「うるせー!」口を開けば暴言も…反抗期の子を変える「親のひとこと」
家に帰ってくるなり自分の部屋に閉じこもり、口を開いたと思えば「うるせー」としか言わない…親を悩ませる「反抗期の子どもたち」。どのように接すれば、自然に会話ができるようになるでしょうか。長年の教師経験をもとに、子育て世代に向けてアドバイスを発信している親野智可等さんが解説します。
※本稿は親野智可等[著]ぴよととなつき[イラスト・マンガ]『反抗期まるごと解決BOOK』(日東書院本社)から一部抜粋・編集したものです
親野智可等(おやの ちから)
教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メールマガジンなどで発信中。
ぴよとと なつき
滋賀県出身のイラストレーター、まんが家。夫と息子2人と過ごす日々を育児マンガにしてSNSにて投稿中。最近オンラインで筋トレと英会話を始めました!ブログ「ピヨトト家のひとコマ。」voicy「近所のピヨトトさん」
部屋に籠城中!?
これまでもよそよそしい雰囲気はありましたが、ある日突然自分の部屋のドアにデカデカと「立入禁止」の張り紙を貼ってきました。ノックをしても「入ってこないで」の一点張りです。
完全拒否されているようで寂しいし、どうして急にこんなことになったのかも分からず親も混乱しています。部屋で何をしているのかも気になるし…。ひとまずこの張り紙をやめさせたいのですが、何か方法はありますか?
(中学3年女子の父)
立入禁止と書いてあるのにノックするのは無神経
ある日いきなり部屋にそんな張り紙を貼られたらびっくりしますよね。話しかけても反応なし、帰宅してもリビングは素通りで自分の部屋に直行、何を考えているのか分からない…。お子さんの状況は思春期・反抗期の典型とも言えます。
部屋の中で何が起きているかと気になるのも分かります。しかし今、子どもは自我の形成のために苦闘している最中なのです。外出先のドアに「立入禁止」と書いてあったら普通は入りませんよね。
この時期をできるだけ順調に切り抜ける方法としては、子どもをリスペクトし大人扱いすることです。そのためには大人が一歩引き、大きく構えて見守ることが必要です。部屋から出るよう強要したり、張り紙を無理に剥がさせたりするのは得策ではありません。
人と接したくないときは大人にもあるもの。普段以上に余裕がないときやイライラしているときなどは特にそうです。思春期の子も同様です。
例えば友達とのラインで良い返信が書けずに考えあぐねているとき、学校で起きたことについて悩んでいるときなど。そもそも思春期の子に良い反応など期待できないのに、こんなときに話しかけてもうまくいくはずがありません。
相談者のお子さんの場合も、こちらからはしつこく詮索せず、トラブルを抱えていて悩みを聞いてほしいときなど、向こうから話しかけてくるタイミングを待ちましょう。
そして話しかけてきてくれたら、とにかく話を共感的に聞くことです。例えば、子どもが「私は悪くないのに先生に怒られた」と言ったとき、「先生の話を聞いてなかったからでしょ」「いつも態度が悪いからよ」などと跳ね返すのはよくありません。こういう正論を押し付けていると子どもはますます何も言わなくなってしまいます。
まずは「そうなの? それは嫌だよね」と共感してあげてください。寄り添う言葉があるだけで子どもは話しやすくなります。愚痴を共感的にたっぷり聞いてもらえるとすっきりしますし「親は自分がどんなに大変か分かってくれる」と感じて信頼感が大いに高まります。子どもにとって信頼できる大人とは、自分のことを分かってくれる人なのです。
親がよくやる間違いは、子どもの話を聞いたとき、すぐに励ましやアドバイスをすることです。「大丈夫だよ。すぐ仲直りできるよ」とか「そんなの大したことじゃないわよ。元気出して」などが励ましで、「じゃあ、○○すればいいじゃん」「なんで○○しないの?」などがアドバイスです。
親は子どものためを思って言うのですが、共感がないところで言われても「そんな簡単なことじゃないよ。なんで私の話を聞いてくれないの? この人に言っても無駄!」と子どもに思われてしまいます。
まとめると、子どもが話しかけてきたときには次の3つが大事です。
①話しやすい状況や雰囲気を作る。
②共感的に聞く。
③すぐに励ましやアドバイスをしない。
今はとにかく待つことです。会話ができる日を待ちましょう。
部屋で何をしているの?
