つるの剛士が「育児は適当でいい」と語る理由は? 5児のパパに学ぶ子どもとの距離感
幼稚園教諭二種免許と保育士資格を取得し、5人のお子さんを育てる、タレント・つるの剛士さん。「育児は適当でいい」と語るつるのさんに聞いた、子どもをちょうどいい距離で見守るコツとは?
著書『つるのの恩返し』(講談社)の刊行を記念したインタビューで明かしてくれました。
本を書くことが「人生の棚卸し」に
――著書『つるのの恩返し』拝読しました。ご家族への愛がつまった、まるでラブレターのような一冊ですね。
ありがとうございます。正直、ちょっとこっぱずかしいというか……(笑)。本作は、自分から「出したい!」と思って書いた本ではなく、出版社さんからお声がけをいただいて書くことになったものなんです。
ただ、ちょうど今年で50歳という節目だったこともあって、これまでの芸能生活30年を振り返るいい機会になりました。書き進めているうちに、「これは自分の人生の棚卸しだな」と感じましたね。
――ご家族との日々があたたかく綴られているのが印象的でした。5人のお子さん達とのこれまでの日々を振り返って、あらためて思う事はありますか?
大変だったことは、話し出したらキリがないです(笑)。お金の面で言えば、もしかしたら今がいちばん大変かもしれません。子どもたちもそれぞれにお金がかかる時期に入ってきているので。
でも、それも含めてあらためて思ったのは、今の自分をつくってくれたのは、子どもたちや家族の存在だということです。
本にも書いたんですけれど、自分のキャラクターというか、今こうして世の中の皆さんに受け入れていただいている僕の姿って、自分で「こうなろう」と狙ってできたものではないんですよね。
ふり返ってみると、家族との日々が、自然と今の自分をつくってくれた。それが、結果的に世間にも受け入れてもらえたんじゃないかと思っています。
だから今は家族に対して、「鶴の恩返し」みたいな気持ちがあるんです。僕にできる恩返しって、子どもたちがこれからの未来をしっかり歩んでいけるよう、サポートしていくことかなって。今まさに、そういう「恩返しの最中」だと感じています。
思春期の子育て 悩みはあった?
――じつはnobicoでは、思春期の悩みに関する記事がよく読まれているんです。つるのさんはご家族の仲がとてもいいですが、お子さんが思春期の頃には、その時期ならではの悩みがありましたか?
娘に関して言えば、思春期の女の子によくある「パパイヤ期」ははなかったと感じています。あくまで僕の感想で、実際のところ娘たちがどう感じていたのかはわからないですけど。
実はこの本には、子どもたちが僕のことをどう思っているかが書かれているページがあるんですが、そこだけはまだ読んでいないんです。発売されるまでは読まないでおこうと思っていて(笑)。
だから、本人たちが当時どう感じていたか、本当のところはわからないんですよね。もしかしたら、「パパのあんなところがイヤ」みたいなことを思ってたかもしれないし。
ただ、育休中なんかは、娘たちの髪を結んであげたりしながら、日常のちょっとしたことや、いろんな話をしていたとは思います。それもあって、比較的何でも話せる関係ではあったんじゃないかな。
――お子さんが小さいころのからの関わり方が、いい関係を作ったのかもしれないですね。
ただ僕は、思春期の反抗って、あって当たり前のものだと思うんです。子どもの成長の一つの段階ですし、基本的には誰にでも訪れるものですから。親としては、温かく見守る姿勢が大切だと思っています。
うちの長男は今21歳ですが、男の子ということもあって、ゴリゴリの反抗期を経験しました。でも、今ではすっかり大人になって、一緒に過ごす時間も本当に楽しいです。
反抗期って、よく「第二の出産」と言われることがありますよね。第一の出産が肉体的なものだとしたら、第二の出産は、親子の心が一度離れるという経験で、お互いにとってつらい時期でもあると思うんです。
だからこそ、反抗期に悩むことも成長の一部であって、簡単に乗り越えられるものではない。でも、その過程で親もまた、少しずつ「大人」に育てられていく。子どもたちのおかげで、僕たちは「親」になっていくのかなと、勝手ながら思っています。
もちろん当事者にとっては大変な時期ですが、いずれ終われば、本来のその子にちゃんと戻ってきてくれます。だから、心配しすぎなくても大丈夫ですよ。
手を出しすぎず、子どもを「見守る」コツは
――つるのさんは子育てにおいて「見守る姿勢」を大切にされていますが、親が手や口を出しすぎずに見守るコツを教えていただけますか?
