なぜ子どもは同じ絵をくり返し描くのか? モンテッソーリ教育が教える才能の伸ばし方

丘山亜未

「また同じ絵ばかり」…子どもが何度も同じ絵を描くのを、不思議に思ったことのある親御さんは多いでしょう。実はそれが、子どもの才能の芽を育てる“敏感期”のサインなのだそうです。

モンテッソーリ教師の丘山亜未さんの著書から、モンテッソーリ流・子育てのヒントをご紹介します。


※本稿は、『1分だけ子どもを待ってみる モンテッソーリ流 子どもの才能を伸ばす100の小さなこと』(丘山亜未/青春出版社)から一部抜粋・編集したものです。

心ゆくまで、同じことをくり返させる

あるとき、3歳の女の子が家中の紙にぐるぐると同じ模様を描き続けました。
お母さんは「また同じ絵ばかり」と不思議に思っていたそうです。
けれどこれは、モンテッソーリ教育でいう「敏感期」のあらわれ。書くことへの強い関心が芽生えた瞬間です。

敏感期とは、子どもが特定のことに強く惹かれる時期のこと。
言葉、数、自然など対象はさまざまですが、その熱中はすさまじく、大人には理解しにくいこともあります。
「昨日もやっていたのに、今日も?」と呆れるほど執着するのは、まさに“今、必要なこと”を吸収している証拠なのです。

ある日突然ペンを持ち、一心不乱に書き続ける。
はじめは殴り書きだったものが、次第に丸や三角などの形になり、やがて「ママって書いたんだよ」とお手紙をくれることもあります。子どものこうした姿に気がついて「今が文字の敏感期なんだ」と環境を整えれば、子どもは驚くほど自然に文字を習得していきます。

敏感期のヒントは、子どもの“偏り”に注目すること。
「やたらと同じことをくり返す」「止めても止まらない」――これらは敏感期のサインです。
敏感期は一時的で、やがて消えてしまいます。だからこそ、夢中になっていることに心ゆくまで取り組める時間をつくってあげることが大切です。

一見、同じことのくり返しに見えても、その中で子どもはスポンジのように知識や技術を吸収しています。
敏感期に見せるあの熱中こそが、子どもの中にある才能の芽を育てているのです。

「できる安心」を大事にする

大人は「できないことに挑むことで成長する」と考えがちですが、子どもは「できることをくり返すことで、力を伸ばしていく」人たちです。

6ピースのパズルができたら、すぐに次へ進むのではなく、しばらく6ピースをくり返す。10まで数えられるようになると、満足するまで毎日のように10まで数え続ける。それは「同じことをしている」ように見えても、子どもにとっては達成の喜びを味わいながら力を洗練させている時間なのです。

大人は「もうできたのだから」と、先へ進めたくなるもの。でも、くり返しの中でも、子どもの取り組み方は確実に変化しています。
最初は不安そうに間違えながら取り組んでいたのが、やがて落ち着き、次第に自信を持って取り組むようになる。
くり返しは動きを整え、理解を深め、工夫を生み出す時間なのです。

さらに少しだけ“橋をかけてあげる工夫”をすると、子どもの力は一層伸びていきます。10まで数えられる子に、「1から10まで数えてみよう」と声をかけ、そのあと「じゃあ次は5から11まで」とつなげていく。
「できる安心」からスタートして、「挑戦はほんの少し」。

これが子どもの意欲を支えるリズムです。
ゆっくりすぎるように見える歩みも、子どもにとっては確かな前進。
安心して積み重ねられる環境こそが、子どもの“できた!”を“自信”へと変えていきます。

1分だけ子どもを待ってみる モンテッソーリ流 子どもの才能を伸ばす100の小さなこと

1分だけ子どもを待ってみる モンテッソーリ流 子どもの才能を伸ばす100の小さなこと』(丘山亜未/青春出版社)

本書では「モンテッソーリ流・子育てのヒント」を100個紹介。
忙しい方でもできるように、最短10秒でできるような「簡単でシンプルなことだけ」を厳選してまとめました。
どこから読んでいただいても構いません。空いた時間に、1日たったひとつでいい。そのひとつで、子どもとの暮らしがガラリと変わります。
気になったものから、試してみてください。