帰るとまっすぐ部屋に直行し、そのまま閉じこもってしまいます。家族とのふれあいは一切なし。中で一体何をしているかとても気になります。(高校1年男子の母)
詮索しすぎないこと。子どもはリラックス中です
家族のことも無視して部屋に直行してしまうお子さん、親としてはちょっと寂しいし何となく不安にもなりますよね。ですが思春期・反抗期の子どもにとってこれは普通のこと。この時期の子どもが部屋に閉じこもる理由は2つです。
①自分の部屋が一番安らげる空間だから
②親がうるさいから
学校や通塾など、現代の子どもたちは日々緊張感を持って過ごしています。そして家でもそれなりに緊張しています。彼らにとって自分の部屋はストレスを排除できる特別な空間。動画、ゲーム、ラインをしながら安らいでいます。
夕食など、子どもがどうしても部屋から出てこなければならないときが交流の機会です。普段から食事は楽しい時間にし、小言や嫌味はやめて明るい声掛けに徹しましょう。
子どもの行動が気になるからとしつこく本人を問いただしたり、スマホの中や机の引き出しの中をこっそり覗いたりしてはいけません。子どもにもプライバシーがあります。子どもに見つかったときのリスクが大きいので気をつけましょう。
全く会話をしていない…
丸2ヶ月、ろくに話をしていないんですがこれは大丈夫ですか? 正直寂しいし不安な気持ちです。親子なのにまるで他人みたいな気分。
(中学1年女子の父)
「話しやすい状況」を意図的に演出してみる
全く会話がない状況は思春期・反抗期には珍しくありませんが、やはり寂しいものですよね。
こんな例があります。反抗期真っ只中の息子さんとの間で会話が全くなく悩んでいたTさんの話です。ある夜、息子さんと2人でコンビニに買い物に行きました。親子で並んで歩いていたところ、息子さんが急に部活の人間関係で悩んでいると話し始めました。
「これは珍しいこともあるものだ」と思いつつも、Tさんは「そうなんだ。それは嫌だね」「困るよね。悩むね」と、ひたすら共感的に息子さんの話を聞いたとのこと。
帰宅後、息子さんはすぐ自分の部屋に入ってしまいましたが、Tさんはラインで「話してくれてありがとう」と送りました。すると、「こっちもありがとう」と返事が来ました。しかも笑顔のスタンプつき。
この成功例から見えてくるのは次の3点です。
①面と向かっては言えないことも、暗い夜だと話しやすい傾向にある
②向かい合わせでなく横並びだった
③話すことが目的ではなく、買い物という別の目的があった
子どもが話しやすい状況や雰囲気を意図的に作ってみましょう。例えば寝る前には間接照明に切り替えるなどです。「塾への送り迎えをする車中でだけ会話が成立する」「親と子で共同作業をしているときに意外と会話が成立しやすい」という話もよく聞かれます。
何を言っても「うるせー」
ごはんだよ「うるせー」。オフロに入って「うるせー」。明日お弁当あるの?「うるせー」。もはや「うるせー」が挨拶の息子。せめてごはんくらい食べてよ!
(中学1年男子の母)
とりあえずごはんは用意する。後は待つこと
相談者さんはお子さんに普通に挨拶してほしいのですね。でも残念ながら、反抗期真っ只中の子どもにまともな挨拶を求めても無理です。彼らはそんな気になれません。もし「挨拶くらいしなさい」と強要しているとしたら、それは親がケンカをふっかけているのと同じです。
ひとまずごはんは用意してあげて、後は待つことも大事です。子どもが食べたら「食べてくれて嬉しい」「食べてくれてありがとう」と伝えましょう。「何か食べたい物ある?」と聞くのもいいですね。以下のように共感的で民主的な対話をすることも大切です。
例えば「9時までに夕食を食べてほしい」とき。まず話を共感的に聞くことで、食事が遅くなったり食べなかったりする理由も分かります。親として何か言いたいことがあっても、まずは共感的に聞くことに専念します。
たっぷり聞いた後に「健康面の心配や片づけの都合もあるからやっぱり9時半までには食べてほしい」「いらない日はメールしてね」などとこちらの希望も伝えます。そして譲れるところは譲ります。
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反抗期まるごと解決BOOK(日東書院本社)
本書では反抗期に生じる様々な悩みを具体的な事例を挙げて紹介。
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