中学受験で成績が伸び悩む子の家庭に共通する「やってはいけない習慣」

西村則康

「塾に通わせているのに、子どもの成績が上がらない…」その原因には何があるのでしょうか? 中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表・西村則康さんは、家庭で育まれる「生活知識」と「身体感覚」が、子どもの学力の伸びに大きく影響を与えていると語ります。本稿では、書籍『中学受験は親が9割 [令和最新版] 』より、家庭で気を付けたい習慣について解説します。

※本稿は、西村則康著『中学受験は親が9割 [令和最新版] 』(青春出版社)から一部抜粋・編集したものです。

英才教育のほとんどは有害ですらある

幼児期から早期英才教育を謳う塾などに通わせているご家庭もありますが、早期教育よりまずは家庭の環境、会話を第一に考えましょう。しかもこうした「早期英才教育」というのはほとんどが役に立たず、むしろその後よくない影響が出ることも多いのです。

英才教育などしなくても、脳は適切な時期に適切な速度で成長していきます。自然に逆らって特殊な方法で成長速度を上げようとすると、必ずどこかにひずみが出てきます。

たとえばフラッシュカードを使ったもの、右脳教育など、いずれも訓練すれば反射的にどんどん答えが出せるようになりますが、「わかった!」「なるほど!」という理解、納得感、面白さはなく、感情はまったく動いていません。

早い時期から機械的に直感だけの訓練ばかりを続けていると、文章を読んでも感情の動きが理解できない、好きなことをしているはずなのに表情が動かない、遊びに連れて行ってもあまり楽しそうでないなど、感情の起伏が起きにくくなってしまうのです。

さらに直感に頼る学習ばかりしていると、小学校高学年になり、本格的に考えなくてはならない発展的な問題も「カン」だけで解こうとします。文章問題も、適当にパッと見て意味がわかったような気になってしまうのです。

小学生向けの速読教室というものもありますが、私はまったく不要だと思います。この速読練習は、黙読のスピードを上げる目的で行われます。多くのケースでは、目から入った文字を含む画像情報から意味を抽出するよりも何倍も速い視線移動を要求されます。

このような速読で読書が好きになるわけでもないし、教科書も塾のテキストも、試験問題も通常のスピードで読めれば十分。

むしろ、情景を想像しながら心理を感じ取る読書本来の楽しみを知らない子どもになってしまうでしょう。私が知る限り、速読をやっている子はまず国語の成績が下がり、続いて算数がダメになります。

子どもと話すとき「助詞」をきちんと使えていますか?

これは音読とも関係がありますが、親子の会話も子どもの成長に大きな影響を与えます。
特にお母さんの話し方が大きいのです。「宿題は?」「ほらお風呂」「早く!」「時間よ!」などの言葉ばかりだと、子どもも同じような話し方しかしなくなります。

母「今日、学校は?」
子「楽しかった」
母「テストは?」
子「フツー」

このような会話になっていないでしょうか。

家族同士だから、主語、述語、目的語をきちんと助詞でつないで話す必要はない、という場合もあるでしょう。しかし、そればかりだと、「メシ、フロ、ネル」しか言わない大人と変わりません。親子でも夫婦でも、以心伝心に頼ってばかりでは、コミュニケーションにならないだけでなく亀裂を生みさえします。

母「今日、放課後に何か楽しいことはあった?」
子「うん、友だちと遊んだよ」
母「誰と何をして遊んだの?」
子「◯△君と公園でサッカーをしたんだ。×○君と、2組の□△君も来たんだ。みんなでリフティングの競争をしたら×○君が10回で僕は8回で2位だった!」

このような会話であってほしいのです。どんなにたどたどしくても、回りくどくても、「楽しかったのならなんでもいいわ」と話を打ち切らず、辛抱強く聞いてあげてください。親のほうも、子どもと話すときはなるべく「てにをは」をきちんと使うように意識してください。

テレビ、スマホ、ゲームはなるべく遠ざける

成績が振るわない子の家庭は、どうもテレビの台数が多いように思います。リビングに2台、ダイニングに1台、さらに子ども部屋にまでテレビがあった例もあります。ご家族の興味がテレビばかりなのでしょうか、リビングには本棚も見当たらず、子ども部屋にあるのもマンガと参考書だけ。テレビが悪いというわけではありませんが、家族が幅広い知的好奇心を持った家庭のほうが子どもは成長します。

子どもに本を読ませたければ、お母さんも読み、子どもに勉強をさせたければお母さんも学ぶ。高学年の受験勉強の内容をぜんぶは理解できなくても、「お母さんに教えて」と頼んで子どもに説明してもらい、ちゃんと聞いて理解しようと努力してください。「なるほどねえ」としか言えなくてもいいのです。

「勉強しなさい」「本を読みなさい」と口うるさく言い続けるだけで、お母さんがソファでテレビばかり見ていたら、子どもが勉強するはずはありません。

もうひとつ気をつけてほしいのが、やはり今はゲームとスマホです。低学年の場合は、スマホといっても、ほぼゲーム機として使うことのほうが多いですが、ゲームというのは一度始めると子どもが自分の意思でやめるのは難しいものです。「30分」と約束しても、「きりがいいところまで」になりがちです。

ゲームというのはほとんどが反射神経の訓練です。すぐ上達しますが、一種の中毒性があるのでどんどんはまってしまう傾向があります。反射的な反応ばかり鍛えていると、深く考えるべきときに考えられないという弊害が出ます。これはフラッシュ暗算や速読の短所と同じです。

ゲームやスマホを「持たせない」という選択肢もありますが、与える場合はそこをよく考え、「リビングでしか使わない」「必ず決められた時間だけにする」といった約束をきちんと決めてからにすべきです。また、留守番をさせるときは親がゲームを預かるくらいにしないと、子どもはひたすらゲームをし続けることになります。

勉強によくない影響が出るだけでなく、液晶画面を長い時間見続けることは目にもよくありませんし、寝る前だと安眠を妨げることもわかっています。こうしたことを子どもにもよくわかるよう話してあげて、親子で節度のある時間だけ楽しむようにしてください。子どもに禁止しておきながらお母さんが常にスマホをいじっているようでは、効果はありません。そのくらいの覚悟をもって接してください。

中学受験は親が9割 [令和最新版]

『中学受験は親が9割 [令和最新版] 』(西村則康 著,青春出版社 刊)

「今は勉強が大変でも、志望校に入ってしまえばあとが楽なはず」「小学4年生になったら、レベルの高い大手塾に入れればいいんでしょ」「塾で出された宿題は、合格のために全部やらせなきゃ」これらはすべて、親の誤解に基づくやってはいけない考え方なのです。
これまで灘、開成、桜蔭などの難関中学に3000人以上を合格させてきた塾ソムリエ、カリスマ家庭教師の著者が、志望中学に合格するという目標にどう立ち向かい成就させるか、まだ情報がゼロの人にもわかるよう解説していきます。

ぶれず、迷わず中学受験に取り組むためのバイブル的な一冊です。