「友だち作りの上手な子」に育つために親にできること
プロコーチ/NLPマスタープラクティショナーの田嶋英子さんは、人間関係は、コミュニケーションスキルでつくれるものだと語ります。本稿では、「人と仲良くする」スキルを、おうちという安心・安全の場所で練習するカンタンな方法を紹介します。(マンガ/坂木浩子)
※本稿は、 田嶋英子著『「うちの子、コミュ障かも?」と感じたら読む本』(青春出版社)から、一部抜粋・編集したものです。
「はい、どうぞ」「ありがとう」で受け取る練習
1歳後半くらいのお子さんが、積み木や車を持って来てくれました。ちっちゃい手で、「どうぞ」って渡してくれます。受け取って、「ありがとう」と言うと、満足そうな顔をします。何か仕事をやり遂げたぞ、そんな顔です。
それをまた、「はい、どうぞ」と渡すと、にこにこして受け取ってくれます。あたたかいものが、循環します。
おうちでの、日常のコミュニケーションにも、こんなふうな循環があると、よさそうですね。たとえば、食卓で、おしょう油を取ってもらうときって、どんなコミュニケーションをしてるでしょう。
「おしょう油取って」「はい、どうぞ」「ありがとう」こんな感じですか?「しょう油」「ん」こんなおうちもあるかもしれません。
子どもがしょう油に手を伸ばす→ママが気づいてしょう油を取ってあげる……いい悪いは置いておいて、コミュニケーションの手順が省かれているのが分かりますね。
家庭では、言葉でのコミュニケーションはとかく省略されがちです。お互いのことをよくわかっているからこそ、といういい面ももちろんあります。ところが、「言わなくてもやってくれる」がスタンダード(基準)の家庭では、「言ったのにやってくれなかった」ということが、不満やケンカの原因となりがちです。
「お父さん、ゴミ出ししておいてね」「……」(無言、あるいは生返事)
あっ、また出してない!もう!(腹を立てながら、あるいはため息をつきながら、自分でゴミ出しする)
「家族は言わなくてもやってくれるものだ」という思い込みが、不要な怒りを生む原因になっている、と私は考えています。
「大事なことだから、わざわざ言ったのに(してくれなかった)」と思うから、腹が立つのです。それが続くから、がっかりし、「言ってもしてくれない」、この人はそういう人だ、とあきらめていくのです。
「言わなくてもやってくれる」をやめましょう
家庭以外の場面では、「言わなくてもやってくれる」は、スタンダートではありません。職場ではどうでしょうか。
「これをしてください」「分かりました、いつまでですか?」「いついつまでにお願いします」「承知しました」「終わりました、確認お願いします」「確認しました、ありがとうございます」
少なくとも、これくらいのやり取りは必要です。家族間でこんなやり取りが必要なのか? と思うかもしれません。でも、もし、「言ったのにやってくれない」という不満が続いているのなら、必要なフェーズ(段階)に入っていると判断してください。
「言わなくてもやってくれる」「言わなくても分かってくれる」というのを、家庭のスタンダートにするのは、もうやめましょう。言わなければ伝わらないし、確認しなければどのように理解したのかも分かりません。
そして、明確に伝える、確認する、そして、感謝するという丁寧なやり取りを、新しいスタンダートにしていきましょう。
そのやり取りを見て育った子どもたちは、社会の中で、どんなコミュニケーションを取るでしょうか。丁寧で、確実な仕事をすることに、つながりそうですか? 信頼される人物になりそうですか? 家族を大切にできる人になりそうですか?
家庭でのコミュニケーション、意識して、丁寧に確実にやっていきましょう。やり取りの回数が、関係性をつくっていくと知ってください。
人と関わる体験を楽しむ「ごっこ遊び」
「おままごと」って、昔からある遊びがあります。「お母さん」「お父さん」「子ども」の役割になって、ご飯つくったり、食べたりする遊びです。「お母さん」役が人気で、誰がなるか取り合いでした。子どもにとって「お母さん」という役割が憧れだったわけですね。
ここでは、「役割遊び」をご紹介します。「役割」とは、関係性のことです。役割によってふるまいも言葉も変わります。誰でも「お店の人」になれますし、「お客様」にもなります。お店の人とお客様との関係性を、「レストランごっこ」で体験しましょう。
お店の人(シェフ、ウェイター・ウェイトレス役)とお客役に分かれます。お席を用意します。メニューをつくっておくのもいいですね。お客様は、お店の人が案内してから座ります。
「ご注文は何になさいますか?」
お料理をつくる、運ぶ、テーブルに並べる。
「はいどうぞ、召し上がれ」
この遊びでは、お店の人が主役です。使っている食材やお料理の内容を説明してもらいます。お客様は、シェフに敬意を払いお店の人に感謝して食べるのがルールです。
買ってきたものや宅配してもらったものを食べるときにも、ぜひ「レストランごっこ」をやってみてください。ウェイターさんになって並べるだけでも「役割遊び」です。
子どもたちは「おみせ遊び」のようなごっこ遊びが大好きです。「役割」を考え、段取りを考え、お客様とのやり取りを楽しめるからです。小さいころから、世の中にはいろんな役割があることを体験してほしいですね。
「食卓にお箸を並べる役」で自己有用感アップ
毎日の食事のときに、テーブルをきれいにしたり、お箸を並べたり、しますね。それも、「役割」です。
子どもたちにも、「役割」をあげてください。「テーブルをきれいにする役」「お箸を並べる役」役割を果たせると、自己有用感が上がります。
自己有用感とは、「自分は役に立つ」っていう感覚のことです。「役に立つ」って嬉しいことです。
もちろん、「テーブルをきれいに拭いてくれてありがとう」「お箸を並べてくれてありがとう」って、「確認」と「感謝」をしてくださいね。
実際に社会に出ると、役割を果たして仕事をしても、感謝されることはあまりありません。その代わりに「お給料」「報酬」が入ります。だから仕事を続けられます。
家庭では、金銭としての報酬の代わりに、感謝の言葉が「通貨」だと思ってください。めんどくさくても、「やって当たり前」と思わずに、感謝の言葉を口に出していきましょう。「通貨」ですから、循環してきますよ。
「ママ、いつもありがとう」「パパ、いつもありがとう」
いいエネルギーが回ってきます。こんないいコミュニケーションを取ってるおうちって、素敵ですね。
関連書籍
「うちの子、コミュ障かも?」と感じたら読む本(青春出版社)
「自分の話を一方的にしゃべる」「人と目を合わせられない」「話を聞けない」「言いたいことが言えない」...。 どんな子も大丈夫!今日からちょっとした親の習慣でコミュ力は伸びる! AI時代に必要なのは「話す力」より「人に好かれる力」「仲良くなる力」――12歳までに育てたい「コミュニケーション脳」を家庭で伸ばす一冊。