「ほめると子どもが調子に乗る」は正しい? ”ほめ育”保育園が実践する才能を伸ばす声掛け

向井秋久
2024.07.02 13:13 2024.07.02 17:10

笑顔の母と息子

子どもは褒められて伸びるもの。しかし「ほめてばかりで大丈夫なの?」と不安に思う親御さんもいるかもしれません。親が身につけるべきほめ方について、「日本一ほめる保育園」として知られるげんきこども園理事長の向井秋久さんの書籍『子どもが伸びるほめ方 子どもが折れない叱り方』から紹介します。

※本稿は、 向井秋久[著]、モチコ[イラスト] 『子どもが伸びるほめ方 子どもが折れない叱り方』(Gakken)から一部抜粋・編集したものです。

子どもは調子に乗らせて伸ばす

子どもにやさしく語りかける親

・ほめるとお世辞は違う

ときどき「ほめると調子に乗るのでほめません」という親御さんがいますが、じつにもったいないことです。どんどんほめて調子に乗らせれば、子どもはどんどん伸びていくからです。

大切なのは結果をほめるのではなく、努力や工夫をほめることです。お世辞のように表面だけを見てほめる、成果を出したからすごい、のではなく、がんばったからすごい、努力したから成果がでた、という方向で調子に乗らせれば、自分から進んで努力をする子になるのです。

お世辞とほめ言葉は違います。お世辞は、そこに損得勘定、計算があって、見返りを求めるものです。ほめるときには、特に見返りを必要としません。

・子どもを伸ばすためにほめる

どうしても目先のことに意識が向いてしまいがちですが、ほめる目的を見失わないことも大切です。ほめるのはお子さんを伸ばすため。評価するためではありませんよね。

私たちの園では、指導に跳び箱を取り入れていますが、跳び箱の高い段をクリアすることが目的ではありません。子どもたちは、跳び箱に挑戦することを通じて、いろいろ工夫したり努力をしたりすることを体験します。工夫や努力を楽しむのは、人間にとってとても大事なことです。それを体感してもらうための跳び箱です。

それがわかっていないと、誰かに発表するための跳び箱、その子のできを評価するための跳び箱になってしまいます。

結果だけをほめられると、お子さんは誰かが見ているときにしかいいことをしないようになります。ほめられるために結果ばかりを追い求めるようになってしまい、次第にしんどくなっていってしまうでしょう。

言うことを聞かない男の子
・子どもの言いなりにはならない

子どもの意見は尊重しなければなりません。しかし、子どもの意見を尊重するのと、子どもの言いなりになるのとは違います。子どもの希望通り、本人が嫌がることを避けてばかりいると、子どもの世界がどんどん狭まっていってしまうのです。

そのひとつの例が、偏食です。食べ物の好き嫌いがあるお子さんに、「それが子どもの意見だから無理に食べさせることはない」というのもひとつの考え方です。でも、それでは子どもは、決まったものしか食べなくなって栄養が偏ってしまいます。

まだ抵抗力の弱い子どもは、身を守るために本能的に知らない食べ物を避ける傾向があります。大人が、子どもの言いなりにならずに、食べるものを広げてあげる必要があるのです。

アレルギーがない限り、一口食べてみよう。それでどうしても嫌だったらやめよう……と、挑戦させ、食べられたらほめる、というアプローチをくり返したほうが子どもの世界は広がります。

いいことも悪いことも「子どもが決めたことだから」と親御さんが従うのは、子どもの自主性を尊重しているようですが、逆に、お子さんの世界を狭めてしまうことにもつながります。

モノより心、お金をかけるより工夫をしよう

草原を歩く親子

・お金をかけなくてもできること

子育て中の親御さんのなかには普段は「時間がない」「お金がない」と言いつつも、旅行やイベントに使うお金と時間は惜しまない人もいます。

子どもを喜ばせたい、いろいろ体験したいという気持ちに嘘はないでしょう。家族旅行やバーベキューなど、楽しいイベントの思い出がたくさんあるのはいいことだと思います。

私も子ども達が幼い頃には、あちこち旅行に連れて行きました。ただ、家族で温泉旅行をした数年後、子どもたちに「何を覚えてる?」と聞いたら、「公園のブランコで、押してもらって一緒に遊んだことが楽しかった」と言われてしまいました。

せっかく旅行に行ったのに、一番楽しかったのは普通の公園か、とがっかりしましたが、子どもにとってはそういう普段の何気ない時間のほうが大切なのかもしれません。

子どもに様々な体験をさせるには、お金がかかると多くの人が思い込んでいます。でも、お金をかけなくても、工夫すればいいのです。

子どもは新品のきれいなおもちゃでないと遊べないということはありません。台所の食器をちょっと貸してあげれば立派な「おままごと」の道具になります。砂場で、砂と石と水だけで何時間でも遊べます。

高い知育玩具を買うより、手作りおもちゃでしっかりお子さんの相手をするほうが、お子さんの自主性もコミュニケーション能力も伸びます。また、YouTubeも上手に使えば海外の様子も分かるし、英語も学べます。海外のリアルを知りたかったら近くに住んでいる外国人に直接会いに行けばいい。

その気になれば、お金をかけなくても、子どもにたくさんの体験をさせることができます。身近なことから、お金をかけずにぜひ創意工夫してみましょう。

抱き合う親子
・子どもに向き合う時間を作る


たとえ、どんなに手がこんだ料理でも、食事中、お母さんはスマホ、お父さんはテレビを見ていて、自分と目も合わせてくれない、そんな会話のない状態で食べたら、子どもは味気なく感じてしまうでしょう。

親子で向き合って「あのね、きょうね……」と会話をしながら食べれば、ごく簡単なおにぎりと目玉焼きだけの食事でも、特別においしく感じます。

お金がない、時間がない、と言いながら、本来お子さんと向き合うべき時間に仕事をして、そこで稼いだお金で家族旅行に行ったり、高額な習いごとをさせたりというのは、違う方向に豊かさを求めているような気がします。

時間とお金をどこにかけるのか、何に向き合うべきなのか、本当に大切なものを多くの親御さんが見失ってしまっているかもしれません。もちろん、旅行や習い事も貴重な体験ですが、まずは身近な部分から、できることから、何かを始めてみてはどうでしょうか。

向井秋久

社会福祉法人千早赤阪福祉会理事長。29歳で園長に、36歳で2代目理事長に就任。約40年間、大阪府で幼児教育の現場に携わる。現在、大阪にて、こども園を5園、認可保育園を1園運営。実際に自身も現場に日々顔を出し、子どもたちと触れ合っている。また、一般財団法人ほめ育財団が提唱する「ほめ育」を園に取り入れ、テ
レビでも「ほめ育導入園」として取り上げられ、注目を集める。ほめて育てる「ほめ育」導入園としては、日本一の規模を誇る。モットーは、「どんな子供も唯一無二の天才性を持ち生まれてくる」。

関連書籍

子どもが伸びるほめ方 子どもが折れない叱り方

子どもが伸びるほめ方 子どもが折れない叱り方(Gakken)
日本一の規模の「ほめ育」導入園の保育園から「ほめる育児」のポイントと、子どもたちが伸びる・折れない言葉がけのポイントを具体的に伝授します。今や、「ほめる育児」はよく聞きますが、実際のところほめてばかりではダメ! しかり方のポイントも。