日本一ほめる保育園が実践する、年齢・発達段階別「ほめ方・叱り方」

向井秋久

子どもを伸ばすために「ほめる」ことは大切ですが、子どもの発達段階に合わせた伝え方をすることが重要です。げんきこども園理事長の向井秋久さんの書籍『子どもが伸びるほめ方 子どもが折れない叱り方』から紹介します。

※本稿は、 向井秋久[著]、モチコ[イラスト] 『子どもが伸びるほめ方 子どもが折れない叱り方』(Gakken)から一部抜粋・編集したものです。

子どもの発達に合わせて伝える

ほめるときも、叱るときも、子どもの発達段階に応じた伝え方をすることも大切です。その子の成長やタイプに合わせて伝えなければ意味がありません。

ここでは、年齢を基準に、ほめるときはどのくらい、注意するときはどのくらいの言葉を伝えればいいのか、目安を書いておきます。その子によって発達のスピードや具合は違うので、年齢はあくまでも参考と考えてください。

0~2歳まで

2歳までの赤ちゃんは、無条件にほめてあげましょう。特に「見て見て」というような素振りを見せたときや、得意げな表情のときなど、タイミングを逃さず、「すごいね!」「いいね!」など短い言葉でほめることを心がけてください。笑顔や拍手などのアクション、声のトーンは、やり過ぎかなと思うくらいでちょうどいいでしょう。

注意するときは、きっぱりと目を見て伝えます。赤ちゃんでもいいことと悪いことの違いは伝わります。

2~3歳

だんだんその子の個性が出て、社会性も芽生えてきます。ほめるときも注意するときも言葉でわかりやすく伝えましょう。ほめるときは結果よりも、やろうとした意欲を尊重して、ほめるようにします。

注意するときはできるだけ具体的な言葉で、肯定的に伝えます。「走らない」→「歩こうね」、「散らかさない」→「きれいにしよう」の方が子どもに伝わります。また、危険なことは何度でもくり返し伝えることが大切です。

4歳~

年中、年長さんは、本音で接することが大切です。ほめるときは自分なりに工夫できた、取り組もうとしている姿を具体的にほめます。たとえば鉄棒や跳び箱など、頑張っている姿をほめ、できたときは一緒に喜べるといいですね。

注意するときは、なぜそうしたのか思いを聞くことが大切です。そのうえで、正解を与えるのではなく、「どうしたらいいと思う?」と本人に考えさせるように働きかけましょう。

花開く時期はひとりひとり違う

年齢別に目安を書いてから言うのもなんですが、小さい頃の年齢や月齢は、あくまでもただの生まれてからの時間の数字です。その子によって発達には非常に波があります。

にもかかわらず、子どもの発達に悩むお母さんを最近よく目にします。SNSの影響もあり、他の子どもの情報がイヤでも目に入る時代。どうしても、同じくらいの月齢の子と比べてしまい、わが子の発達に焦りを感じてしまうようです。

「桃栗3年、柿8年」「ゆずは18年、りんごは25年」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。果物の桃や栗の木は植えて3年経てば果実が収穫できますが、柿は8年待たないと実がなりません。ゆずやりんごはさらに長い期間が必要です。柿の木に「3年経つのに実がならないのはダメだ」と言う人はいないでしょう。柿を育てようとしたら8年待つのがあたりまえです。

子どもでも、桃の木、栗の木のような発達の早い子がいれば、柿の木のようにゆっくり育つ子もいます。その子にとってはまだ時期ではないのに「まだできないのか」と焦ってしまう親御さんが少なくありません。

1歳くらいで喋りだす子、2歳すぎてやっと言葉が出てくる子、どちらがすぐれているということはありません。喋りはじめるのが早くても遅くても、ずっと喋らなくても、子どもは無条件で素晴らしい存在です。

小中学校でどんなに勉強ができて一流大学に行ったとしても、社会に出た瞬間に潰れてしまう人もいます。その一方で、学生時代は劣等生でどうにもならなかった人が会社を興して大成功した、といった例も珍しくありません。先のことは誰にもわからないのですから、子どもの今の状態だけを見て、あれこれ気にするのはやめましょう。