都会と地方の子どもの間で生じている「情報の格差」の問題点
地元のつきあいから飛び出したい
【ロダン】話が脱線したから元にもどすと、同じ土地の中で人が循環するしくみがあるからこそ、地元には地元のコミュニティがあるわけです。同じしくみが国全体で回れば、ナショナリズムを生み出すきっかけになるけど、1つの地域で完結していれば、それは地元愛になるわけです。
【ミナト】地元大好き、ジモティの世界だ!
【ロダン】そっちのほうが変に気をつかうことなく、ラクでいいという人もたくさんいます。そういう人がいるから、地域経済が回っているんです。若い人がみんな都会に出ていってしまったら、地方が衰退するのはさけられません。
【ナギサ】お年よりしか住んでない過疎地域がふえていると聞きました。
【ロダン】ただ、それは地域全体の話であって、みなさん1人ひとりのレベルでは、地元のつきあいが楽しいという人もいれば、そういう輪の中に入れなくて苦しんでいる人もいる。いくつになっても学校時代の上下関係がなくならないなんて、息苦しくてたまらないという人は、はなれた土地に引っ越すか、別の地域の大学や就職先を目指すことになります。
【ナギサ】相談できる大人がいないと、きびしそう……。
【ロダン】お父さん、お母さんに理解があれば、それにこしたことはない。でも、そうじゃないからといって、あきらめることはない。担任の先生、進路指導の先生、塾の先生やチューター、進学校に進んだ先輩、都会で暮らす友だちのお兄さんやお姉さん、親戚のおじさん、おばさん……。その気になれば、ツテはどこかに見つかるものです。
【ナギサ】大人の力を借りなさい、ということですね。
【ロダン】その人はなぜそこに行ったのか、どうやって地元から抜け出したのか、そのために何をすればいいのか。直接話を聞くことができれば刺激になるし、相手もきっと親身になって相談に乗ってくれるはず。
たとえ直接話はできなくても、そういう人がいると知るだけでも意味があります。あの人にできたのなら、自分にもきっとできる。そう信じることができたら、あとは実際に「やるか、やらないか」だけの問題だからです。
【ミナト】やらないってことはないよね。
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「なんで世の中は平等じゃないの?」「かわいい子は得だよね」など、子どもでも大人でも、ふと抱くギモンはさまざまにあるもの。こういった誰もが一度は感じる素朴なギモンをベースに、「正しさ」について、「知の巨人」佐藤優先生と考えていきます。