生理中の女性にどう寄り添う? 男子高校生の“神対応”に絶賛の声
CLAIR.(クレア)は、「生理のタブーをなくし、性別を超えて理解し、尊重し合い、お互いを支え合える社会」を目指す、品川女子学院の生徒有志による団体です。
3月に東海大学付属高輪台高等学校・中等部の図書室で行われたCLAIR.の講座では、生理中の過ごし方や、友達や家族が生理になった時の対応を想定したロールプレイが行われました。
その中で、高輪台高等学校の男子生徒が実演した大絶賛の対応とは? 当日の様子をレポートします。(本記事は後編です。前編はこちら)
生理中の過ごし方 気を付けたほうが良いこと
生理中にはさまざまな体調不良が起こりますが、特に生理痛は悩ましいもの。
講座では、CLAIR.のみなさんが、生理痛を和らげる過ごし方について解説しました。
CLAIR.のみはるさんは、「生理痛は体の冷えが悪化させるため、身体を温めることと、不足している栄養素を補うことが大切です」と説明。不足しがちな栄養素として、鉄分、イソフラボン、マグネシウム、ビタミンBなどを挙げました。
解説によると、生理中におすすめの食べ物は以下の通りです。
・ココア: 血管を広げるポリフェノールを含み、鉄分も補える
・ナッツ類:特にアーモンドには、ビタミン・ミネラルが豊富
・小魚: カルシウムが豊富で、食べ応えがあり食べすぎ防止にも役立つ
反対に、避けたほうがよい食べ物として、以下が挙げられました。
・アイスや夏野菜など:身体を冷やすものは避けたほうが良い
・コーヒーや紅茶など: カフェインには血管を収縮させる作用あり
また、「科学的根拠はありませんが、番外編として、タカアンドトシのトシさんの写真を見ると、生理痛がやわらぐという都市伝説があります」との紹介も。思いがけない情報に笑いが起こりました。
生理中の妹にお使いを頼まれたら?
講座をふまえて、身近な人が生理になったシチュエーションを想定してのロールプレイが行われました。机の上には、小道具として、お茶、ココア、缶コーヒー、コーラ、水、ブランケットなどが並びます。
最初のお題は、「妹に『生理痛を和らげるものを買ってきて欲しい!』とお使いをたのまれたら?」。
妹役はCLAIR.のみはるさん。挑戦者に名乗りを上げたのは、高校1年のまつもとさんです。ロールプレイでは、以下のようなやり取りが繰り広げられました。
生理痛で体調が悪そうなみはるさん。「え、どうしたん」と兄まつもとさんが声をかけます。
「生理痛でお腹が痛くて…痛みが和らぐものを買ってきてくれないかな?」との妹のお願いに、兄は「わかった」と快諾し、早速ココアを買って戻ります。
しかし、残念ながらココアは冷たかった様子。「もしよかったら、身体が温められるものも欲しい」と妹がリクエストすると、兄は「じゃあ、もう一回買ってくる」とすぐに買い直しへ。そして、「湯たんぽ用に、一番温かい飲み物買ってきた」と缶コーヒーを手に戻ってきました。
みはるさんは感謝しつつも、どうやら求めていたものとは違った様子。そこでまつもとさんは三度目の買い物へ向かい、今度はほうじ茶を購入。妹は「だいぶ身体が温まるかも!」と、フットワークの軽い兄にお礼を伝えました。
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まつもとさんの自然な名演技に、教室からは思わず笑いが。ロールプレイを見た生徒たちからは、「とにかく優しい」「こんな兄が欲しい」との声が上がりました。進行を務めるCLAIR.のりなさんからは、「講座で紹介したココアやあたたかいものを持ってきてくれて嬉しい」とのコメントが。また、おすすめのアイテムとして、「からだが温まって、かつカフェインを気にする必要がないブランケット」を挙げていました。
クラスメイトの体調不良 サポートできることは?
