子どもが反省しない原因にも…「罰を与える叱り方」がNGな4つの理由

島村華子
2023.10.27 11:57 2023.11.20 17:00

褒美と罰、2つの落とし穴

ブランコに乗る子ども

「アメとムチを与える」という表現があるように、褒美や罰を交互に使い分けることはよくしつけで行われています。褒美(物をあげる、むやみにほめるなど)や罰(物をとりあげる、叩くなど)を与えることは、子どもの行動を上からコントロールする方法であるという点で似通っています。

大人の都合に合わせてほめたり、褒美をあげたり、あるいは罰を与えて、大人の思いどおりに子どもを操ろうとする意図があるからです。つまり褒美と罰は条件付きであるという点で表裏一体なのです。

礼儀正しくしてほしいから「えらい!」とおだてたり、もっと勉強をしてほしいから「お利口さん」とほめたりしていませんか。行動をコントロールするために使っているだけのほめ言葉は、それが本音ではないことが子どもにも伝わるものです。

罰と褒美の落とし穴は、どちらも与え続けないといけないというところにもあります。

罰を与えたとしても、子どもは同じ行動を繰り返す、あるいはその行動が悪化することがよくあります。行動が悪化すればまた別の罰を与えなければなりません。

褒美も同じで、与えれば与えるほど、褒美への依存が強くなり、さらに褒美を与え続ける必要があります。たとえば、小学生の子どもが算数で100点をとったから1000円をあげるとします。その子が高校生になったら、どんな褒美で満足するでしょう。当然、1000円では足りなくなります。つまりイタチごっこなのです。

叱られる女の子
そして褒美と罰のもうひとつの落とし穴は、子どもが自己中心的な考え方になってしまうところにあります。ほめられ続けると、次はどうやったらほめられるかということに意識が向くようになります。

この結果、自分の行動(例:友だちに優しくする)が相手に与える影響(例:友だちが笑顔になる)を考えずに、自分のことだけを考えるようになります。

たとえば、優しい子になってほしいと思うあまり「優しいね」「えらいね」と、人中心ほめやおざなりほめをすることは、逆効果になるばかりか、ナルシストになってしまう可能性があるのです。

また罰も同じで、自分に罰を与える相手が悪いと思うようになる、あるいはいかに罰を逃れるかということに意識が向きます。このため、褒美を与えられるのと同様に、罰の場合も自分の行動(例:弟に意地悪をする)が相手に与える影響(例:弟が悲しい思いをする)を考えずに、自分の損得だけを考える自己中心的な人になってしまうのです。

上手な叱り方の4つのポイント

子どもを慰める親

子どもを叱ることは、社会適応に必要な知識やスキルを教えるために必要なことであり、罰を与えて子どもの行動をコントロールするために行うものではありません。子育てにおいて、上手に叱るというのは、上手にほめることよりも難しいことです。

特に子どもが言うことを聞かないときや癇癪を起こしているときは、親もイライラしてしまって、感情的な対応をしてしまうこともあるでしょう。

では、子どもとつながるためには、どのような叱り方をしたらよいのでしょうか。次の4つのポイントが大切です。ほめるときと本質的に共通する部分が多く感じられると思います。

叱り方4箇条
1.「ダメ!」「違う!」をできるだけ使わない
2. 結果ではなく努力やプロセスに目を向ける
3. 好ましくない行動の理由を説明する
4. 親の気もちを正直に伝える

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島村華子

オックスフォード大学修士・博士課程修了(児童発達学)。モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者。上智大学卒業後、カナダのバンクーバーに渡りモンテッソーリ国際協会(AMI)の教員資格免許を取得。カナダのモンテッソーリ幼稚園での教員生活を経て、 オックスフォード大学にて児童発達学の修士、博士課程修了。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わる。 専門分野は動機理論、実行機能、社会性と情動の学習、幼児教育の質評価、モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育法。

X:@hana_shimamura