家、今買っても大丈夫? FPが教えるマイホーム購入の予算とタイミング
子育て世帯にとって、「マイホームの購入」は大きなライフイベントのひとつ。しかし、不動産価格が高騰する今、そもそも本当に家は買えるのでしょうか。
買うならいつがベスト? 住宅ローンはいくらまで?といったリアルなお金の悩みについて、ファイナンシャル・プランナーの伊達有希子さんの解説をご紹介します。
※本書は伊達有希子著『夫婦と子ども2人、世帯年収650万円。どうしたら家が買えますか? マンガでわかる!一生お金に困らないライフプランのつくり方』(大和出版)より一部抜粋、編集したものです。
住宅購入いくらなら買える? いつ買うのがいい?
2020年頃から日本で顕在化したウッドショックの影響や、大手(財閥系)ディベロッパーによる住宅供給コントロール、具体的には超富裕層向けのレジデンスなどにつられて、不動産価格が上がっています。
「いつかはマイホームが欲しい!」と考えている人は多いと思いますが、実際には、買わないではなく、買えないという事態があちらこちらで起きています。
年収500万円で、返済比率が40%を超えるとそもそも住宅ローンを借りることができません。500万円の40%というと200万円。これが年間返済比率の最大値です。
200万円を12カ月で割ると毎月16万円強です。年収から考えると、かなり高い比率ですよね。この40%という返済比率は現実的ではないというのが理解できるのではないでしょうか。また、借入可能額は返済可能額とは異なりますので、注意が必要です。
返済比率は一概に何%がいいと言えるわけではありませんが、20%~25%程度に抑えることができると安心です。
住宅ローンの融資は育休中や退職後も育休前の世帯年収で検討してくれるのでその点は安心かと思いきや、2人目の子が生まれて復職がままならなくなったケースなどでは「借りたはいいものの、返せない」という事態になりかねません。
買うからにはしておきたいマインドセット
自分が返済できる現実的な金額がわかったとしましょう。そのあとは、その価格の家が居住したい地域にあるかという問題が出てきます。特に東京都内で家族4人で住むとなるとかなり条件としては厳しいでしょう。
その場合、場所の変更や中古物件の検討が必要です。また、住宅ローンの金利が変動金利だった場合、段階的に上がることも考えられます。そして、変動金利が上がるタイミングは、残念ながらお給料が上がるよりも早いことがほとんどです。
夫の給料は上がっていないけれど、住宅ローンの支払いが増えるとなったとき、それまで仕事をしていなかった妻に働く覚悟があるでしょうか?
これは扶養か否かは関係なく、働く気があるかが重要です。バイトでもパートでもいいんです。1馬力よりは2馬力のほうが家計に余裕が出るのは容易に想像できますよね。働きたくないというマインドを秘めている女性もいらっしゃるので、家を買う前には夫とのすり合わせと自身の覚悟が必要です。
早く買えばいいものでもない
ここまでの話を読むと、不動産価格は年々上がっているし、若いほうが返済期間を長くできるので、買うのなら早く買ったほうがいいのではないか!? と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか? その考え、ちょっと待ってください。
家は夢や目標の1つではあると思いますが、若くして家を買うとその他のライフイベントへの資金が一気になくなってしまいます。人生が計画通りに進めばいいですが、何かアクシデントが起きて大きなお金が必要になるかもしれません。それに、趣味に使うお金もほとんどなく、旅行に行きたくても資金不足で行けなかったら……。
こういった観点から、2人とも健康で共働きを続けるという前提条件に基づいて、目いっぱいのローンを組んで家を買うのはおすすめしません。
一方で、じゃあ価格が落ち着くまで待てばいいかというと、そういうわけでもありません。待つという選択肢が取れるのは、現金がある人だけです。タイミングを見計らってポンと現金で買えるなら、価格の上下を見て自分の納得のいくタイミングまで待てばいいですが、多くの方は住宅ローンという負債を背負って家を買うことになります。
そうである以上、家を買う前にはきちんとライフプランをつくることをおすすめします。不動産会社は、貯蓄の額や、その持ち方(現金・有価証券・保険など)について確認する程度で、あなたの他のライフイベントのことまで考えませんし、返済比率などのことは上限を超えていなければ気にしません。要は売れればいいわけですから。
そのため、自分でマネーリテラシーを身につけて、判断できるようになる必要があります。
ローン設定時に押さえておきたいポイント
ローンを組む前にマネーリテラシーを身につけていただきたいことは当然として、FPの立場からアドバイスしたいことを3点述べておきます。
貯蓄は使わずに毎月の収入でやり繰りするのがベスト
頭金を入れるかどうかはその家庭によりますが、なるべくなら手持ちの貯蓄には手をつけずに毎月の収入でやりくりして住宅ローンを支払えるのがベストです。賞与などもあてにせず、毎月支払える額で住宅ローンを設定すると無理がないでしょう。
2025年現在、住宅ローン控除は年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除できます。変動金利で借りる場合、優遇金利を考えれば1%以下で借りられる金融機関もあります。ということは、貯蓄を取り崩すようなことはせず、頭金は入れずに、住宅ローンを借りた上で住宅ローン控除を活用したほうが税金面ではメリットがあるということになります。
火災保険はマスト。水災・地震も要検討
金融機関で住宅ローンを契約する際は火災保険に加入するのは必須です。火災保険加入は条件となっています。
このとき一番安いプランに加入するのはちょっと待ってください。エリアによっては水災などのオプションが必要だからです。安心が買えるのであれば私は加入したほうがいいと考えています。水災補償のオプションをつけたほうがよい地域についてはハザードマップで確認するのが早いでしょう。
建設会社によっては、自社の建物が耐震、免震であるがゆえに地震に強いと自負して地震保険をすすめないケースもあるとか……。判断が難しいと思いますが、私は保険を払う余裕がなくなるほど高い価格の家をそもそもすすめていません。加入できるのであればしておいたほうが安心だと思います。
団体信用生命保険は最低限でよい
住宅ローンに加入すると、団信(団体信用生命保険)加入も必須となります。ただし、よく団信に、 金利上乗せで+αの保障がついてくることがあります。ガンになったり、三大疾病で入院したりしたら、住宅ローン残高が0円になるなどです。しかし、こういった+αには金利の上乗せ、つまり余計な保険料支払いがついてくるということです。団信はあくまでも住宅ローンに対しての保険です。基準金利内の団信で万が一のときのカバーはできます。民間保険で置き換える人はそこまでいないですが、ライフプランをつくると特に若い方は民間保険を団信代わりに使うこともできるので(フラット35利用など要件あり)、最低限の団信に加入しておけば十分です。
買わないという選択をするとき
ここまで家を買う話をしてきましたが、選択肢としては「買わない」という選択も大いにあり得ます。なぜなら賃貸は家賃が大ブレしないんです。今後のライフイベントの見通しが立っていない時は動かないという判断も必要です。
住宅購入を焦らずに、まずは頭金の2割(目標値)を準備しておくことで、安心して家を購入できるという面もあります。
家を買うというのは大きな決断です。本当に家が欲しいのか? なぜ欲しいのか? 改めて考えてみていただくきっかけになれば幸いです。
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