「2歳の子が急に食べなくなった」のはなぜ? 専門家が教える少食・偏食のこと
Q3 好き嫌いをしていると栄養失調になる?
3問目の答えも「×」です。
我が子の食に悩む親御さんが一番不安に思うのが、栄養面ですよね。
誤解を恐れずに言うならば、好き嫌いがあっても、栄養失調にはなりません。これまで3000人以上のカウンセリングを行ってきたなかでも、小食や偏食による栄養失調で病気になってしまったお子さんを、私は見ていません。
それでも不安な方は、次の2点を基準に、お子さんの栄養が不足しているかどうかをチェックしてみましょう。
1つは「成長曲線」です。大切なのは「身長と体重が平均値かどうか」ではありません。ここでは、お子さんの身長と体重が、それぞれ平均値からどの程度離れているか(SD値)を見ます。
下のグラフでaさん(5歳男子、身長が100センチ。体重14キログラム)を見てみましょう。身長は100センチなのでSD値で見るとマイナス1.5。体重は14キログラムなので、SD値で見るとマイナス2.0あたりです。つまり、身長マイナス1.5で、体重がマイナス2.0なので身長と体重のSD値の差は0.5程度です。周りの子に比べて体が小さく心配になると思いますが、特に問題があるわけではありません。逆に身長と体重のSD値の差が2.0以上ある場合は、栄養面に不安がありますので、病院を受診する必要性が出てきます。
(『食べない子が変わる魔法の言葉』より/著作権:一般社団法人日本小児内分泌学会、著者:加藤則子,磯島豪,村田光範 他:Clin Pediatr Endocrinol 25:71-76, 2016/0~18歳は右よりご覧ください。http://jspe.umin.jp/medical/chart_dl.html)
2つ目は厚生労働省が公表している『日本人の食事摂取基準』の「推定エネルギー必要量」(厚生労働書ホームページ https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586556.pdf)です。摂取基準が必ずしも満たされている必要はなく、7割以上が満たされていて、なおかつお子さんが元気そうなら、基本的には栄養失調の心配はないと思ってください。
この2つの基準でお子さんの栄養状態を見ると、ほとんどの方は「問題ない」と判断できるのではないでしょうか。
お子さんが食べないことで栄養面の心配をするのが親心です。しかし、その親心がお子さんを追い詰めてしまっては本末転倒。まずは「食べないと栄養が不足する!」という焦りを手放しましょう。そうすることで、”食卓が楽しくなるコミュニケーション”がよりスムーズに進んでいくはずです。