「片づけなさい」と叱るのはNG? 部屋を散らかす子が心に抱えるもの

舛田光洋
2024.10.01 10:03 2024.09.09 11:50

子ども部屋

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子ども部屋は、何歳から持たせるのがベストなのでしょうか? せっかく部屋を与えても、散らかし放題にしていたら、親としてはつい小言を言いたくなりますよね。

しかし、子どもが部屋を散らかすのには、その子なりの理由があることが多いようです。

「片づけなさい」と叱りたくなった時に思い出したい一節を、そうじ力研究家・舛田光洋さんの著書、『賢い子の「そうじ力」 そうじで身につく集中力、思考力、判断力』より抜粋してご紹介します。

※本稿は、舛田光洋,宮本さおり著 『賢い子の「そうじ力」 そうじで身につく集中力、思考力、判断力』(日本実業出版社)から一部抜粋・編集したものです

子ども部屋は子どもの心のバロメーター

ランドセルと散らかったノートと鉛筆

小学生のお子さんをお持ちのご家庭の方と話をすると、子ども部屋をいつ与えるかが話題になることがあります。日本では、乳幼児のうちから子ども部屋を持たせる家庭は少ないため、子ども部屋をいつ与えたらいいのかと迷うご家庭が多いのです。

あるハウスメーカーが子ども部屋についての調査を行なったところ、子ども部屋を持っている子の割合は小学校1〜2年生男子が37.0%、女子は45.7%。小学校5〜6年生では、男子58.3%、女子73.2%という結果でした。子ども部屋を設けた時期は、小学校1年生(27.8%)が最も多く、次に「幼稚園年長相当」15.9%でした。

子ども部屋を与えた理由を見ると、低学年では「(将来)一人で勉強できるように」、2〜3年生は「(将来)一人で寝られるように」という親主導の解答が目立ちますが、小学校4〜6年生では、半数が「子ども(たち)が欲しがったから」と、子ども主導で子ども部屋を持つことになったケースが増えていました。

もう一つ、同じ会社が行なった調査で興味深いものがありました。そのアンケートは、子どもが小学生になったことで新たに増えた家事や生活の変化について問うものでした。結果にはこんな答えが並びました。

「家に“もの”が増えた」(46.5%)
「収納が足りなくなった」(28.3%)

小学校に上がると、まずは教科書や絵の具などの教材が増えますし、学年が上がると習字道具やリコーダー、裁縫箱など、以外と場所をとる物が次から次へと家にやってきます。

入学の段階では子ども部屋を与えないにしても、こうした学用品を置ける場所を確保することが必要になります。

整った部屋を保つためにはそれぞれの物の置き場所を決める必要があります。いってみれば”その物の住所”です。お子さんに「いろんな物たちも、ここが自分の住所って決まっていたら、元の所に戻りたくなるんじゃないかな」などと話してみるのもいいかも知れません。

新しく物が増えたら、お子さんと一緒にそれぞれの物の住所を決めておけば、散らかってしまったときにも戻す場所がわかっているため、片づけやすくなります。

しかし、このように子どもの物を置くコーナーを決めたり、子どもに自分の部屋を持たせた家庭では、今度はこんな声が上がってきます。

「うちの子、散らかし放題で困るんです」

「子どもの部屋を覗いたら、机の上に教科書やプリントが散乱、どうやったら整理整頓できるようになりますか?」

「何度叱っても部屋を片づけなくて困っています」

この本を読んでくれている皆さんの中にも頷く人は多いのではないでしょうか。

散らかった部屋を見ると、思わず叱りたくなりますが、そこをぐっとこらえて少し考えてみてください。

子どものストレスに気づいてあげる

勉強が憂鬱な女の子

部屋は自分の心を表す鏡でもあります。子どもたちは朝早くから学校へ行き、授業を受けて、友だちと遊び、また重たいランドセルを背負って自宅に帰ってきます。子どもにとって学校は世界の全てのようなところですが、そこではいろいろなことが起こります。

