子どもの身長アップの鍵はたんぱく質! 医師が推奨する「成長期に欠かせない食品」とは?
子どもの身長を伸ばしたいと思っている親御さんは多いでしょう。しかし、「身長は遺伝で決まる」と思ってあきらめてしまっている親御さんもまた、多いかもしれません。東京神田整形外科クリニック院長の田邊雄先生は、「身長は栄養で伸ばせる」可能性があるといいます。
骨の成長に重要なたんぱく質。成長期におけるたんぱく質の働きと、食事で効率よく摂るためのポイントを、身長を伸ばす専門医「身長先生」こと田邊雄先生が解説します。
※本稿は、『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』(田邊雄/Gakken)から一部抜粋・編集したものです。
イラスト:かざまりさ
骨の成長にはたんぱく質が最重要!
老若男女、誰にとってもたんぱく質は重要です。その理由は、人間の体を構成している約60兆個(諸説あります)の細胞は、すべてたんぱく質を材料にしてつくられているから。たんぱく質なくして私たちは存在しないのです。
大人の場合、たんぱく質は今の体をメンテナンスし、維持するための材料ですが、成長期の子どもにとってのたんぱく質は、身長を伸ばして成長するための材料です。まだ体は小さくても、たくさんのたんぱく質を必要としています。
成長期に骨がつくられるのは骨の端のほうにある骨端線という場所です。骨端線では、食事で取り入れた栄養を使って、たんぱく質が合成され、そこにカルシウムなどのミネラルが付着して新たな骨が形成され、骨は成長していきます。
つまり、たんぱく質は骨の基礎。さらに、成長期の体では、骨に限らず筋肉や脳、神経、内臓、血液、身長を伸ばすのに欠かせない成長ホルモンも、たんぱく質を材料にして盛んにつくられています。だから、たんぱく質は身長を伸ばすために最重要な栄養素といえるのです。
成長期の子どものたんぱく質の目標量
では、成長期の子どもは、どれくらいのたんぱく質を摂ればいいのでしょう。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、1日のたんぱく質の目標量は上記の表のように定められています。
子どもの一般的な活動量は「身体活動レベルⅡ」ですから、中学生(12〜14歳)の目標量を見てみると、男子は85〜130g、女子は78〜120g。
肉100gのたんぱく質量が約20gですから、1日3食ともに肉を100g食べたとしても、目標量には届きません。
ただ、これはあくまで目標量の話です。「日本人の食事摂取基準」では、目標量は「現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量」とされていますから、今すぐ達成しなくてはいけない数値ではありません。
しかし、子どもの健やかな成長を後押しするためには、この目標量を知り、目標に近い量を摂れるように取り組むことが大切です。
たんぱく質を構成するアミノ酸
たんぱく質について、もうひとつ知っておいていただきたい大事なことがあります。
それは、たんぱく質を構成するアミノ酸についてです。食事で取り入れたたんぱく質は、アミノ酸に分解され、体内で再びたんぱく質に合成され、骨、筋肉、内臓、皮膚、髪などの成分や、ホルモンや消化酵素といった分泌物の材料になります。
体を構成するたんぱく質は、約10万種類といわれていますが、それらはわずか20種類のアミノ酸が組み合わせを変えながら結合し、つくられているのです。
20種類のアミノ酸は次のように分けられます。
・非必須アミノ酸(11種類) :体内で合成することができる
・必須アミノ酸(9種類) :体内で合成することができない
体内で合成することができない9種類の必須アミノ酸は、食事で取り入れる必要があります。さらに、必須アミノ酸はどれか1つでも不足してはいけません。
栄養学では、この仕組みを上記の「桶(おけ)の理論」で説明します。桶は人間の体、中に入っているのは体を構成するたんぱく質、桶の9枚の板が必須アミノ酸です。
9種類の必須アミノ酸が十分そろっている場合、桶の中にはたんぱく質が十分入っています。しかし、どれか1つでも不足すると、桶から漏れ出し、桶の中に入るたんぱく質の量は減ります。つまり、体を構成するたんぱく質が足りなくなるのです。
成長期は動物性食品をしっかり摂ることが大切
食品に必須アミノ酸が多く含まれているかどうかは、「アミノ酸スコア」という指標で表されます(上記表参照)。必須アミノ酸がすべて必要量を満たしている場合はアミノ酸スコアは100。最も少ない必須アミノ酸が必要量の60%だった場合はアミノ酸スコア60。数値が低くなるほど、必須アミノ酸が基準値を満たしていないということです。
動物性たんぱく質はアミノ酸スコア100なので、肉や魚、卵や乳製品を十分食べていれば必須アミノ酸が不足することはありません。しかし、うどんやごはんなど主食ばかりを食べていると、必須アミノ酸が不足し、体内のたんぱく質合成量が減少してしまいます。
また、植物性食品より動物性食品のほうが必須アミノ酸の吸収率が高いことがわかっています。特に多くのたんぱく質を必要とする成長期は、動物性食品をしっかり摂ることが大切なのです。
『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』(田邊雄/Gakken)
子どもの身長は「遺伝」よりも「何を食べるか」が大事!
身長治療のスペシャリストで【身長先生】と呼ばれる医師・田邊雄先生が、豊富な臨床経験とエビデンスから導き出した、食事で体・心・脳が健やかに育つ【成長食】30のルールと、超簡単で毎日実践しやすいレシピを教えます。