子どもの「苦手」を「できる」に変える親の言葉

羽生綾子
2023.04.19 10:55 2023.05.05 11:50

張本智和選手は苦手を最大の長所に変えられた

人のいない体育館

張本智和選手はアカデミーに入校した時、YGサーブを出すことができませんでした。多くの種類のサービスを出すことができなければ、相手に読まれて攻撃されやすくなります。

張本選手は国際大会で負けた時に、YGサーブを身につける必要性を強く感じて、その大会の後、帰国した翌日から、朝早く起きて卓球場に来て、サービスの自主練習を始めました。その数年後には、YGサーブが彼の一番の強みとなるサービスになりました。このように、少しずつ意識を変えていくことが大事です。

運動も勉強も、続けることが成功への第一歩となります。けれども、自分が不得意なことは、なかなかやろうとしないものです。

例えば、1日15分間、苦手なサービスを毎日練習していて、それを1年間続けた場合、かなりの練習量になります。

毎日行うのはとても難しいことですが、続けていくと大きな力になるので、自分のやろうと思うことを頑張るように、アカデミーの子どもたちに伝えています。

「雨垂れ石を穿つ」とことわざにもありますが、雨などの水滴がいつも落ちる場所は、コンクリートのような硬いところでもへこんでいるものです。

子どもたちには、「街なかで見てきてごらん。普段、自分が地面に水を勢いよくこぼしても地面はへこまないよね。でも、一滴一滴が何年も経つとへこみができるんだよ。すごいよね? それは人も同じ、あなたもコツコツやったら不可能と思っていたこともできるかもしれないよね」と話しています。

彼らは卓球をずっと頑張って続けてきています。そして今、強くなってアカデミー生としてここにいます。だからこそ、それをより細かく、自分のできるところもできないところもよく見て、突き詰めていきながら継続することによって、さらに研ぎ澄まされて伸びていけるよと、伝えています。

自発的に頑張るときには口を出さない

真剣な顔の子ども

先ほど述べた張本智和選手のYGサーブの例でも、全く打てなかったところから、自分でコツコツと続けてきたことによって、それを一番の特技にしてしまったのです。子どもたちには、そのような例をよく話しています。

張本選手は、悔しさを克服する天才です。世界卓球選手権で水谷隼選手に勝った試合が大きな話題になりましたが、大会の結果はベスト8でした。史上最年少でありながらも準々決勝での敗戦が悔しくて、帰国した翌朝から練習をしていました。「絶対に負けたくない」というのが彼のモチベーションだと思います。

自分で目的に向かって頑張ろうとしている時は、私たち周囲のスタッフは口を出しません。つまずいたり、行き詰まったり、必要な時に手をさし伸べますが、自分で一生懸命取り組んでいる時は、やれるところまでやるよう見守ります。

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子どもが本番で最高の結果を出せるコンディションの整え方(日本能率協会マネジメントセンター)
日本卓球界の未来を支えるエリートアカデミーの責任者を務め、フル代表のアスレティックトレーナーとしても裏方で支える著者が教える、子どものコンディショニングの整え方&本番で力を発揮する方法。子どもが良いコンディションを保ち本番で結果を出す秘訣を学べます。