なぜ子どもを怒鳴ってしまう?「育児のイライラ」を減らす2つの習慣
子どもに優しくしたい、もう怒鳴りたくない……。そんな親御さんに、イライラしないちょっとしたコツを、アンガーマネジメントコンサルタントの小尻美奈さんがご紹介します。
※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年5月号から一部抜粋・編集したものです。
どうしてイライラが生まれるの?
子育てのイライラでよくあがるのが、「子どもが起きない」「おもちゃで遊び始めて着替えない」「朝食をダラダラ食べている」などの朝のイライラです。1日の始まりを笑顔で過ごしたいと思いつつ、「早くしなさい!」と怒鳴ってしまうのはなぜでしょう?
怒りが生まれるメカニズムを、ライターのイラストで説明します。炎が自分の怒りだとしたら、その炎を燃やすのは、ライターの着火スイッチがカチッと入るからです。この着火スイッチにあたるのが、怒りの正体となる自分の「べき」です。
「べき」とは、自分が当たり前だと思っている価値観や、「こうしてほしい」という自分の理想や欲求を象徴する言葉で、自分の「べき」が目の前で裏切られると怒りが生まれます。
「すぐに起きるべき」と思っているから、「早く起きなさい」と何度言っても起きない子どもにイライラするし、「朝の準備がすべて終わってから遊ぶべき」と思っているから、朝ごはんも食べずに遊んでいる子どもを見ると腹が立ちます。
そして、お母さんの怒りの炎が大きく燃えあがりやすいのは、そもそもライターの燃料が満タンな状態であることが多いからです。
時間に間に合わない「焦り」や「不安」、遅刻する「心配」、何度言ってもわかってもらえず「困る」「不満」「嫌」など自分が抱えていたマイナスな気持ちや、ストレスや疲れ、睡眠不足などで体がマイナスの状態であればあるほど、怒りの炎は大きく燃えあがるのです。
子どもへの「早く!」を減らすには?
子どもについ声を荒らげてしまう……。そんな方は、次の3つを試してみましょう。
①「べき」を少し緩めてみよう
イライラの元となる自分の「べき」がわかれば、いつどんな状況でイライラしやすいのかがわかります。もし、その「べき」を持っていることでイライラしやすいのであれば、少しだけ緩めてみましょう。
たとえば、「朝ごはんは全部食べるべき!」を「小さなおにぎりを食べればOK 」、「朝の準備がすべて終わっていないのに遊ぶべきでない!」を「家を出る5分前に準備ができていればいいから、着替えながら遊んでいてもOK」など。このように、「べき」を書き換えることで許容範囲が広がり「早く!」と言わずにすみます。
②「イライラパターン」を壊してみよう
誰にでも自分特有の”イライラパターン”があります。公園から帰るとき、お風呂に入る前の時間、祖父母がいるときなど、つい子どもに「早くしなさい!」と言いがちな状況はどのようなときでしょうか。
そんなときは、伝える言葉やタイミング、表情や態度、行動など、何か1つでいいので変えてみる「ブレイクパターン(イライラのパターンを壊す)」というアンガーマネジメントのテクニックを取り入れてみましょう。
たとえば、公園の砂場で「まだ遊びたい!」となかなか片付けようとしない子どもに「早く片付けなさい!」ではなく、「一緒に片付けよう」「帰ったらおやつを食べようか」と、伝える言葉を変えてみる。遊び始めるときに「今日は1時間で帰るからね」、帰る10分前に「あと10分で帰るからね」と伝えるタイミングを変えてみる。
いつもは遠くから声をかけていたのを、子どもの手をとり「お片付けしようね」と態度や行動を変えてみる。このように、何か1つだけ変えることでうまくいけば、パターンを壊すことができます。
③「早く」を具体的に伝えよう
「早くしなさい!」と言いがちな「早く」は、5分なのか30分なのか。親と子どもによって捉える時間知覚はそれぞれ違うため、具体的に伝えましょう。
・「早く起きなさい!」→「7時半までには起きようね」
・「早く食べなさい!」→「長い針が6にくるまでに食べ終えてね」
・「早く片付けなさい!」→「◯◯の歌を歌い終わるまでに片付けてほしい」
このように、子どもを責めず、「早く」を具体的な言葉にして、親がやってほしいことや守ってほしいことなどを伝えます。
いまを楽しもう
マイナス感情やマイナス状態をたくさん抱えている(ライターの燃料がいっぱいの状態)ほど、イライラすることも増えていきます。日頃から燃料を減らす(=マイナス感情やマイナス状態を溜めない)ことを心がけてみましょう。
・ハッピーログを書いてみよう
そのためにぜひおすすめしたいのが、「ハッピーログ」というアンガーマネジメントのテクニックです。些細なことでいいので、嬉しい、楽しい、ハッピーに感じた出来事と、そのハッピーを感じる強さのスケール(1:低い⇔ 10:高い)を、メモ帳やスマホなどに記録していきます。
ハッピーログを記録していくと、毎日イライラすることばかりだけでなく、日常には小さな喜びや楽しさが溢れていることに気づけます。また、「嫌なこと」ばかりではなく「嬉しい・楽しい」と感じることに目や意識を向けられるようになっていきます。
さらには、ハッピーログの記録を振り返ることで、どんなことに心が満たされるのかという自分の傾向を理解することもできます。
「ひとり時間」にハッピーを感じやすい人、「体を動かすこと」にハッピーのスケールの度合いが高い人と、自分の傾向がわかれば、日頃からストレスやイライラを溜めないために、「ひとり時間をつくる」「家でYouTube をみて毎日エクササイズする」など、自分をハッピーに満たすための行動を選択できるようになります。
・ハッピーログの例
【日時・場所】4月10日 朝 自宅
【できごと】夫が子どもを公園に連れて行ってくれた
【思ったこと】やった! 家で映画鑑賞しよう
【ハッピーの強さ】5
・リラックスメニューをつくろう
ハッピーログを振り返って、自分が満たされる環境や空間、人、アイテム、時間はどのようなものか考えてみます。その上で、リラックスメニューをつくってみてください。
5分あればできること、2時間あればできること、半日あればできること、など時間別に用意しておくと、すきま時間にリラックスメニューに取り組むことができます。
「早く!」とめまぐるしい毎日に、自分の時間なんて持てないと感じることもあるかもしれません。「誰からも労ってもらえない」と悲しくなるようなときもあるかもしれません。
ですが、自分で自分の心を満たすこと、自分を労うことは、いつでもできることです。「早く!」が増えてきたら、1日に5分でもいいから、自分が満たされるリラックスタイムをつくってあげましょう。
・リラックスメニューの例
5分:コーヒーをいれる、アロマを焚く、ストレッチ
2時間:美容院、録画していたドラマ鑑賞
半日:友人とランチ、買いもの