これは本当に難しいですよね。実は僕も奥さんも苦労しています。「見守る」と言うのは簡単ですが、実際その場面になると感情的になることもありますし、親も人間なので仕方がないと思います。
でも振り返ってみると、「子どもは最終的に自分で人生を選んでいるんだな」と感じることが多いんです。
もちろん、親としては子どもを守りたいし、どうにか助けてあげたい気持ちは強くある。でも、「子どもの人生は子ども自身が選ぶもの」と割り切ると、親の気持ちも少し楽になるんですよね。「親が何を言っても、子どもは簡単には変わらない」くらいの心の距離感でいるほうが、かえってうまくいくかもしれません。
僕はよく、子育てを野菜を育てることに例えるんですが、野菜って、ほったらかしにしたほうが意外と元気に育つんです。もちろん最低限の管理は必要ですけど、手をかけすぎることが逆効果になってしまうことがあるんですね。
野菜には自分で育つ力がある。同じように、子どもにも自分で育つ力がある。大人がそれを信じることで、「見守る」ことも、少しは楽になるんじゃないかと思います。
――お子さんが5人いらっしゃるつるのさんだからこそ見えてきた、子どもとの向き合い方や「ちょうどいい距離感」について教えていただけますか?
うちは子どもが5人いるんで、正直言って適当なんですよ。一人ひとりにじっくりかまってられないっていうか(笑)。
だから自然と適当になっちゃうんですよね。でも、僕はそれでいいと思ってます。
今は一人っ子や二人きょうだいが多いから、どうしても親が一人の子に集中して、じっくり見てしまうことが多いですよね。
それに加えて、最近は子どもを計画的に産んで、将来の目標に向けて育てる、そんなふうに親が「管理」する傾向が強いように感じます。
でも、昔はもっと、子どもは「授かるもの」という感覚があったと思うんです。
僕自身も、子どもって本来授かるもの、つまり自然のものだと思っていて。
その感覚の違いが、今の子育てと昔の子育ての大きな違いなんじゃないかな、と感じたりしています。
今の親御さんは一人ひとりをなんとか失敗しないように育てたい、という想いが強いように感じるんですけど、多分それは無理だと思うんですよね。
もちろん親が環境を整えたり、ヒントを与えたりすることは大事だと思いますけれど、結局、子どもは自分の道を自分で決めるものですから。5人の子どもを育てる中で、本当にそう実感しています。
それに、我が家のきょうだいは、みんなびっくりするほど個性が違うんですよ。親が同じでも、ここまで違うのかって思うくらい。そうなると、「親が何をやったって、どうしようもないな」と(笑)。
だからこそ僕は、子ども以上に、まず親自身が幸せに生きることが一番大事かなと思っています。自分が1、夫婦が2、子どもが3くらいのバランスで、それぞれがハッピーでいられるのが、いちばん理想的だなって。
──素敵な考え方ですね。お子さんが1人のときから、すでにそういうスタンスで子育てをされていたのでしょうか?
僕の子育てスタンスは、基本的にずっと変わっていません。自分の家庭から、そのまま受け継いだものだと思っています。
僕自身も、4人きょうだいかつ、両親が共働きの家庭で育ちました。父も母もとても忙しかったので、子育てはすごく適当だったと思います(笑)。当時は本当にバタバタしていて、あれこれ深く考える余裕なんてなかったはずなので。
でも、今こうして自分の人生を振り返ってみると、「自分はすごく幸せだし、最高の人生を送ってるな」って思えるんです。それってやっぱり、両親が作ってくれた家庭環境のおかげかなと。
だから、今の自分の家庭でも、自然とそれに近いことをやっている。ただそれだけなんです。もしかしたら、美化している部分もあるかもしれませんし、子育てに正解があるのかどうかも分かりません。でも、少なくとも今の僕は、「つるの家は最高」だと思っています!
(取材・文:nobico編集部)
つるの剛士 (著)『「心はかけても手はかけず」つるの家伝統・見守り育児 つるのの恩返し』(講談社)
人気絶頂時に芸能界では当時異例の男性育休を取得し、「イクメン」代表として取り上げられ、ベストファーザー賞を受賞。勉強好き、海外留学など、それぞれが好きな道を突き進み「生きる力」が強い5人の子。結婚20年を超えても仲良し夫婦。
令和家庭の理想像を地で行くつるの家ってどんな子育てをしてるの!?
本人のロングインタビューと母・3人の妹・愛妻・5人の子の徹底取材で、つるの家伝統の「手はかけずに気をかける」見守り育児と家族仲の良さの秘密が明らかに!
つるの剛士ってどんな父親?夫?息子?兄?つるの家総勢10名に赤裸々に語ってもらいました。家族からの通信簿、50歳を祝うメッセージなど、意外な真実とくすりと笑えるエピソードが満載です。
後半では、5児の父親であり保育士資格を持ち非常勤幼稚園教諭としても勤務する、つるの剛士の経験と知識を基に、子育てや夫婦関係のお悩み相談に対して、自身のエピソードを絡めながら実践的アドバイス。対談した知育ママインフルエンサーも、つるの剛士のアンサーに驚きと共感の嵐!
「生きる力」、「最強の自己肯定感」を育む“つるの格言”に注目!
「心配より信頼」
「子育てに共通のマニュアル本なんてない」
「負荷をかけて放っておくほうが豊かに実る!野菜作りと子育ては同じ」
etc.