勉強が苦手な子のドリルに共通する「謎の空欄」の意味とは? 算数塾の塾長が見つけた子どもの本音
パズルや迷路で遊んでいるうちに、自然と算数や国語の力がつく『天才!!ヒマつぶしドリル』シリーズ(Gakken)が注目を集めています。シリーズ累計35万部突破の人気ドリルを生み出した「りんご塾」の田邉亨先生に、ゲームを取り入れた問題の誕生秘話や、学ぶことの本当の楽しさについてお話しいただきました。
「勉強が苦手な子」はそもそも問題に興味がない?
──パズルや迷路を取り入れた問題は、どのように思いついたのでしょうか。
2000年9月に塾を開業した当初、私のところには勉強が苦手な子どもたちが集まってきました。彼らのドリルを見てみると、興味深い特徴がありました。表紙の裏側のおまけのパズルや、最初の簡単な計算問題は取り組まれていましたが、それ以降のページはほとんど空欄のままだったんです。
この状況から、「問題の形式が彼らの興味を引いていないのでは?」と気づきました。そこで「ゲームのような楽しい形式にすれば、もっと問題に取り組むのではないか」と考えました。
この発想が、『ヒマつぶしドリル』のような問題を生み出すきっかけとなりました。
──勉強が苦手な子たちがきっかけだったのですね。
そうなんです。彼らは勉強に対して劣等感を抱いていますが、できる問題は解いている。やる気はあるんです。
信頼関係が深まってくると、やがて子どもたちは「先生、なぜ勉強しなければいけないの?」といった質問をするようになりました。
最初は「将来役立つから」といった決まり文句で答えていましたが、実はこの質問は文字通りの意味ではなかったのです。むしろ、私を信頼し、心を開いて、「自分は勉強が苦手なんだ」と悩みを伝えているサインだと気づきました。
悩みというのは、気持ちが後ろ向きのときに生まれます。そこで、塾としてできることは、そもそもこの質問が出ないよう、楽しい問題を用意し、子どもたちが熱中して学べる環境を作ることだと考えました。
──パズルなどを取り入れた問題は、子どもだけでなく、大人も楽しめますね。
こういった問題を思いついた時は、「絶対書籍化できる!」と思ったんですけど、なかなか本にしてもらえなくて。15年ぐらい前に、問題を100枚くらい持って出版社に持ち込んだ時も、「なんですか、これ?」と首を傾げられてしまいました。(笑)
Gakkenさんに拾っていただけて本当に良かったです。
勉強に対して、親は深刻になりすぎない方がいい
──勉強と楽しさを両立させるにはどうしたらいいでしょうか?
子ども自身に主体性があれば、勉強は楽しくなります。
人間にはそもそも知的な好奇心があります。「生きるために知識や情報を得たい」という根源的な欲求を呼び戻さないといけないんです。
子どもにはぜひ、学校の勉強は、クイズやなぞなぞみたいなものだと教えてあげてください。クイズを出すと、子どもは喜んでいろいろ考えたり、思いついた答えを言ったりしますよね。そこで間違っても、別に恥ずかしくはない。学校の勉強もそれと同じだよと伝えてあげてほしいです。
──子どもが勉強に対してマイナスな感情を持ってしまったときに、親にできることはありますか?
学校で教わることはすべて教科書に書いてありますし、さほど奥深さはありません。数学の先生だって、授業で色々と生徒に教えますが、その中にその先生が発見したことは1つもないですよね。(笑)
そのような勉強で優劣をつけられた結果、劣等感を持つのはもったいないことです。
以前私が教えていた中学生の生徒が、あるテストでかなり悪い点を取りました。その点数を親御さんにお伝えした時の、お母さんの反応が印象的でした。怒るどころか、「次行こう!」と元気よくガッツポーズをしてくれたんです。
その後、その生徒は努力を重ねて、最終的にはレベルの高い高校に見事合格することができました。
このような例もあるので、親は深刻になりすぎず、軽やかにふるまった方が良いですよ。
(取材・文:nobico編集部 中野セコリ)
『5教科の力がつく 天才!!ヒマつぶしドリル ちょっとやさしめ』(田邉亨著,伊豆見香苗イラスト/Gakken)
『5教科の力がつく 天才!!ヒマつぶしドリル ふつう』(田邉亨著,伊豆見香苗イラスト/Gakken)
楽しく遊んでいたら、いつの間にか算・国・理・社・英の力がついてしまうドリル。その確かな指導力で、公立の小学生に算数オリンピックの金メダルを受賞させるりんご塾。そこで子どもたちが学んでいるプリントを市販化。楽しくヒマつぶしして頭良くなろう!