令和ロマン・髙比良くるまさんが明かす禁断の勉強法 「中高の勉強時間ゼロで慶應合格」の秘密は?
2023年にM-1グランプリを制した令和ロマンの髙比良くるまさん。2024年11月に上梓した著書『漫才過剰考察』(辰巳出版刊)では、「過剰」のタイトルにふさわしくお笑いに対する徹底的な分析を展開。お笑いというフィールドでくるまさんがどのような角度で分析し、どのような戦略を立てて勝負に挑んでいるのかを伝えています。
そんなくるまさんは、実は大学受験でも不利な状況を戦略で克服して受験を乗り越えてきたといいます。中学・高校時代は全く勉強に関心を持てず、ラグビー部での活動に打ち込んで浪人、勉強の貯金ゼロの状態だったものの、独特な戦略で慶應義塾大学に合格したそうです。
後にM-1グランプリでも、どうすれば勝てるのかを分析し実践することで、実際に結果を残したくるまさん。大学受験とどう向き合ったのでしょうか? 当時のことを振り返っていただきました。(取材/nobico編集部・太田智一)
「勉強はできない」と割り切って6年間無勉だった中高時代
――本日はnobico(のびこ)のためにお時間をいただき誠にありがとうございます。nobicoは育児・教育が主なテーマで芸人さんの取材はあまり多くないのですが、先日はシドニー石井さん(天秤)に中学受験や大学受験のお話をお聞きしました。大学時代からのお知り合いだそうですね?
髙比良くるま(以下くるま):(語気を強めて)よく知っています! 彼は本当に親の期待を全て裏切った!(怒) お姉さんは東大に行った一方で、同じ教育を受けたはずの彼が付属中高から大学進学に失敗するという…。みんなが彼を反面教師にすべきですよね。押し付けたってやらない子はやらないんだから、好きなことやらせた方がいいかもしれないって。
(参考記事:なぜ中学受験の勝者が大学進学で失敗? エスカレーターで転んだ人の「驚きの末路」シドニー石井)
――ご自身の受験や勉強について振り返っていただけますか?
くるま:僕の場合は地元の進学校系の幼稚園に通っていたこともあって、小学校入学時から「勉強のできる子」という評価でスタートできました。まわりに練馬の大きな病院の息子さんや有名な政治家の息子さんもいて…。
ただ中学(私立本郷中学高校)入学時の学校の偏差値はそんな高くなかったんですよ。50台くらいで。それが中2の初めの頃に学校の方針が変わって、進学校化を目指すことになって。名門校から校長を連れてきて、先生も代わって。朝から勉強するような環境になりました。
でも僕の成績は中1の終わりくらいからずっと200数十人中のビリでした。2011年なんかは進級すらもギリギリでした。
結局「勉強はできないならできない」と割り切って、宿題もやらない、教科書も持たない状態で生きようと決めました。中途半端にはしたくない、ラグビーと「授業中にふざけること」だけは全力でやると決めました。将来のことは全く考えずに…。中学高校時代は勉強時間ゼロでした。
みんなが浪人するから自分も浪人した髙比良くるまさん
――その結果、浪人することになったんですね?
くるま:もともと浪人するという意識すらなくて、なんとなく卒業したら実家のお好み焼き屋を手伝ったりするのかななんて思っていたんです。
ところがラグビー部の仲間の多くが浪人することになって、仲間と一緒にいたいという気持ちが生まれて自分も浪人して受験しようと決めました。
結果的にラグビー部の仲間たちはほぼみんな早慶どちらかに入れたんです。ラグビー部って大会が終わるのが12月ぐらいで遅いんですよ。勉強が他の受験生に追いつかないんです。現役の時もみんな惜しかったんでしょうね。もうちょっと早く部活が終わって勉強時間があれば。リアルにギリギリのところでの不合格だったのではないかと。
そういう優秀な仲間が自分のまわりにたまたま集まってただけで。受験についての情報をもらったりしながら勉強して。何とか僕だけがみんなに追いついて、自分も慶應大学に合格できたのだと思います。
短期間合格のために科目を絞って慶應大学にたどりついた
――受験勉強についての戦略はありましたか?
くるま:受験当日まで実質半年ぐらいしかないのに、中高勉強無勉強なので貯金ゼロからスタートでした。となるとまず受験科目の多い国公立はありえない。私立文系で確定。
さらに科目数をなるべく減らすとなると慶應(慶應義塾大学)だったんです。特に文学部は社会系科目と小論文に加えて、英語は辞書の持ち込み可能で時間120分という他大ではあまり見かけいないテスト形式。
そこで東大に現役で合格した同級生から辞書をもらって使いました。もうクタクタな辞書なんですけど、東大現役合格者が記した重要情報が詰まっています。持ち込む辞書は付箋とか何枚あってもいいんですよ。
そして、その辞書を使ってひたすら過去問を日本語に訳して、日本語で解いて、英訳して書くっていうスピードを高める練習をしました。これだけで英語試験を突破したんです。
そんな受験勉強をしてしまったので、今でも英語は何もわからないんですよ。マジでわかんないっす。ただ当時の慶應大学文学部には俺みたいな虫が入れる穴が空いてたんです。同じような戦略で合格した人は他にもいたと思いますよ。実際にこのルールを利用して入学した友達も同級生にいるんです。
それ以外の対策は、小論文も全くなしで、日本史だけ。それも全部カバーできないから、古代史が出たら終わりと思って近現代だけ。めちゃくちゃ効率重視でした。
――受験本番はどうでしたか?
くるま:実は当日の天候が怪しかったので、前日から日吉の漫画喫茶に泊まって待機してました。そして受験当日は実際に大雪が降ったんです。朝には電車も止まっていました。
ただでさえ最後の追い込みで疲れ切っている受験生たちが、電車で遠回りして、不安定な足元を長靴で歩いてきてもうクタクタなんですよ。さらに追い打ちをかけるように、受験会場は暖房がガンガン効いていて、みんながへばってる…。そんな状況のなか自分は有利に試験を進められました。
受験は他人との「勝ち負けが明確になる場」だと知ってほしい
――そして見事に合格を勝ち取られました。事前の受験勉強も当日の動き方も、見事に作戦が成功したという感じですね?
くるま:自分にはもうこの方法しかなかったんです。元はと言えば、中高時代に勉強しなかった自分が悪いんですよ。真面目な努力をしてないから、その報いを受けることになって。
ただ実際にその報いは受けたくないがゆえに、すごいスピードで逃れて、たまたまうまくいったことが2、3回あるというだけなんです。本当に褒められたものじゃありません。
なので、もし自分の経験を他人に伝えるとすれば、いいところだけ真似してほしいと思います。ふだんからちゃんと授業受けてコツコツと知識を積み上げた上で、「勝負の間」を持ってほしい。
受験って1個の枠を取り合ってるから、勝ち負けが明確になります。だから「勝負の間」が大切。子どもたちって優しすぎちゃうんですが、それでも勝負は勝負だから…。
――今の知識と経験を持ったままもう一度小学校からやり直すとしたら、勉強への向き合い方は変わりますか?
くるま:変わりますね。やっぱり絶対そうですよ。もう一度受験すると考えると面倒くさいけど(笑)国公立とかを目指してみたかったかもしれませんね。海外の大学はわからないですけど、東大とか含めてどれぐらいの場所まで行けたのか。やっぱりちゃんと勉強してみたかったですからね。(了)
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