次のお題は、「クラスメイトが教室で体調が悪そうにしていた!」。
クラスメイトを演じるのはCLAIR.のかえでさんです。
先ほどの反省を活かしたいと、まつもとさんが再び挑戦します。
友人と雑談しながら教室に入るまつもとさん。具合の悪そうなクラスメイトのかえでさんに気付き、「どうした?」と声をかけます。「今朝生理が来ちゃって、お腹が痛くて…教室も寒いな」と困った様子のかえでさんに、まつもとさんは「防寒着のふわふわのジャケットがあるから、よかったら使って。俺意外と暑がりだから」と気遣いを見せます。かえでさんは「借りていいの?ありがとう!」と嬉しそうな様子。
しかし、まだ生理痛がおさまらないかえでさん。まつもとさんは戸惑いますが、「俺、実はふわふわのジャケットの上にダウンも着てきたから、これも良かったら」と、さらに防寒着を差し出します。
一方かえでさんは、痛み止めの薬を持ってきていないことに困っているようでした。
まつもとさんは保健室の先生に、「クラスメイトに生理がきちゃって・・・薬貰えますか?」と助けを求めます。
まつもとさんは無事に痛み止めを持ち帰り、かえでさんに渡しました。「これで今日一日乗り切れそう」と、かえでさんはまつもとさんにお礼を伝えました。
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今回も名演技をみせたまつもとさん。かえでさんは「もう言う事ありません! ベストな対応をありがとうございます」と絶賛しました。
その上で、かえでさんは、「薬を忘れた、という私のセリフがよくなかったのですが…」と前置きし、本来個人間での薬の受け渡しは控えるべきである旨を補足していました。
また、「自分の着ているセーターを貸してあげたら良かったかも」と反省するまつもとさんに対し、かえでさんは「まつもとさん自身も寒いはずだから、そこまで身体を張っていただかなくても大丈夫です! 心遣いだけでも十分嬉しいです」とコメント。
おたがいの立場に目を向け合う姿勢が見られました。
友達の服に汚れが!こんな時はどうする?
最後は、「友達がお出かけ中に、経血で洋服を汚してしまった!」という難しいお題。
友達役はCLAIR.のももかさん。ロールプレイに挑戦するのは、高校2年生のりゅうさんです。
図書館の本棚を眺め、楽しんでいるももかさん。そんなももかさんをたまたま見かけたりゅうさんは、ももかさんのスカートの汚れに気が付いた様子です。軽やかな歩みでももかさんに近づき、「やっほ~」と声をかけると、自分の上着をさっと広げて、ももかさんの服の汚れを隠しました。
突然の出来事にびっくりするももかさんですが、りゅうさんが小学校時代のクラスメイトであることに気が付いた様子。「久しぶり」「小学校以来?」とお互いあいさつを交わします。
そこでりゅうさんは、「あの、寒そうだから、これ」と言いつつ、自分の上着をももかさんの腰に巻き付けました。
「これ、なに?」と戸惑いを見せるももかさんに、「似合ってるよ」「じゃあまたね」と言い残し、りゅうさんはその場を颯爽と去っていきました。
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先の読めないりゅうさんの行動に、教室は終始大きな笑いに包まれていました。りゅうさんは自身の対応について、「はっきり『汚れているよ』と声をかけたら恥ずかしいと思うので、あえて言わずに隠しました」と解説。ももかさんは「難しいお題の中で、相手の気持ちをよく考えられていたと思う」と、りゅうさんの気遣いに感心している様子でした。
一方CLAIR.のみはるさんは、「私は鈍感なので、汚れに気付けないかも。自分でも対処したいので、できればはっきり言ってほしい」と素直な感想を述べました。
気遣いと優しさに大きな拍手
それぞれ様々な反省点が挙がりましたが、ロールプレイに挑戦した2人には、大きな拍手が送られました。
生理の話題はタブー視されがちですが、講座に積極的に参加し、理解を深めようとする男子生徒たちの姿から、新しい時代の兆しを感じました。
講座の最後、CLAIR.の代表を務めるももかさんが、「私たちの活動を応援してくれる方を募集しています」と呼びかけました。この活動を他校にも広げることが、今のCLAIR.の大きな目標だそうです。
より思いやりあふれる社会を目指して、CLAIR.の活動が今後さらに広がっていくことを期待しています。
(取材・文:nobico編集部 中野セコリ)
『女子中高生が教える男子にも知ってほしい生理の話』(CLAIR.協力,高橋幸子 監修,くりたゆき 漫画/Gakken)
生理についての講義を男子校や企業で開催し、各メディアで話題の女子中高生のCLAIR.(クレア)。彼女たちは品川女子学院の有志団体で、生理って月に何日なの?血はどれくらい出るの?PMSがつらいときはどうする?などの生理にかんする悩みや疑問について、誰にでもわかりやすく伝える活動をしている。生理についてよく知らない男性にはもちろん、女性どうしだからこそ気づけない個々のちがいについても議題にあげ、その講義は毎回好評を博している。
本書は100名以上の男性、女性にアンケートを実施しながら、おたがいの感じ方や考え方のちがいがわかるように構成されている。
生理について考えたこともなかった中学生男子を主人公としたマンガでストーリーが展開され、男子でも共感しながら読めるのも本書の魅力の一つ。いちばん身近だけどなかなか触れることができない男性と女性のちがいである生理について学び、多様性の理解を推進する本。