6年生になったら学校行事は休ませる親は正しい? SAPIXに学ぶ「中学受験前の心構え」

佐藤智
2023.09.15 16:44 2023.08.01 11:50

勉強をする男女

「中学受験は子どもを潰してしまう」という噂を聞いたことがありませんか?今回は、中学受験のメジャーな疑問にSAPIX式でお答えします。

※本稿は、佐藤智著『10万人以上を指導した 中学受験塾 SAPIXだから知っている 頭のいい子が家でやっていること』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

佐藤智(教育ライター)
両親ともに教員という家庭に育ち、教育の道を志す。横浜国立大学大学院教育学研究科修了。中学校・高校の教員免許を取得。出版社勤務を経て、ベネッセコーポレーション教育研究開発センターにて、学校情報を収集しながら教育情報誌の制作を行う。その後、独立し、ライティングや編集業務を担う株式会社レゾンクリエイト(http://raisoncreate.co.jp)を設立。全国約1000人の教員へのヒアリング経験をもとに、現在は教育現場の情報をわかりやすく伝える教育ライターとして活動中。

SAPIX小学部
1989年の創立以来、論理的な思考力と表現力、知識にとらわれない豊かな感性、そして主体的に学ぶ姿勢の育成を教育理念として掲げ、受験指導に携わってきた。難関中学校への高い合格実績で知られている。小学部は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県に49校舎。中学受験指導した小学生は10万人を超える。

受験のために行事や学校そのものを休ませるべき?

リレーをする子ども

SAPIX小学部では、学校へはきちんと通ったうえで受験期を迎えることをおすすめしています。登下校があるほうが生活リズムをつくりやすいこともありますし、どんなに受験に向けてがんばったとしても、学校生活が小学生の基本であることは間違いないからです。

6年生になると、たまに「学校を休ませて受験に打ち込ませたほうがいいでしょうか」「学校行事に参加している場合じゃないと思っているんです」という保護者がいます。

しかし、子どもの成長は計算が速くなることや漢字をたくさん書けるようになることだけではないはずです。小学校で、クラスメイトと一緒にいろいろな体験をすることで成長できる部分が必ずあります。

たとえば、移動教室で親元から離れ2泊3日の間お友だちと過ごすことで、人間関係や身のまわりの生活管理の必要性などたくさんのことを学ぶでしょう。

運動会も友だちと団結することやがんばってきた成果を発表する大事な機会です。こうした子どもの成長の機会は奪わないようにしてください。

また、学校行事は子どもたちなりのストレス解消の場になっている側面もあります。大人も、ストレスを発散することで新たにがんばる力が湧いてきますよね。保護者が先回りして心配して、受験のために勉強以外の時間を排除しようとすることはおすすめしません。

小学校での生活を大切にして、きちんと人間的な成長をしていくことが子どもたちにとってとても重要なことなのです。

Check!
・学校行事が子どもの成長やストレス解消の場になる
・学校生活を楽しみながら受験勉強に向かう

 

保護者が勉強を教えてあげるべき?

6年生になったら学校行事は休ませる親は正しい? SAPIXに学ぶ「中学受験前の心構え」の画像2

中学受験をするにあたって、お父さんやお母さんがじっくり子どもの勉強をみてあげなければいけないと思い込んでいるケースは少なくありません。

しかし、それは必ずしも正しい姿勢とはいえません。

子どもの勉強に関心はもってほしいですが、保護者が子どもに教える必要はあまりないと考えています。親が子にマンツーマンで勉強を教えていると、教えすぎたり先回りしたりする危険性があります。本来は子どもが自分で考えられるように、「待つ」指導が必要ですが、それが親だとできなくなるからです。

学校や塾では、1対1にはならないので、子ども自身が自分の力で突破しようと、わからない問題に試行錯誤しながら取り組むようになります。

また、クラスメイトの発言を聞いて、「なるほど。そういうやり方があるんだ」と学ぶこともあるでしょう。さらに、まわりの子が集中しているのを見て、「自分もやらなければ」とモチベーションも強く働きます。 

中学受験に向けて勉強していると、6年生の後半ぐらいから自分のことだけでなく、「みんなで第一志望に行きたい」という気持ちが子どもたちに芽生えます。

ほかの子の合格を自分のことのように喜べるようになるのです。家庭のなかだけで勉強をさせていると、これらの効果は得られません。
もっというと、保護者が子どもの中学受験指導にあたっていると、ご家庭で抱え込みすぎてしまうのではないか、という心配もあります。

中学受験はあくまで子どもたちが受けるものです。保護者が何から何までやらなければいけないわけではありませんし、そう思い込むことはむしろNG。

学校や塾の専門家の手を借りながら進めていくほうが、結果的にうまくいくケースが多いでしょう。

Check!
・親子マンツーマンの勉強はうまくいかない可能性も。
・子ども同士で切磋琢磨したり、試行錯誤したりする機会を大切に