「この後どうする?」でやる気アップ! 子どもの自発性を引き出す声のかけ方

島根太郎
2025.06.18 16:19 2025.06.24 11:50

笑顔で勉強している女の子

「宿題やりなさい」、「早く片付けなさい」…日常の慌ただしさからついついこんな声かけをしてしまう親御さんは多いでしょう。民間学童「キッズベースキャンプ(KBC)」創業者の島根太郎氏は、「この後どうする?」の問いかけを大事にしているそうです。

子どもたちのやる気スイッチを入れる「声のかけ方」を、島根太郎著『子どもの人生が変わる放課後時間の使い方』から紹介します。


※本稿は、『子どもの人生が変わる放課後時間の使い方』(島根太郎/講談社)から一部抜粋・編集したものです。

子どもがやる気を出す「声のかけ方」

ゲームコントローラーと子どもの手

「子どもの話をしっかり聴いてみよう」とアドバイスされて、「そんな必要はない」と反発される保護者の方はまずいないと思います。ただ、「そうですよね」と納得する一方で、日常の慌ただしさから「いつもいつもしっかり聴いていられない」というもどかしさを抱えている方は少なくありません。

実際に保護者の方から、ついついこんな声かけをして、子どもから「うるさいな」という顔をされ、親子げんかに発展してしまうという話もよく聞きます。

「宿題やりなさい」
「早く片付けなさい」
「もう寝る時間でしょう」

平日の夜、明日の学校の準備は終わったのかな? と、そんなふうに子どものことを思って私たち大人は先回りして行動を促してしまいがちです。でも、こう言われた後、子どもの心の中ではきっとこんな思いが巡っていることでしょう。

「今、やろうと思っていたのに……」
「もう少しで終わるところだったのに……」
「時間くらい自分でわかってるのに……」

もうちょっと待っていたら、子どもが自ら動いていたかもしれないのに、大人の先回りした声かけでやる気を奪ってしまっている……。とはいえ、宿題はしてほしいし、片付けは終わらせてほしいし、早く寝てもらいたい。どんな声かけをすれば、子どもの話を聴きながら、本人たちの主体性を損なわず、やる気を出してもらえるのでしょうか。

子どもたちのやる気スイッチを入れるには、自分で決めてもらうのが一番

KBCでは、「この後どうする?」と問いかけを大事にしています。宿題、歯磨き、片付けなど……。こうした日常の行動について、子ども自身に考えさせてみるのです。

実はこれ、親子関係に限らず、職場の上司部下、先輩後輩のコミュニケーションにも応用できる内容です。

子どもたちも一日の流れはわかっています。やらなきゃいけない宿題はあるし、明日の学校の準備をするべきだし、寝る前に部屋を片付けたほうがいいし、歯も磨かなくちゃいけない。でも、今見ているテレビの続きが気になるし、先にゲームで遊びたいし、やるべきことをやる、やる気はあるけど、まだ今じゃない。そんな子どもたちのやる気スイッチを入れるには、やっぱり自分で決めてもらうのが一番です。

そこで、親側も「今すぐやって!」というせっぱ詰まった気持ちになる前の時間帯に「今日はこの後、どうする予定?」と質問しましょう。すると、子どもは自分なりにその後の流れを組み立ててくれます。

「この番組を最後まで見たら、歯磨きする!」
「宿題やってから、ゲームで遊ぶ!」

人は自分で決めたことを口に出すと、モチベーションが高まります。これは心理学の研究で「宣言効果」と呼ばれているもの。自分で決めた約束を宣言することで、それを守ろうとする意欲が生まれるのです。

「考えさせる→決めさせる→信頼する→認める」というサイクルを繰り返す

微笑みあう親子

ここで大切なのが、その決定を認め、信頼する姿勢です。
「そっか。そうだね、じゃあその順番でよろしくね」
「先に宿題を終わらせてから遊ぶのはいい考えだね」

そして実際に行動できたら、しっかりとフィードバックします。

「約束通りにできたね」
「自分で決めて、実行できたんだね。すごいね」

この「考えさせる→決めさせる→信頼する→認める」というサイクルを繰り返していくことで、子どもは少しずつ自律的に行動できるようになっていきます。時には、その子にはまだ早いかもしれないと思うことでも、チャレンジさせてみることも大切です。

「やってみる?」という投げかけに「うん!」と答えたら、思い切って任せてみましょう。たとえ結果的にできなかったとしても、それは貴重な経験となります。むしろ、そうした「背伸び」の機会があるからこそ、子どもは成長していけるのです。

もちろん、毎回うまくいくわけではありません。心がけたいのは子どもへの信頼を示し続けること。その姿勢があれば、少しずつ関わり方も、子どもの反応も変わってくるはずです。

やる気を引き出すには「〜しなさい」という命令形をやめて、その代わりに「どうする?」と問いかけをして、子どもの答えを待ってみましょう。

島根太郎

株式会社東急キッズベースキャンプ代表取締役社長。一般社団法人キッズコーチ協会代表理事。1965年東京都目黒区生まれ。中央大学卒業。輸入雑貨事業や自然食事業等を経て、2003年株式会社エムアウトに入社。心理学に関わる事業開発を経験し、「小1の壁」の問題解決と非認知能力の教育を志し、2006年キッズベースキャンプを創業。民間学童保育のパイオニアとして業界を牽引。2008年12月には東急グループ入りし、東急グループの子育て支援事業の中核企業としての展開を開始。一般社団法人民間学童保育協会、東京都学童保育協会で理事を務める。保育士資格保有。

Instagram:@taros13

子どもの人生が変わる放課後時間の使い方

子どもの人生が変わる放課後時間の使い方』(島根太郎/講談社)

小学生の1年間の学校生活1200時間に対し、放課後の時間は1600時間。
この未来の貴重な「資産」となる時間を、塾や習い事だけで埋めていませんか? なんてもったいない!!
1600時間を「未来への投資をする時間」と考えると、小学生のうちにまず優先してやるべきことは、学校や塾の勉強での認知能力の向上ではなく、社会につながるための人間力=非認知能力をいかに育むか。
この人間力は、自立した個を確立のための自己肯定感、粘り強くものごとを進める力などの「自分軸」と他者とかかわるためのコミュニケーション力などの「社会軸」の二軸からなります。
と言っても難しく考える必要はありません。
基本は子どもたちのやりたい気持ちを信じて、周りの大人たちはそれをサポートすること。
民間保育園・学童を広く展開する著者が、多くの子どもたちと接し、キッズコーチと子どもたちのかかわりを通じて学んできたヒントを明かします。
むしろ、忙しい保護者にこそおすすめの楽しみながらできる子育ての提案です。