました。

【ふぇぐ】「『僕はゲームが好きです!』だけではプロにはなれません。シューティングや格闘、サッカーなど様々なジャンルのゲームがありますが、それぞれゲームの中で注目される大会などで実績を残すことが大事です。
 

優勝しなくてもトップに残るなどアベレージが高いことが大事です。また、プロになる場合は、勝率が重要となるので、勝つためには練習が必要で(大会が続く)シーズン中は1日8~10時間練習しても体力、メンタル共に耐えられる強さが必要です。その練習が辛いと思う人は、プロは向いていないと思います。勉強については、もちろんベストを尽くすべきだと思います。
 

それは、プロになれない場合もあれば、プロになっても思うように活躍できない場合もある。その時に別の道を考えることができる準備をしておくことは大事。それには、勉強はした方がいいと僕は思います」

ふぇぐ選手のアドバイスのように「やるべきことをやったらゲームはOK」というように親子で話し合い、家庭にあったルールを作ってみてはいかがでしょうか。