ゲームで遊ぶ時間を自制できるのは25歳から 子どもがゲーム依存にならない工夫とは?

福田遼,秋山仁志

「子どもがなかなかゲームをやめない」という悩みを抱える親御さんは多いもの。しかし、自分をコントロールしゲームを中断できるようになる年齢は、なんと25~30歳なのだそう。では、まだまだ未熟な未成年が、ゲームとうまく付き合っていくにはどうしたらいいのでしょうか。

ポットキャストの人気番組『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』のMC、福田遼さん、秋山仁志さんによる解説をご紹介します。

※本記事は福田遼,秋山仁志『先生、どうする!?子どものお悩み110番』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです

Q 夜中までゲームに夢中。やめさせるべき?

13歳の息子がいるのですが、ゲームが大好きで、どれだけ注意しても、平日であろうと、夜中までゲームをしています。友だちとボイスチャットをしながらなので、余計にやめられないようです。彼の健康状態が心配で、本当に悩んでいます。言ってもどうせ聞かないからといって、このまま放っておくのも違うと思うのですが、できれば自分自身で「この生活は良くない」と気づいてほしいなという気持ちもあり、今は彼を信じて見守っていますが……。

A 利用しない時間と場所を一緒に決めよう

ゲームやスマホは「中毒性」が高い

ひとし:夜更かししてまで長時間のゲームをやめられない、というお悩みです。他にも、たとえばスマホでSNSを見ちゃうとか、動画を観続けてしまうとかも似たようなお悩みに思えるね。

はるか:そうだね。この手の相談は学校でも本当に多くありました。夜中までゲームやスマホをして、全然寝ずに学校に来る子とかもいて。学校でかなりしんどそうだったり、授業についてこれなくなったり、かなり深刻な問題になってるんだよね。

ひとし:そうなんだ。

はるか:まず、この方がおっしゃってる「彼を信じて見守る」という考え方はすごく素敵だと思います。僕もいつも子どもに自律してほしいと思っているし、基本的に管理はしたくないなって方針です。

でも、子どもに任せられることと任せられないことがあるのも事実なんだよね。

ひとし:それがゲームってこと?

はるか:そう。ゲームって、脳の報酬系(※1)を強く刺激するんです。何か起こるかも、クリアできるかも、という期待があおられて、ドーパミン(※2)が大量に分泌される。あるいは、SNSなんかもそう。見ていると、もっと新しいことを知りたい、何か大事なことを知ることができるかも、とドーパミンが急増する。ドーパミンは一気に増えると、その反動でガクンと減るらしいんです。しかも、そうやって急落すると、気分が強く落ち込んだり、憂鬱になったりする。だから、その落ち込みをまたゲームやSNSで回復させようとする。……このサイクルに陥ると、ゲーム依存やSNS依存になってしまうわけです(※3)。もっと悪化すると、ゲーム以外のやる気が全く起きなくなって、無気力状態になってしまうこともあります。

ひとし:なるほどね。つまり、ゲームとかSNSは刺激が強すぎて、依存症になりやすいってことか。

はるか:そうそう、中毒性が高いんだよね。そうした衝動を制御する脳の領域は、25〜30歳になるまでは未発達だと言われています(※4)。つまり、ゲームの使用時間や使用方法を自分の意思でコントロールできるようになるのは、少なくとも25歳くらいからってことなんだよね。

ひとし:へぇー。言われてみれば、大学生のときもゲームやめられなかったりしたなぁ。

はるか:そうそう、今でも難しいときあるよね?

ひとし:うん(笑)。疲れてるときとか、ずーっとショート動画観ちゃってる。

はるか:だから、「ゲームやスマホの使い方を子ども自身でコントロールすることはできないんだ」という前提に立って、まずは大人が補助輪をつけてあげるのが大事なんです。そして、徐々に補助輪を外して、いずれは子ども自身がコントロールできるようになればいいな、と。

※1 報酬系:欲求が満たされたときや、満たされるとわかったとき、あるいは報酬を期待して行動しているときに活性化し、快感をもたらす神経系。

※2 ドーパミン:楽しいことをしているときや目標を達成したとき、褒められたときなどに分泌される神経伝達物質。「幸せホルモン」「快楽物質」などと呼ばれることもある。分泌されると、意欲や集中力を高めたり、幸福感を覚えたり、物事を前向きに考える力をもたらしたりする。分泌が過剰になると、統合失調症や過食症、様々な依存症を引き起こす可能性がある。

※3 参考文献『ドーパミン中毒』(アンナ・レンブケ著、恩蔵絢子訳、新潮社)

※4 参考文献『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳、新潮社)

デジタルデバイスを適切に使う教育に変化

ひとし:なるほどね。じゃあどういう補助輪がいいんだろう?

はるか:そこで、今回はデジタルシティズンシップ教育(※5)の考え方を紹介したいと思います。

ひとし:デジタルシティズンシップ……?

