「大谷翔平選手の報道」日本のテレビとアメリカでは温度差がある? 英語学習教材に「SHO-TIME」を採用した理由

藤井真代
2025.02.20 15:03 2025.02.19 12:00

ドジャースタジアム

長年高校生の指導に携わる島根県英語エキスパート教員の緒方孝さん。2024年11月に上梓した著書『大谷翔平のSHO-TIME ENGLISH』(三笠書房)では大谷翔平選手の臨場感あふれるプレーの感動を共有しながら英語を楽しく学ぶ方法を伝授しています。英語学習へのモチベーションが高まり、英語が着実に身につく方法とは?楽しく学習を進めるコツや自身の子どものころの学習法など、お伺いしました。(取材・文/藤井真代)

授業は面白くしようとしたら「スベる」もの

――緒方先生の英語へのアプローチが非常に興味深く、ぜひ育児・教育を扱うnobicoでインタビューさせていただきたい、と思いました。緒方先生の授業では、大谷翔平選手の試合映像を見ながら英語の実況について触れる以外にもYOASOBIの日本語の原曲とセルフカバーの英語版を比べるなど、さまざまな工夫がつまっていますね。どうやってアイデアが浮かぶのですか? 英語学習としての題材を選ぶ上で気を付けている点はありますか?

緒方先生(以下緒方):授業は「面白くしよう」と意識したらスベるものです。ポイントは「自分が好きなもの」。英語を通して好きなものに何度も触れていれば、自ずと学習者の琴線に触れるであろうプランニングが天啓として降りてくるものです。

題材選定については、年配の教員にありがちなのですが、いつまでも「ビートルズ」や「ローマの休日」にしがみついていたらダメです。若者の嗜好第一優先です。

英検上位級やTOEIC高得点を獲得するポイントとは?

ヘッドホンをつけてパソコンをさわる男の子

――洋楽学習指導や洋画を活用した学習指導も気になります。具体的にどのような授業なのでしょうか?

緒方:たとえば、YouTubeなどで字幕を出しながら、スロー再生して耳コピで歌ってみる、セリフを言ってみる、慣れたら通常速度でやってみる、などです。

――そのような授業を受けた生徒さんの中で劇的な英語の上達が見られた人はいますか?

緒方:自発的に洋画やTed Talkの聴き取りやシャドーイングをするなどの習慣がつき、英検の上位級やTOEIC高得点を取るまでに至った生徒はたくさんいますよ。

――大谷翔平選手の試合中継が「英語学習として素晴らしい教材になる!」とひらめいた瞬間、その理由など、詳しく教えていただけますか?

生の英語実況で大谷翔平を味わうカタルシス

緒方:僕自身、熱烈な大谷信者であるが故です。テレビのニュースだと毎日大活躍しているイメージなのですが、そんなことはないです。実際に毎打席、一投球ごとに大谷選手を観ていると、肝心なところでのぶざまな三振や痛恨の被弾を喰らっていることのほうが圧倒的に多いんですよ(笑)。

大谷選手が活躍しない日は僕を含む信者は激しく落ち込みます。でも、その分ホームランを打ったときや勝ち投手になったときのカタルシスたるや…、脳汁がドバドバ出ます。

日本語でではなく、生の英語中継でそれを観ている僕が日本人で1番そのカタルシスを味わえていると思っています。「生の英語実況で大谷を味わうというカタルシスをできるだけ多くの人に伝えたい」と思い、英語教材にしようと考えました。

英語学習のモチベーションを上げてくれたヤンキーお姉さん

――緒方先生ご自身は子どもや学生の時、英語は得意でしたか?

緒方:「もとは苦手でしたが頑張って克服しました」と言えば美談なのかもしれませんが、中学生の頃から結構好きで得意でした。模試の英作文問題も普通に解いたら面白くないので、わざと古英語を使って書いたりしていました。ただ、大人になって広い世界に出ると、自分なんか足元にも及ばない英語力の人がたくさんいることが分かって愕然とすることばかりです。

――好きになったきっかけや、学生の頃にご自身で工夫されていた英語学習法などあれば教えてください

緒方:僕はもともと数学に自信があって理系を選択したのですが、途中で数学ではトップになれそうにないことが薄々分かってきました。でも、英語は定期テストも模試も良い点が取れていたので、「じゃあ英語で行こう」と。

高1後半からは、毎朝晩にラジオで、「上級基礎英語」、「英語会話」、「やさしいビジネス英語」(当時の表記)を、当時200円ちょっとだったテキストとにらめっこしながら聴いて暗唱していました。

当時はネット教材もなく、また、離島(隠岐島)に住んでいたので、参考書や問題集もほとんど手に入らなかったぶん、教科書の全文暗記は当然として、『英語の構文150』(美誠社)なども、暗唱例文だけでなく、解釈問題のパッセージや、欄外の注釈の英文に至るまで隅々まで暗唱しました。今は教材に溢れているぶん、一つを丁寧にやりこむことが軽視されている世の中なのを残念に思います。

NHKのラジオテキストは、島の小さな本屋のお姉さんが僕1人のために特別に、毎週本土から取り寄せてくれていました。たぶん3~4歳年上、無愛想で見るからにヤンキーなお姉さんで(笑)、友達は怖がっていました。

僕が毎週放課後にテキストを取りにその本屋に立ち寄ると「アタシは英語がさっぱりだけど、緒方くん偉いね。勉強頑張って偉くなりなよ」といつも応援してくれました。そんな温かいお姉さんの言葉も支えになりました。

緒方孝

島根県隠岐の島出身。鳥取県在住。島根県立安来高等学校 英語科教諭。
長年高校生の指導に携わる島根県英語エキスパート教員。受験指導、資格検定指導、洋楽歌唱指導、洋画を活用した学習指導など、指導の引き出しの多さが強み。担当した生徒の多数が実用英語技能検定の上位級合格や英語弁論大会、ディベート大会などへの入賞を果たしている。自身も実用英検1級(一発合格)、TOEIC満点990点を取得。検定教科書等の執筆実績が豊富で、面白く読み応えある文章に定評がある。日本の高等学校英語教育のリーダー的存在。

大谷翔平のSHO‐TIME ENGLISH

大谷翔平のSHO-TIME ENGLISH(緒方孝 著/三笠書房)

感動メジャーリーグ実況には、英語が勝手にペラペラになる秘密が満載。スター選手たちの動きや状況、気持ちを、誰にでもわかりやすく瞬時に伝える――それがメジャーリーグ実況中継の使命。いきいきとした感情、ありありと浮かぶ多彩なシーン、しかも日常会話に使える表現たっぷり! シンプルなのに臨場感あふれる実況に気分もモチベーションも高まって、気づいたら英語で応援していた! そんな絶好の素材なのです。さらに本書は中学英語を完全網羅しました。