ミリオンセラー絵本の謎? 『おやすみ、ロジャー』の結末を子どもたちが知らない理由

三橋美穂
2023.08.21 16:07 2023.08.18 11:50

物語に組み込まれた「睡眠のテクニック」

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『おやすみ、ロジャー』の原文に触れみて、快眠セラピストとしての視点から感心したポイントも多くありました。

まず本の冒頭に読者へ向けた本の手引きがあるのですが、「車を運転している人のそばで絶対に音読しないこと」と読み手の眠気すら誘いつつ、「読み聞かせの時には、子どもの名前で呼び掛ける」「あくびをする」という読み手への動作の指示があり、物語の世界に子どもが入り込みやすいようなディレクションがあります。

文章のなかにも「眠くなるよ」ではなく、「もう君は眠っちゃったんだ」というように、すでに達成したと子どもに思わせる言葉が多く使われています。これは「あ、自分は寝ちゃったんだ~」って子どもが思えるような仕掛けです。

さらに特徴的なのが、「自律訓練法」というメソッドがごく自然に物語に組み込まれていることです。例えば「首を楽にしてね」と、体の力を抜いていく指示をする部分などがそれです。これは効果があるだろうなと訳していて感じました。

この絵本は眠り方を教えてくれるものなんです。『おやすみ、ロジャー』でよく眠れる子は、この本のことを思い出しただけでも「こうやって寝るんだ」という道筋が頭のなかで描かれます。息をゆっくりする、体の力を抜いて、頭の中の考えを外に出していくんだという、眠る体への整え方が身につくんです。

読者アンケートで、「結論を知らない」という感想もよくいただきます。物語の6割目ぐらいに登場する、あくびおじさんに未だに会えていませんという声すらあるぐらいです。

子どもの睡眠について考える時に、大切なこと

脳も体も、寝てるときに発達します。レム睡眠は脳を発達させるための眠りで、特に子どもは一晩の中のレム睡眠の割合が多いです。ですから寝ないと体の成長だけじゃなく脳も成長しません。塾に行かせたとしても、しっかり寝ていないと力を充分発揮することができなくなるわけです。

最近のお子さんが寝ない大きな理由としては、体を動かす時間が減ってる、外遊びが減っていることが挙げられるのではないかと感じています。外遊びが減っていて、太陽を浴びる時間が少ない。太陽の光を浴びることによって、睡眠ホルモンのメラトニンがしっかり出るのです。

寝る前のことだけじゃなく、1日を通して睡眠というものを考えてみていただけるとよいのではないかと思います。

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