「中学受験の算数にセンスは不要」中受のプロ講師が教える苦手教科の伸ばし方
中学受験に向けて一生懸命勉強しているけれど、どうしても不得意な科目がある、という子どもは少なくないのでは?
中学受験の第一線で30年以上指導してきたプロ講師・渋田 隆之さんに、基本の科目である算数と国語それぞれの勉強のポイントについて聞きました。
※本稿は渋田 隆之著『2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです
算数にセンスは必要ない
中学受験塾に入って一番苦労するのは、おおよそ算数の可能性が高いです。
「旅人算」「過不足算」「ニュートン算」などの特殊算は、小学校で習う内容とはまったく別物です。
「男子は算数が得意で、女子は苦手」などとも言われますが、「努力によってなんとでもなる」ものです。とくに5年生ごろまでの偏差値は、言われたことがきちんとできるかどうか、真面目かどうかだけで決まっているといっても過言ではありません。
算数が難しいと感じるのは、(中学受験をしていない)保護者が解けない、教えられないからというのもあるかもしれません。逆に大人だと、国語は人生の経験値で解けることがあるので、より算数の難しさが際立つのでしょう。
また、算数では選択問題もないため、当て勘で点数が取れることもありません。他教科では少し考えにくいような低い点数を取る可能性が十分にあるでしょう。入塾後のテストで「100点満点かと思ったら150点満点だった……」とショックを受けることも十分あり得ます。
算数のワンポイントアドバイス
・ まずは「計算」ができると、模試の点数が安定します。ただし「計算ぐらいは」と言えないほど、難度が高いことを理解しておきましょう。
・ 算数嫌いな子は、図やグラフを描くことが苦手です。まずはまっすぐ線を引く練習のために方眼ノートを購入するのもいいでしょう。
・ 算数のノートでは消しゴムを使わないようにすることも、一つの手です。算数の練習のときに消しゴムを保護者が預かっていた家庭がありました。間違った過程を残す習慣がないと、やり直しができなくなります。
語彙力をつけたいなら
中学入試の国語の文章問題では、高校入試や大学入試で扱われてもおかしくないテーマが出題されることもあります。「VR」「ジェンダーギャップ」「子ども食堂」「宗教」「介護」などがテーマになることだって、いまや特別ではありません。
大手塾の国語の授業は、週に2回程度が平均だと思います。ですから、世の中のことに興味を持つきっかけづくりという観点では、家庭での会話が重要になります。
「子どもにこんな難しい社会問題を言ってもわからないだろう」などと考えず、食事のときや車移動のときなど、短時間でもいいので、ニュースで話題になっているような社会問題について会話するようにしておくと、ちりも積もれば山となります。
難関中学をめざす子は、雑学的な知識や一般常識まで、幅広く身につけていることも求められます。わからないことや興味のあることは、保護者と一緒にパソコンで「調べてみること」、そして関連する項目があったら「ふくらませてみること」というのも大切です。
また、文章を読んで出てきたわからない言葉を辞書で調べる力も、今のうちにつけておくべきです。
ただし、小学生向けの辞書には調べたい言葉が載っていないけれど、大人向けの辞書では解説に使われている言葉が理解できずに、さらに辞書で探して無限ループ……ということもあります。入試は時間との勝負でもあるので、辞書で行き詰まったらパソコンで検索をするのもありだと思います。パソコンだと、理解できるところまで細かく調べやすくなります。
記述のスピードを上げるには
長い目で見ると、大学の論文やレポート、社会に出てからの資料作成やビジネスメールなど、生活を送るうえで文章を書かずにすむ日はありません。小学生のうちに身につけた「記述力」は、一生使える大きな武器になります。
よく話すのに、記述問題になるととたんに鉛筆が動かなくなってしまう子は、「書き言葉」に慣れていないかもしれません。対策としては、読書を通して名文に触れることが王道ですが、忙しい受験生は朝日小学生新聞の「天声こども語」を上手に活用するといいでしょう。
「天声こども語」をノートへ書き写すのを習慣化すると、「同じ時間で書ける文字数」が増加していきます。日本語は、主語と述語が離れたところにあるので、一度にとらえることができる文字数を増やすことで、理解力も飛躍的に向上します。また、「天声こども語」は直近のニュースが題材になっているため、読んでおくだけで社会の時事問題対策にもなります。
実際にやってみるとわかるのですが、書き写すスピードは子どもによって大きな差があります(373文字を写すのに、5〜15分ぐらいの差があります)。
模試や入試で出題される記述問題では、記述の文字量が想像しているより多いものです。書き写すのが遅い子は、内容がわかっているのに時間オーバーになってしまうというもったいないことも起こります。読むスピードばかりが気になりますが、書くことにも慣れておく練習もしましょう。
記述問題を空欄にしないコツ
「国語の模試結果を見ると、記述問題の解答が空欄ばかりです。受験する学校は、記述問題がたくさん出るのですが、このままで大丈夫でしょうか」
こんな相談をよく受けますが、普段は日本語を使ってコミュニケーションがとれているはずですので、「練習をしたら書けないことはない」ということをお伝えしています。
100字程度の記述でも長いと感じる子には、まず苦手意識をなくすことが必要なので、私はこんなふうに伝えています。
「X(旧Twitter)という150字程度の文を書くSNS があるんだけど、150字くらいは『つぶやく』レベルなんだよ。難しく考えすぎなくても大丈夫」
わかりやすい文章にするためのポイントは、次の通りです。
・一文を短くする
一文を短くすると、何を伝えたいのかが明確になり、リズムがよくなります。また主語・述語のねじれもふせげます。
たとえば、「今日は雨が降っていたので塾に行きたくないと思い、お母さんにそう言ったら叱られた」という文は、「今日は雨が降っていた。だから塾に行きたくないと思った。しかし、お母さんにそう言ったら叱られた」のように、一つひとつを短くします。
・かかる言葉(修飾語)の順番に注意する
かかる言葉が2つ以上ある場合は、順番に注意します。
たとえば、「かわいい帽子をかぶった女の子」は、「かわいい」と「帽子をかぶった」と、説明する表現が2つ続きます。したがって、言葉の順番を整理しないと、「かわいい」のが「帽子」なのか「女の子」なのかわかりにくくなってしまいます。そこで「帽子をかぶったかわいい女の子」とすれば、「女の子」が「かわいい」ことがはっきりします。
・意味の重複がないか意識する
意味の重複は意外に多いものです。「ぼくの将来の夢は、医者になるという夢です」などのように、同じ言葉が出てきていないかも注意しましょう。「貯金を貯める」は「貯金をする」となります。
よくある間違いは「過半数を超える」です。「過半数」にはもう「超える」という意味が含まれているので、「半数を超える」「過半数になる」が正しい表現です。
最初は、原稿用紙(枠)の使い方などを細かく指摘したりせず、書こうとする意識をそがないように自由に書かせてあげましょう。まずは多少、内容には目をつぶって、短い文からでも「書く」ことを習慣づけるといいでしょう。
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2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100(かんき出版)
2万人を超える受験生親子を合格へ導いてきたプロ講師が、 中学受験で悩み、迷っている人の手助けとなる100のヒントを紹介します。
□塾はどう選べばいい? 大手だったら安心?
□勉強の習慣をつけるコツって?
□志望校はどうやって決める? 変えるのはNG?
□学校を見学するときのポイントは?
□模試の結果は、何に注目すればいい?
□受験直前期、子どもとどう接するべき?
などなど、受験をするか迷っている人にも、塾に通っている人にも役立つ!
著者の教え子とその保護者のエピソードも満載です。