1番にこだわり、負けると癇癪を起こします【子育て相談】

島村華子
2024.10.01 09:58 2024.09.26 11:50

泣いている子ども

1番になれないと、泣きながら癇癪を起こしてしまう……負けず嫌いの子どもの協調性を育む方法はあるのでしょうか?

モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者である島村華子先生の著書、『親子でできるモンテッソーリ教育とマインドフルネス 』より、4歳の男の子のお母さんの悩みを抜粋してご紹介します。

※本稿は島村華子著『親子でできるモンテッソーリ教育とマインドフルネス 』(創元社)より一部抜粋・編集したものです。

※本記事の参考文献については、抜粋元の書籍に記載しています。

Q.負けず嫌いで1番にこだわります

下の子は 負けず嫌いで1番にこだわります。競争心があるのは良いことだと思いますが、負けると泣き叫ぶなど癇癪を起こすので困っています。
マインドフルネスやモンテッソーリ教育で子どもの協力性を育むにはどうしたら良いでしょうか?
(小3と4歳男子の母)

A.負けた時のために、本人が落ち着ける方法を探しましょう

考え事をする子ども

確かにある程度の競争心は大切ですが、周りは対応に困ってしまうこともありますね。お子さんの年齢を考えると、競争心はごく普通のことです。4歳前後になると、子どもは競争という概念を認識し始めます。幼い子どもほど、相手への影響を考えずに強制的な手段を使ってもほかの子に勝ちたい気持ちが大きいほか、末っ子ほど競争心が強い傾向にあります。

また、3〜5歳までの子どもは、発達段階的に自己中心主義であるのが特徴的です(4) 。これは大人が考えるいわゆる「自己中な人」とは違い、この年齢の子どもはほかの人の目線に立つ考え方がまだ発達していません。このため、競走で負けたとしても、自分以外のだれかが自分より優れていることを理解したり、ほかの人の業績を認識したりするのは非常に難しいのです。

発達上よく見られることとはいえ、お子さんによっては競争心が人一倍強い場合もあるでしょう。モンテッソーリ教育では、不必要な競走はできるだけ取り除くように設計されています(※)が、生きている以上勝ち負けは避けられません。

※横割りではなく縦割りの設計であるため、同学年との競走ではなく、異学年内の協力を育む。また、カリキュラムを進めるのに1年ごとではなく3年間の余裕があるため、競走やプレッシャーがなく、個人のペースで学習を進めることができる。

トランプで遊ぶ親子

「負ける」ことに上手に付き合える方法を、いくつか紹介します。

まず、負けた時のために、本人が落ち着ける方法を一緒に探してみましょう。子どもによっては、休憩したり、一人で過ごしたり、絵を描いたり、音楽を聴いたりする必要がある子もいるでしょうし、マインドフルネスのアクティビティの一つである深呼吸が効果的な子もいるでしょう。

本人が落ち着ける場所、もの、アクティビティなどを、本人とアイデアを出し合ってあらかじめ決めておきましょう。実際に本人が負けるような場面に遭遇した場合は、あらかじめ決めておいたアイデアを思い出させてあげてください。

次に、言語発達中の子どもはもちろんのこと、大人でも自分の気持ちを正確に認識し、言葉にするのは難しいものです。負けた時の本人の悔しい気持ちや怒りの気持ちを表現する言葉を、子どもと一緒に探してみましょう。喜怒哀楽といった感情カードを使って、気持ちを認識する練習を普段からすることで、マインドフルに今の自分の気持ちに向き合うスキルを身につけます。そして、例えば「私は負けた時、悔しくて、叫びたい気持ちになるよ」というふうにお手本を見せてあげながら、子どもと一緒に感情を表現する方法をロールプレイで練習します。

負けた時のシナリオを考えて、相手の勝利を祝福するロールプレイも良いでしょう。

例えば、カードゲームで負けたという状況を想定します。まず、勝った時と負けた時に自分と相手がどんな気持ちになるかを、子どもと話し合ってみてください。その上で、勝った相手に対して、拍手やハイタッチをするなど、具体的な行動を通してどのように祝福できるか練習してみてください。

最後に、しりとりなど勝ち負けが比較的速いペースで入れ替わるようなゲームを、家族の時間に取り入れてみてください。この際に勝ち負けにフォーカスせずに、家族で一緒に楽しむことを強調しましょう。

子どもが言葉につまっていたら、ヒントを出したり、競争心の強い子どもにヘルパーになってもらったりするなど、勝ち負けだけでなく、助け合うことも楽しい時間を共有する一部であることを体験させてあげてください。しりとりは、言語能力を養うと同時に、自分の順番を待つ忍耐力も育むほか、車や電車での移動時でも簡単に行えるゲームとして向いています。

島村華子

島村華子

オックスフォード大学修士・博士課程修了(児童発達学)。モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者。上智大学卒業後、カナダのバンクーバーに渡りモンテッソーリ国際協会(AMI)の教員資格免許を取得。カナダのモンテッソーリ幼稚園での教員生活を経て、 オックスフォード大学にて児童発達学の修士、博士課程修了。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わる。 専門分野は動機理論、実行機能、社会性と情動の学習、幼児教育の質評価、モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育法。

X:@hana_shimamura

Instagram:@hanako_shimamura_phd

親子でできる モンテッソーリ教育とマインドフルネス

親子でできるモンテッソーリ教育とマインドフルネス(島村華子著/創元社)

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