どこで産むべき? 総合病院、産院、助産院のメリット・デメリットを医師が解説

遠藤周一郎

妊娠がわかったら、「どこで産むか」を決めなくてはなりません。自分に合った施設を探すために知っておきたいのが、総合病院、産院、助産院の違いです。

産婦人科専門医の遠藤周一郎先生の著書『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK』より、それぞれの施設のメリット・デメリットについての解説を抜粋してご紹介します。

※本記事は、遠藤周一郎著『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK』(KADOKAWA)より、一部を抜粋編集したものです。

お産取り扱い施設のメリット・デメリット

赤ちゃんの心拍が確認できたら、次は、分娩する施設を探しましょう。最近では、人気の施設だと分娩制限を設けるところも多く、早めの予約が必要です。施設によっては、人気アーティストのコンサートチケット並みに予約がいっぱいで受け付けてもらえないところもあります。

日本では大学病院から産院、助産院までさまざまな施設でのお産を選ぶことができるので、迷ってしまうかもしれません。

医師の立場からみて、できるだけ外してほしくないポイントとしてあげるなら、自宅から通いやすい施設・自分の妊娠のリスクを許容できる施設を選ぶという点です。ちょっと辛口になってしまうかもしれませんが、各施設のメリットとデメリットを解説します。

大学病院・総合病院

メリット

最大のメリットは、他の診療科との連携が取りやすく、妊娠中に起こるさまざまな合併症に対して迅速かつ最良の治療が可能という点。また勤務する医師も多く、知識や技術も高いレベルで平均化しています。膠原病や心臓病などの合併症を持った人、以前の出産で常位胎盤早期剥離や子宮破裂など大変なお産を経験した人は、これらの施設をおすすめします。

デメリット

規模が大きいだけに病院全体のルールがあり、融通がきかないことも。例えば母子同室ができなかったり、立ち会い出産ができないなどです。さらに食事についてもいわゆる「病院食」という感じのものが多いです。

ただ、最近は総合病院でもルールを緩めている病院も。また、大学病院は「教育」の役割も担っているので、リスクが低い出産や手術は若い医師の執刀で行うことも。もちろんチームで手術や診療にあたるので心配はいらないですが。

産院

メリット

病床数が19床以下のいわゆる個人開業医のことで、最近はきれいでホテル並みの豪華な食事を提供する施設も増えてきました。

またマタニティヨガや産後の無料エステ券をつけるなどの施設も多いようです。お産進行中の多様なトラブルのほとんどに対応でき、吸引・鉗子分娩や帝王切開による赤ちゃんの救命処置を取ることが可能です。

さらに産院の方針次第ですが、母子同室や立ち会い出産などにも比較的柔軟に対応しています。自分がやりたいお産があり、かつ安全性もキープしたい妊婦さん向き。

デメリット

個人病院がほとんどで、スタッフは少数である傾向に。常勤医は数人で、外来や当直は近隣の大学病院などから応援を呼んでいるケースが多いです。

また、お産に対する考え方が病院独自のものになりやすいので、自分のお産に対する考え方と大きな隔たりがないか、前もって把握するようにしましょう。

さらに、実は産院でも帝王切開はやっていません! という施設もあります。その場合は近隣施設としっかりと連携が取れているか確認をしてください。

助産院

メリット

助産師が経営し、医師がかかわらないお産施設。基本的には医療介入ができないため、産科医としてあえて言わせてもらうと、他の施設と比べ医療的なメリットはありません。あくまでリスクがあっても自分の理想のお産がしたいという人向けです。

デメリット

前述したように、医療介入できないのが最大のデメリットです。施設に置くことのできる薬剤や検査器材も限られていて、たとえ医師が助産院でお産に携わったとしても、病院や産院と同じレベルの医療を提供するのは難しいと思います。

残念ながら、知識や対応が非常に偏っていて、現在のガイドラインとかなり乖離した対応をする施設もあります。

また助産院には、非常時に連携する嘱託医を契約することが義務づけられているのですが、ほとんど連携が取れていない場合もあるようです。

助産院でのお産を希望する場合は、少なくとも緊急時に搬送できる施設がどのくらいの距離にあるか、年間何件のお産を取り扱っているか、そのうち何件くらいが緊急搬送となるのかなど、安全面について十分に確認を。

また妊娠中に2〜3回は提携施設での医師による妊娠経過のチェックを行い、嘱託医としっかり連携が取れている助産院を選んでください。

はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK

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