発達障害は関係ない? 親を悩ませる子どもの「やりたくない!」と折り合いをつける4つの方法
入学、進級から早2ヶ月。お子さんは環境の変化になれましたか? 身のまわりのことや宿題など、自分でやるべきことは増えていくのに、どうしても気が乗らなくて進まない……。
こうした「やりたくないけれど、やらなければいけないこと」ができずに困っている子をどうサポートすればいいか、『特別支援教育が教えてくれた 発達が気になる子の育て方』の著者であり、特別支援学校で働く平熱先生に聞きました。
発達の気になる子が「やりたくない」と向き合うアプローチ
あー、めんどくせー。
毎日毎日、やりたくないことだらけです。
あれもやりたくないし、これもやりたくない。仕事は毎日行きたくない。
それでもわたしたち大人は、どうにかこうにかやりたくないことに向き合って、折り合いをつけて、泣きながら日々を進めています。
おなじように「やりたくない」ことだらけの発達が気になる子どもたちが、この困難に向き合うためにはどんなアプローチがあるのでしょうか。 今回はそれをいくつか簡単に紹介していきますね。
(1)活動そのものを、たのしくする
究極は、これです。理想的にはこの形です。
「やりたくない」活動そのものを、少しずつ、ときには大胆に変更しながら「やりたい」に近づくように仕向けていく。掃除機をかけるのは面倒だけど、好きな音楽やラジオを聴いてればちょっとは「やりたい」とか「やってもいいか」に近づくでしょ。
そんな風に環境を設定しながら、「活動そのもの」をたのしめるようにしていくことが、まず狙いたいアプローチです。
あとは「やるしかない」環境を設定して、「やりたくないけど、やる(しかない)」にもっていくことも、折り合いをつけるという意味では大事なので、子どもの性格や体力などを考慮しつつ、狙っていきたいところです。「やりたくなかったけど、やったらたのしい」とかふつうにあるので。
(2)ごほうびを設定する
いちばんシンプルで簡単な方法です。「◯◯をしたら◯◯がもらえる」ですね。
わたしたちで言うところの「月に20日働いたらお給料がもらえる」です。
ただこの公式だと、「20日の労働」がキツすぎたり、自分と合わなかったりした場合や、「お給料」が自分のがんばりと見合わないと判断した場合には、転職したり辞めたりします。つまり、かけた労力やしんどさとリターンのバランスが大切ということです。
なので、子どもたちには「そこまでしんどくない活動」で「ちょい大盛りのごほうび」くらいの塩梅からスタートすることで「やりたくない」に向き合う練習をしていってください。
(3)「ちょっと嫌い」を選ぶ
いろんなことを「選ぶ」練習をしていきましょう。
一方的に指示される「これをやってください」に従えることも大切ですが、「これとこれのどっちにする?」を自分で決めて、責任をもって取り組むこともまた、大切です。大人たちが、子どもたちに選択肢を提示していくことを忘れないでください。
選ぶことにまだ慣れていないうちは「好き」と「好き」から選ぶことからはじめます。焼肉でも寿司でもどっちもいいですもんね。もしくは「好き」と「嫌い」で「好き」を選ぶ。ここも簡単。
問題は「嫌い」と「ちょっと嫌い」から「ちょっと嫌い」を選ぶこと。
この練習をしていくことが大事です。
「めんどう」と「ちょっとめんどう」とかもいいですね。それを選んでがんばったあとに「やってよかったな」と思えるくらいのリターンがあれば、「やりたくない」と戦えるかもしれません。小さなことから選んでいく、日々の練習が大切です。
(4)小分けにする
わんこそばを100杯食べられる人も、おなじ量が1杯で提示されたら食べられないはずです。あれって「食べて、次」「食べて、次」と、1口で食べられる量の繰り返しだからいけるんです。
子どもたちの「やりたくない」もおなじように「小分け」にできるところがないかを、考えていきましょう。
目指すべきは「まったくやらない」より「ちょっとでもやった」です。活動の一部だけでもいいし、難易度を下げてもいい。「やりたくない」の中から「やってもいいか」をひとかけらでも見つけられたら、そこから手を広げてみましょう。
「すべて子どもにやらせる」などと、意地になって不必要な押し問答を繰り広げるくらいなら「ここまではわたしがやるから、あとはやってみて」と折り合いを提示していくことが大切です。お互いがしんどくなりすぎない環境の設定は、親子の心身を守ることにもつながります。
この中のどれかがヒットするかもしれないし、しないかもしれない。この中のどこか一部分が使えるかもしれないし、まるっと使えるかもしれない。
書籍でもSNSでもずっと伝えていますが、特別支援教育に限らず、教育、もっと広げれば子育てに、声を大にして言えることがあります。
「結局、子による」んです。
だから、小手先のノウハウや接し方ばかりに目を向けるんじゃなく、「この子はどんな子?」をよく見て、よく考えるのが、結局のところいちばんの近道かもしれません。
ここに書いたあれこれは、アプローチの「打率を上げる」ためのヒントであり、「ヒットを約束する」ものではありません。
それだけは間違えないでね。
特別支援教育が教えてくれた 発達が気になる子の育て方(かんき出版)
発達につまずきのある子どもたちと、そのまわりにいる大人のために、特別支援教育をベースにした「困った!」を小さくするヒントを凝縮。将来子どもが社会に出たとき、たくさんの人やサービスに助けてもらいながら、少しでも自立して生きるために必要なことを考える。