絵本でペットのお世話が体験できる? イタリアのデザイナーが生んだ作品の魅力
【nobicoブックセレクト】乳幼児期は、言語や感情、社会性など様々な面で急速に発達する大切な時期です。絵本の読み聞かせはその成長を助ける上で効果的と言われています。
今回は子どもたちがペットのお世話を通して生き物への愛情を育むことをコンセプトとしています「えほんのペットシリーズ」(ダイヤモンド社刊)を紹介します。
『ねこのおせわをしてください。』『いぬのおせわをしてください。』『ハムスターのおせわをしてください。』の3作品からなるこのシリーズは、イタリアの絵本作家シルヴィア・ボランド(Silvia Borando)さんとロレンツォ・クレリチ(Lorenzo Clerici)さんの作品です。
読み聞かせタイムがもっと楽しくなる! お世話体験型絵本の魅力
「えほんのペットシリーズ」は、ヨーロッパ各国で高い評価を受けてきた作品です。『ねこのおせわをしてください。』の原書は「IBBYオナーリスト」(2014)にも選出されています。本シリーズの翻訳者である清水玲奈さんは、子どもが夢中になる本書の秘密について次のように語ります。
「ペットに名前をつける仕掛けで、絵本と読者の間に特別な絆が生まれます。そして、自由奔放なペットたちのお世話に振り回される様子が面白いんです」
イタリアの洗練されたデザインが生きる絵本
『ねこのおせわをしてください。』などのシリーズ作品は、イタリアが誇る一流のデザイナーたちによるビジュアルとしかけが魅力です。
「著者のボランドはミラノ工科大学デザイン学部卒で、クレリチは映像作家です。ふたりの作品は英語圏やフランス語圏でも高く評価されています。イタリアらしい洗練されたデザインとユーモアのセンスが、絵本の世界を最大限に引き立てているのです」(清水さん)
紙の絵本ならではの、豊かな親子の時間を
質の高い絵本体験は、デジタル全盛の現代だからこそ大切だと作者と出版社は伝えています。
「デジタル時代の子どもたちにも、紙の絵本の豊かな世界を味わってほしいです。ペットのお世話を通して優しい心を育む時間は、子どもたちにとってかけがえのない思い出になるはずです」(清水さん)
「本物のペットを飼うのはハードルが高いご家庭でも、この絵本なら気軽に親子で楽しんでいただけます。ぜひ多くの方に手に取ってもらいたいです」(ダイヤモンド社)
同社の担当編集者の金井弓子さんににこの本の魅力を改めてお聞きしました。
「『ねこのおせわをしてください』をはじめとする「えほんのペットシリーズ」との出会いは、ひとめぼれでした。イタリアの児童書見本市で偶然見かけた本書をひらいた瞬間、シンプルで愛嬌のあるイラストと意外性があって目が離せないストーリー展開に心をつかまれてしまったのです。
文字数の少ない本だからこそ、翻訳にはこだわりました。翻訳者の清水玲奈さんと協議を重ねて、原書のテンポ感の良さをいかしてオノマトペたっぷりの翻訳に仕上げました。
また、原書の鮮やかな色味を再現するために、専用のインクを使った5色印刷での印刷を行いました。お子さんとの読み聞かせの時間が楽しくなる、工夫満載の絵本になったと思います」
子どもの感受性を豊かに育む良質な絵本を、親子でゆっくり味わってみてはいかがでしょうか。「えほんのペットシリーズ」は、家族の読み聞かせタイムに新しい彩りを添えてくれるに違いありません。