ニキビと遺伝は関係ある? 「肌トラブルに悩む子」の親が知ってほしい正しい知識

吉澤恵理、花房崇明

子供は成長とともに様々な変化が現れます。身長が伸び、体重が増えるだけはなく、ホルモンの分泌も変化し、男女の違いが顕著になってきます。

また、体の成長に伴い大きく変化するのが子供の肌であり、肌にトラブルを抱えることも少なくありません。その中でも『ニキビ』は、多くの子供が経験するトラブルと言えるでしょう。

しかし、ニキビの発症時期には個人差があり、症状も様々で、異なる種類のニキビが混在することがほとんどです。そして、ニキビに悩むのは当事者の子供だけではなく、親御さんが『早くニキビを治してあげたい』と一緒に悩んでいるケースが多く見受けられます。

今回の記事では、『子供のニキビ』について大阪府豊中市の千里中央花ふさ皮ふ科院長・花房崇明医師にお話を伺いました。

ニキビは何歳からできる?

医師の花房崇明(はなふさ・たかあき)さん

【吉澤】私は、息子が3人と娘が一人おります。今は成人した子供たちですが、10代の頃はニキビに悩まされました。最初は、小学生高学年の頃、頬にポツポツと赤みが出る程度でしたが、当時は、すぐにニキビとは気づきませんでした。

私だけでなく、まだお子さんが小学生の場合、『まだニキビができる年齢じゃないのでは?』と思う親御さんも少なくないと思います。実際にはニキビは、何歳くらいからできるものでしょうか?

【花房】男女とも第二次性徴が始まる10歳頃からニキビができることがあります。第二次性徴の発現に伴い、男性ホルモン、女性ホルモンの分泌が活発になる影響で、皮脂分泌が盛んになり、毛穴が詰まりやすく、そこにアクネ菌が繁殖して炎症を引き起こすと赤いニキビとなって表れます。

【吉澤】子供の場合、夏場には汗による湿疹(汗疹、あせも)、冬には乾燥からの湿疹なども起きやすい傾向にあると思いますが、ニキビと湿疹の見分け方はありますか?

【花房】ニキビというと『赤く盛り上がったニキビ』を想像する方が多いと思いますが、実はニキビにはいくつかの種類があります。白ニキビ(面皰、コメド)は毛穴がふさがり白くプツプツとした状態でかゆみや痛みはありません。赤ニキビは、毛穴の中で増えたアクネ菌が炎症を起こした状態でかゆみはありませんが、炎症の悪化に伴い(押すと)痛いこともあります。

汗や乾燥による湿疹は、通常かゆみがありますので、ニキビと見分ける際に参考にしていただくとよいかと思います。しかし、実際には混在していることも少なくありません。またカビによるマラセチア毛包炎という病気はニキビと見分けがつきにくいので、ニキビかもと思ったら医療機関に相談ください。

ニキビは放置してもいい?

【吉澤】親御さんの中には、ご自身が若い時にニキビが多く、『遺伝』かと心配される方もいらっしゃいます。ニキビは遺伝との関連はあるのでしょうか?

【花房】皮膚科学会のホームページでも同様のQ&Aがあり、「にきびは9割以上の人がかかる病気です。そのため、家族のなかににきびの人がいるのは普通です。一卵性双生児を調べたところ皮脂の分泌量を測定すると同じでしたが、にきびの重症度は違っていたという海外のデータもあります。あまり遺伝について心配する必要はありません」と記載されているとおりです。

【吉澤】お子様が小中学生の場合、治療には親御さんのサポートが必要だと思いますが、ニキビが広範囲ではなく、痒みや痛みがなければ、放置しても良いのでしょうか?

【花房】親御さんには、お子様のニキビ治療には、積極的に関わってほしいと思います。

広範囲にニキビがない場合でもニキビが悪化し、重症化すると、クレーターと呼ばれる凹みや赤み、ケロイドなどのニキビ跡が残ってしまう可能性があります。中には、一生残ってしまうニキビ跡もあるので注意が必要です。

【吉澤】ニキビ治療といえば、一般には洗顔と市販のニキビ治療薬がポピュラーだと思いますが、まずは、そういった対処法でよろしいでしょうか?

【花房】セルフケアだけでは限界もありますが、ニキビケアの基本として、1日2回の泡立てた石鹸で擦らずに洗顔することや、ノンコメドジェニック(油成分を抑えた成分構成で白ニキビができにくい)と記載された化粧品を使用することが推奨されます。

医療機関では、毛穴の詰まりを取るピーリング作用のある塗り薬や、赤ニキビに効果的な抗生物質の塗り薬や飲み薬などニキビの種類に適した治療薬などが処方されるので、重症化する前に医療機関に相談することをお勧めします。

ニキビについて分かりやすく参考になるお話でした。次回は、皮膚科で行うニキビ治療について詳しく伺います。