初めての子育てでも迷わない「子どもの予防接種」の基礎知識 小児科医が教える「種類、副反応、費用、段取り」

吉澤恵里
2025.05.22 14:31 2025.12.20 16:00

小児科医に診察される赤ちゃん

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お子さまの健康を守るために欠かせない予防接種。しかし、ネットやSNSにはさまざまな情報が溢れ、安全性や必要性について不安を感じる保護者の方も多いのではないでしょうか。

「ワクチンの種類が多すぎて分からない」「副作用が心配」「スケジュールの組み方は?」など、初めての子育てでは悩みが尽きないものです。

今回は、現場で多くの親御さんと向き合っている竹内小児科内科クリニック院長の五藤良将先生に、予防接種に関するよくある疑問について伺いました。(取材・文/吉澤恵理)

定期接種と任意接種はどう違う?

パパと目をあわせる赤ちゃん

――予防接種には「定期接種」と「任意接種」があると聞きましたが、どう違うのでしょうか?

「定期接種は、国が『予防接種法』に基づいて市区町村に実施を義務付けているもので、基本的に無料で受けられます。一方、任意接種は、保護者の判断で受けるものですが、自治体によっては費用の補助が出る場合もあります」

――なぜ2つに分かれているのですか?任意接種は受けなくても良いのでしょうか?

「予防接種が定期接種と任意接種に分けられる理由には、感染症の重症度や感染力、過去の流行状況、ワクチンの実績などが関係しています。

定期接種では、麻しん(はしか)や風しんのように感染力が非常に強く、集団での感染拡大が起きやすい病気が対象となります。これらの病気に対しては、一定の接種率を保つことが特に重要です。多くの人が予防接種を受けることで『集団免疫』が形成され、ワクチンを接種できない乳児や、病気などで接種が難しい人々も守られる仕組みです。

一方、任意接種は社会全体を守る役割よりも、お子さま個人の健康を守ることに重点が置かれています。たとえば、おたふくかぜに感染すると、難聴や不妊症といった後遺症が稀に起きることがあります。任意接種も重要で接種については医師と相談して決めていただくとよいでしょう」

接種スケジュールを上手に段取りするコツ

――接種スケジュールを組む際のポイントはありますか?

「予防接種のスケジュールをうまく管理するために、以下の3つのポイントを押さえると良いでしょう。

1. 母子手帳を活用…予防接種のページを見て、標準的な接種時期を確認しましょう。
2. カレンダーやアプリで管理…接種予定をカレンダーを利用することで分かりやすくなります。最近では、予防接種管理アプリも便利です。
3. 優先順位を明確に…定期接種を優先し、その間に任意接種を挟む形が効率的です」

――1歳までに接種が推奨される定期接種は6種類あり、複数回接種する必要があります。そのため、最近ではスケジュールを円滑に進めるため同時接種が一般的になっていますが、安全性について教えてください。

「同時接種は医学的に安全性が確認されています。むしろ、同時接種を行うことで、お子さまの通院回数を減らせるだけでなく、効率的に免疫をつけられるメリットがあります

また、複数のワクチンを含む混合ワクチンを接種しても安全なように、単独ワクチンを同時に接種しても安全ですので、安心してご利用ください」

副反応は? 費用は? もし受けられなかったら?

――予防接種で副反応が出ることもありますか?

「接種後、発熱が見られることがありますが、通常は翌日までに回復します。安静にして様子を見てください。ただし、機嫌が悪くぐったりしている、食欲がない、明らかに体調が悪いなどの場合は早めに受診するようにしましょう」

―保育園や幼稚園など、集団生活を始める前に接種すべき予防接種と注意点を教えてください。

「入園前に必要な定期接種を済ませておくことが推奨されます。また、集団生活では感染リスクが上がるため、おたふくかぜやインフルエンザなどの任意接種も検討するのがおすすめです」

――風邪や体調不良で予定通り接種できなかった場合はどうしたらよいでしょうか?

「予定が遅れても、回復後にスケジュールを立て直せます。医療機関と相談しながら柔軟に計画を修正していきましょう」

――任意接種の費用が高額になることもありますか?

「任意接種は費用がかかる場合があります。ただ、多くの自治体で補助制度が用意されていますので、まずはお住まいの市区町村の保健センターに確認してみてください。」

お子さまの健康を守るために、予防接種は欠かせないものです。不安や疑問がある場合は、遠慮せずにかかりつけ医に相談しながら進めましょう。また、自治体の制度をうまく活用しながら、安心して予防接種に取り組むことが大切です。

五藤良将

五藤良将

防衛医科大学校医学部卒業後、自衛隊関係病院、千葉県を中心とした病院勤務を経て、2019年9月から東京都田園調布の竹内内科小児科医院を継承し院長。2021年10月から医療法人社団五良会の理事長となる。五良会クリニック白金高輪、五良ファミリークリニックセンター南と分院も展開している。

日本内科認定医、日本抗加齢医学会専門医、日本美容内科学会評議員、日本温泉気候物理医学会療法医、日本旅行医学会認定医、複数の学校校医、難病指定医など幅広く診療を行っている。