はるか:シティズンシップは「市民権」の意味。これまでは、ゲームとかデジタル分野に関する教育って、「情報モラル教育(※6)」と呼ばれるものが主だったんです。「モラル」だから、心へのアプローチですね。たとえば「ゲームをしすぎると成績が下がるよ」とか「SNSに写真を投稿すると悪用されて大変なことになっちゃうよ」とか、すごく怖いことだと植え付けて、なるべく遠ざけようとするようなものでした。

ひとし:なんか薬物防止の授業みたい。

はるか:あ、そうそう! あれに近い指導が主だったんです。

でも、今は1人1台タブレットを持っている時代です。ほぼ全員がスマホを持っているし、子どもたちがデジタルデバイスを使うのは、もう変わることのない大前提。むしろ、積極的に活用しなきゃいけません。だから、子どもが自立して適切な使い方ができるように教育していきましょう、という方向性に変化していってるんだよね。これが、デジタルシティズンシップ教育の考え方です。

※5 デジタルシティズンシップ教育:デジタルシティズンシップとは、デジタル技術の利用を通じて、社会に積極的に関与し、参加する能力のこと。デジタルシティズンシップ教育は、デジタルの利活用を前提とし、それを叶えるための能力や行動規範を学ぶための教育。

※6 情報モラル教育:情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度を育むための教育。日本の学校教育では、2008年告示の小、中学校の学習指導要領の改訂によって本格的に開始された。

利用しない時間と場所を決めてみよう

ひとし:じゃあ具体的にこのお悩みの場合とかだと、どんなことをしていけばいいの?

はるか:このお子さんみたいな状況にあるとき、僕がこんな話をすると、最初はみなさん「利用時間を決めよう」とされます。

ひとし:俺もまずはそこかな、と思った!

はるか:そうだよね。だけど、これかなり難しい。お悩みにも書いてあるけど、友だちと通信してたりする場合もあるから「キリが良いところまで」とかってなりやすいんだよね。

ひとし:あぁ、「あと30分だけ!」とか「このステージクリアするまで!」とかありそうだね。

はるか:そうそうそう。しかも、管理する大人側も、ずっと時間を計っとかなきゃいけないとなると大変です。だから、利用時間を決めるよりも、「利用しない時間と場所を決める」のがいいと思います。

ひとし:「22時以降はゲームやめようね」とかそういうこと?

はるか:そう! そして、ここで大事にしてほしいことがあって。前にアドラー心理学の「論理的結末」の話をしたと思うんだけど、覚えてる?

ひとし:えーっと、注意する理由を論理的に説明したり、子どもも納得できる正しい約束の仕方が大事って話だった、よね?

はるか:素晴らしい! それをここでも活用してほしいんです。まずは「なぜゲームをしすぎると良くないのか」ということを論理的に伝えてください。たとえば「寝る前にブルーライトを浴びると睡眠の質が落ちて、身長が伸びにくくなったり、勉強が身に付きにくくなったりするんだって」とか。そして、「だから一緒に利用しない時間を決めよう」と、子どもと一緒にルールを決めましょう。さらにルールを守れたかどうか、毎回ふり返っていけたらすごくいいです。

ひとし:なるほど。その「一緒に決める」っていうのがポイントだったよね。

はるか:そうそう、大事! あとは場所を決めることも大事です。子どもが自分の部屋にゲームを持っていけるようにすると、いつまでもやっちゃうから。なので、たとえば「ゲームはリビングに置いておいて、そこで使う」ってあらかじめ決めておく。そうすれば、親御さんも一緒に「利用しない時間」を守れているか確認できます。

ひとし:なるほど。ぜひこの方にも実践してみてほしいね。

はるか:ただ、もちろんすんなりうまくいくわけはなくて。「なんで守れんと?」「自分で言ったやん!」ってイライラすることもあるだろうし、実際叱ってしまうこともあると思います。

だけど、あくまでも最終的な目標は「自分でゲームやスマホの使い方をコントロールする力をつけること」。しかも、これはお子さんも親御さんも共通の目標です。なので、そこを見失わずに、なかなかうまくいかなくても、二人三脚で対話を重ねながら良い使い方を探っていってほしいなと思います。

はるか先生のワンポイント

ゲームやスマホの使い方を、子ども自身でコントロールすることは不可能!
論理的結末を用いて、「なぜダメなのか」と「ルールの設定」を話し合おう。

先生、どうする!? 子どものお悩み110 番

先生、どうする!?子どものお悩み110番』(福田遼,秋山仁志/PHP研究所)
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子どもにガミガミ怒ってばっかりの自分に、ドンヨリ。 うちの子の将来、このままでだいじょうぶかな、と不安になる……。そんなモヤモヤとした気持ちを抱えるすべての親御さんに届けたいーー。
元小学校教師のはるか氏と、友人でラジオ番組プロデューサーのひとし氏の二人が、子育てに悩める親御さんの気持ちに寄り添い、「明日やってみよう」と思える、22の「神回答」をお届けします。