「友だちとケンカをしてしまった」

「忘れ物をして先生に叱られた」

「勉強が全然面白くない」

「部活動でレギュラーから外されてしまった」

などなど、嫌なことがあったとしても、いちいち「親には言わない」という子も多いです。彼らは彼らなりのストレスをため込んで家に帰ってくるのです。

しかし、子どもは自分にストレスがたまっていることを、自分で気が付くことができません。ストレスがたまっているサインは、怒りっぽくなるなどの、態度からわかります。

部屋というバロメーター

悩みを抱える女の子

ある精神科医は、たとえ楽しいことであったとしても、脳は疲れるのだと言っていました。脳が疲れるとストレスもたまります。ですから子どもの空間が散らかるときは、片づけることができないほど、外でたくさん脳を使って帰ってきているということが考えられるのです。

部屋は子どもの疲れ具合を見える化してくれる心のバロメーターなのです。

そう考えると、声のかけ方も変わってくるはずです。大きな声で

「片づけなさい!」

と叱っても、子どもは叱られたということしか頭に残りませんし、いやいや片づけをすることになり、余計にストレスがたまります。子どもが口答えをすれば、無駄な口論が勃発し、こちらも結局ストレスがたまりますから、何もいいことがありませんよね。

舛田メソッド「そうじ力」の場合、まずは部屋を褒めてあげることから始めます。

「毎日頑張っている子の部屋だね」

と、優しく声をかけてみてください。そして、子どもの声に耳を傾けていきます。

このときに、親がイライラしていると、子どもは本音を話してくれません。

以前、子どもとお風呂に入るのは何歳までOKかということがニュースになったことがあります。公認心理士の先生は、できれば低学年まででやめたほうがいいだろう、とおっしゃっていました。

大きくなっても異性の親とお風呂に入っていると、異性に裸の姿を見られても恥ずかしくないという子に育つ可能性があるそうです。

記事には小学校高学年の息子がまだ一緒にお風呂に入るけど、大丈夫だろうかという母親の声がありました。公認心理師の先生は、この子の場合はゆっくりと母親と話せる時間がお風呂のときしかないからなのでは、と分析していました。

子どもは親がリラックスしていないときには本音を話しにくいそうなのです。ですから、お子さんの本音が聞きたいときは、親もなるべくリラックスした気持ちで向き合うことが大切なのです。

お子さんの部屋が散らかり始めたなと思ったら

「今日の授業はどんなことをしたの?」

「最近、○○ちゃんは元気?」

「サッカー忙しそうだね」

「塾の宿題、難しい?」

など、ためしに最近の外での出来事を聞いてみてください。

そして、会話の中から本人が悩んでいることや、頑張っていることを見つけて、その気持ちに寄り添うような言葉をかけてあげましょう。

本書の冒頭で社会人になりたての頃の娘の部屋が乱れていたという話を書きましたが、娘も

「頑張っているんだね」

と声をかけただけで、気持ちが溢れてきました。

精一杯頑張っているときほど、人間は全身に力が入っているものです。緊張をほぐしてあげることも、親の大切な役割だと思います。

舛田光洋

そうじ力研究家。1969年北海道生まれ。2005年「心と掃除」の研究により自ら開発した実践型思想「そうじ力」で社会啓蒙活動を開始する。『夢をかなえるそうじ力』(総合法令出版)を出版。国内外52冊におよぶ『そうじ力シリーズ』は累計380万部を超える。近著に『一生、運がよくなり続ける!「そうじ力」ですべてうまくいく』(三笠書房)がある。現在は、子どもの学習意欲、成績向上のためのそうじ力や、企業などに対しての環境整備にも力を注いでいる。

X:@masuda621

Instagram:@elmitu77

賢い子の「そうじ力」 そうじで身につく集中力、思考力、判断力

賢い子の「そうじ力」 そうじで身につく集中力、思考力、判断力』(舛田光洋,宮本さおり 著/日本実業出版社 刊)

小~中学生の子を持つ親や教育関係者に向けて、子どもが本当の賢さを得られる「そうじ力」を初公開!累計部数380万部超の「そうじ力」の舛田光洋氏が、気鋭の教育ジャーナリスト宮本さおり氏と組んで、家庭での「そうじ」の効用を伝える一冊。子ども部屋、リビング・ダイニングなどを、「捨てる」「汚れを取る」「整理整頓」のスリーステップでキレイにして、“賢い子どもが育つ環境”に変えるヒント、方法が満載!