YouTubeばかり見ている…「子どもの困った習慣」が変わる親の声かけ
ほしいものを衝動で買ってしまい、すぐにお小遣いを使い果たしてしまいます。
このお悩みも、パッと見はつながっているように見えますが、いちばん大きな問題は「衝動的に買うこと」ではなく「お小遣いを使い果たすこと」です。
自費で宇宙へ行けちゃうような社長が、衝動的にうまい棒を8000000本買っても問題はありません。
持っているお金や生活に支障がない範囲の衝動買いなら、さほど大きな問題ではありません。
つまり、衝動的であることよりも、持っているお金を使い果たすような「困った」使い方をしてはいけないことを学ばないといけません。
もちろん衝動買いもほめられたものではありませんが、そのたのしさや後悔を、大人だって何度も何度も味わってるじゃないですか。
したがって、重点的にアプローチしていくのは「お小遣いを使い果たさない」お金の使い方です。では、どうやってこの課題に取り組んでいけばいいのでしょうか。
「お小遣いを使い果たしてしまう」は、言いかえれば「使い果たせるだけの(なくなったら困る)お金を持っている状態」です。
この状態は「一定額を決めず、ほしいものがあれば、その分のお金を渡す」というお小遣い制度では、当然ながら多発します。というか、この制度では衝動買いのアシストしかできません。
そりゃそうですよね。計画性がひとつもないんですから。あとは、「毎月3000円」など、一度にもらえるお金が多いお小遣い制度でも、起こりがちです。
「衝動買い」をもう少し具体的に定義すると、「後先を考えず、目のまえにある欲求の通りにお金を使う」です。「目のまえの欲求」を満たせるだけの金額があるのなら、使ってしまいたくなります。
とくに、「見通しをもつこと」や「気持ちや衝動性のコントロール」が苦手な子どもならなおさらです。
もう、おわかりですね。
そうです、ここでは、一度に入ってくる金額を少なくします。そうすれば、「目のまえの欲求に使えるだけのお金を持っていない」状態がつくりやすくなるからです。ない袖は振れません。特別支援教育でいうところの「物理的にできなくする(しにくくなる)」環境設定ですね。
「30日に1回3000円」よりも「10日に1回1000円」のお小遣いシステムのほうが、「後先を考えず、目のまえの欲求の通りにお金を使う」可能性が少し下がります。
「1日に1回100円」では、さらに下がるでしょう。「冬のボーナスが60万円出たから!」と衝動買いをする大人は多いと思いますが、これを1日3300円もらって貯めていたとすると、「60万円のボーナス」から「毎日3300円を半年貯めた60万円」に話が変わりますね。
「臨時収入」ではなく「こつこつ貯金したお金」になるため、衝動性は小さくなります。
「1日100円ずつ貯めても、30日後に3000円を1回で使ってしまったら、結局いっしょじゃないか!」と思うかもしれません。結果としてはおなじでも、過程は全然ちがいます。
「30日後の3000円」を使うことができるのは、「30日後の見通し」をもち、「3000円になるまでの30日の我慢」ができた子だけです。
「来月発売されるゲームのために貯めておこう」と、自分の欲求を理解してコントロールしたり、目標のために小さな努力を積み上げたりすることができていきます。もちろん、この力はお小遣いの話に限らず、たくさんの場面で子どもたちを助けてくれます。
子どもの衝動性や見通しをもつ力、計画性などを判断しながら適切なタイミングで適切な額のお小遣いを渡してあげられるといいですね。蛇口を緩めたり閉めたりしながら、水量を調整してあげるのは大人の役目です。
その一方で、誕生日やクリスマスなどの大きなイベントに「衝動買い(お金を貯めずにできる大きな買い物)」をする機会を設けてあげるのは、全然問題ないと思います。パーッとお金を使う喜びを知るのも大切です。
日頃からほしいものに優先順位をつけ、それを買うためにほかのものを我慢する。そうやって貯めたお金で、ほんとうにほしいものを買う。そういった感覚を育てながら、子どもたちにはお金と上手につき合ってほしいと思います。
あ、チャイムが鳴りました! ボーナスで衝動買いしたエアロバイクが届いたぞ。
特別支援教育が教えてくれた 発達が気になる子の育て方(かんき出版)
発達につまずきのある子どもたちと、そのまわりにいる大人のために、特別支援教育をベースにした「困った!」を小さくするヒントを凝縮。将来子どもが社会に出たとき、たくさんの人やサービスに助けてもらいながら、少しでも自立して生きるために必要なことを考える。