都会と地方の子どもの間で生じている「情報の格差」の問題点

佐藤優
2023.11.27 20:11 2023.12.25 11:30

地元のつきあいから飛び出したい

勉強する学生

【ロダン】話が脱線したから元にもどすと、同じ土地の中で人が循環するしくみがあるからこそ、地元には地元のコミュニティがあるわけです。同じしくみが国全体で回れば、ナショナリズムを生み出すきっかけになるけど、1つの地域で完結していれば、それは地元愛になるわけです。

【ミナト】地元大好き、ジモティの世界だ!

【ロダン】そっちのほうが変に気をつかうことなく、ラクでいいという人もたくさんいます。そういう人がいるから、地域経済が回っているんです。若い人がみんな都会に出ていってしまったら、地方が衰退するのはさけられません。

【ナギサ】お年よりしか住んでない過疎地域がふえていると聞きました。

【ロダン】ただ、それは地域全体の話であって、みなさん1人ひとりのレベルでは、地元のつきあいが楽しいという人もいれば、そういう輪の中に入れなくて苦しんでいる人もいる。いくつになっても学校時代の上下関係がなくならないなんて、息苦しくてたまらないという人は、はなれた土地に引っ越すか、別の地域の大学や就職先を目指すことになります。

【ナギサ】相談できる大人がいないと、きびしそう……。

【ロダン】お父さん、お母さんに理解があれば、それにこしたことはない。でも、そうじゃないからといって、あきらめることはない。担任の先生、進路指導の先生、塾の先生やチューター、進学校に進んだ先輩、都会で暮らす友だちのお兄さんやお姉さん、親戚のおじさん、おばさん……。その気になれば、ツテはどこかに見つかるものです。

【ナギサ】大人の力を借りなさい、ということですね。

【ロダン】その人はなぜそこに行ったのか、どうやって地元から抜け出したのか、そのために何をすればいいのか。直接話を聞くことができれば刺激になるし、相手もきっと親身になって相談に乗ってくれるはず。

たとえ直接話はできなくても、そういう人がいると知るだけでも意味があります。あの人にできたのなら、自分にもきっとできる。そう信じることができたら、あとは実際に「やるか、やらないか」だけの問題だからです。

【ミナト】やらないってことはないよね。

佐藤優

佐藤優

1960年、東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。現在は執筆や講演、寄稿などを通して積極的な言論活動を展開している。

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