特別支援教育が「どんな子どもの発達にも」効果的な理由
気づいてほしい! あなたのまわりの「視覚支援」
特別支援教育においてエースで4番の活躍をするのが「視覚支援」です。
「視覚支援」とは、いちばんシンプルに説明すると「パッと見でわかる(わかりやすい)」支援のことです。
特別支援学校では「絵カード」「スケジュール」「手順書」など、いたるところで子どもの活動をサポートしてくれています。
「パッと見でわかる」と「具体的」に理解できるので「見通し」がもて、ストレスを減らすことができます。ですが、この「視覚支援」は、実はわたしたちの日常生活のいたるところにも存在しています。
たとえば、メニュー表。
ファミレスやファストフード店など、多くの飲食店では商品名や価格といっしょに「料理の写真」が掲載されていることがほとんどです。
ちょうど今この原稿をファミレスで書いているので、ちょっとメニュー表を見てリアルタイムの情報をお届けしますね。
な、なんということでしょう……すべてのメニューに「料理の写真」が載っています。サイドメニューもすべて。さすがは老若男女が利用するファミリーレストラン。どんな人にもやさしい配慮です。
もちろん、わたしはひとつも写真のないメニュー表を渡されても、注文自体に困ることはありません。ただ、写真があればいろんなことが「パッと見でわかる」ようになります。決めやすくなります。
人は「見通しがもてない」ことで不安になります。決断にストレスがかかりやすくなってしまいます。
ちなみに、さっき頼んだ「幕の内定食」は、写真がなければ頼んでなかったと思います。「幕の内」なんて文字だけだと中身は一切わからないので。
文字だけだと抽象的な「幕の内定食」は、写真があることで、「塩サバ、目玉焼き、ベーコンにウインナー。漬物と小鉢もついているんだ」と、「パッと見でわかる」ことができました。
言い方をかえると「具体的に知る」ことができました。
わたしは、「幕の内定食」に「見通し」をもち、ストレスが少ない状態で注文できたのです。
ほかにも街中でしょっちゅう目にする視覚支援は「ピクトグラム」です。たとえば「トイレ」の位置を示す表示。
「トイレ」の文字ではなく、ピクトグラムと一緒に表示されていることがほとんどです。仮に「トイレ」や「toilet」の文字だと理解できない人だってピクトグラムがあれば「あ、トイレなんだな」とグッと理解しやすくなります。
そう考えると視覚支援は、「パッと見でわかる」はもちろんのこと、「(多くの人が)よりわかりやすい」支援だとも言えそうですね。
海外旅行では、みなさんも多くのメニュー写真やピクトグラムにたくさん救われますよね。そのときに感じる気持ちが、発達につまずきのある子のサポートをするうえでとっても大事だってことを覚えておいてください。
ちなみに台湾に行ったとき、「赤信号の残り秒数」がカウントダウンで表示されていて「めちゃくちゃ見通しをもちやすい!」と興奮しました。日本でも増やしてくださーい。
特別支援学校での資料掲示物では、だれの目にも認識しやすくて、読みやすいように設計された「ユニバーサルデザイン」の文字が使われていることがほとんどです。
というわけで、いたるところに潜む「あれ? これも視覚支援かも」に、これからの生活で気づいてくれたらうれしいです。
そしたらきっとわかるから。「特別支援教育はなにも特別じゃないな」って。「特別支援教育は全人類に有効」だって。
特別支援教育が教えてくれた 発達が気になる子の育て方(かんき出版)
発達につまずきのある子どもたちと、そのまわりにいる大人のために、特別支援教育をベースにした「困った!」を小さくするヒントを凝縮。将来子どもが社会に出たとき、たくさんの人やサービスに助けてもらいながら、少しでも自立して生きるために必要なことを考える。