小1の壁とは? 仕事と子育ての両立が難しくなる原因と乗り越え方
「小1の壁」という言葉をご存知でしょうか?実は保育園から小学校に上がるときは、親にとって今までにない大変な時期になることがあります。特に共働きをしている方であれば、仕事と子育ての両立が難しいと感じられることも。
しかし対策方法はあります。小1の壁が起こる原因を理解し、適切に対処すれば、子どもを含む家族全員がストレスなく楽しい毎日を送れるでしょう。
【監修】高祖常子(こうそ・ときこ)
資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級、キャリアコンサルタントほか。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。元『育児情報誌miku』編集長。NPO理事、国や行政の委員を歴任。3児の母。主な著書に『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版 )他多数。
小1の壁について
「小1の壁」とは、子どもが小学校に入学して仕事と子育ての両立が難しくなることです。
小学校に入学すれば、仕事がしやすくなると思われている方もいるのではないでしょうか? しかし実際には、子どもを預かってもらえる時間が短くなること、保護者会に参加しなければならないこと、そして何よりも夏休みや冬休みなどの長期的な休みがあることから、仕事との両立が難しくなってしまうことが多いのです。
保育園であれば延長保育をお願いできました。小学校に上がっても学童保育があります。しかし学童保育は保育園よりも早く終わるので、遅くまで子どもを預かってもらうことが難しくなるのが現実。
小1の壁は、保育園から小学校に入学する際の環境に変化によって起きるのです。
年間を通して起きる小1の壁
小1の壁は年間を通して起きてしまいます。季節ごとにどのようなことが起きるのか見ていきましょう。
・春:入学後は子どもの帰宅が早く、保護者会・PTAの参加が増える
・夏:夏休みになって子どものお昼ごはんを用意しなければならない。学童保育に入っていない場合は、日中どこで過ごすのか手配することが必要になる
・秋:日が短くなるにつれて下校時の不安が増えるとともに、運動会などの学校行事が増えて忙しくなる
・冬:インフルエンザの流行時期で学級閉鎖になったり、子どもが学校を休まなければならなくなったりする
このように小学校に入学すると、保護者会やPTAなどの保護者行事が増えるとともに、1か月半にも及ぶ夏休みが待っています。冬になると風邪やインフルエンザで、学校に通えなくなってしまうことも。
小1の壁は入学して間もない頃から、小2に進級するまで年間を通して続くことになります。
小1の壁が起きてしまう原因
それでは小1の壁が起きてしまう原因について、もう少し詳しくご紹介していきます。
入学準備
まずは入学準備の段階からです。
小学校に入学するには、さまざまな準備が必要になるものです。例として、学習デスクやランドセル、毎日の学習で使う文房具、体操服、給食袋、ピアニカなどが挙げられます。他にも必要なものはまだまだたくさんあります。
入学までにすべて揃えて記名しなくてはならないため、小学校に入学するまでに、自然と親は忙しい状況に置かれてしまうのです。
学校活動への参加
そして小学校に入学した後に待っているのが、学校活動への参加です。PTA活動や保護者会など、親が参加しなければならない行事はたくさんあります。
もしPTAの役員になったら、仕事を早く切り上げたり、平日に半休など取らなければならないかもしれません。
また授業参観、保護者面談、運動会などの行事と仕事との両立も、小1の壁のひとつです。
預けられる時間の短縮
保育園と比べると、学童保育に預けられる時間は限られており、通常保育園よりも早く終了することが一般的です。延長保育が可能だった保育園とは異なります。なかには17時までしか預かってもらえないところもあります。
とは言え、小学校1年生を1人で帰宅させるのは不安なもの。仕事を早く切り上げて、迎えに行かなければならないこともあるでしょう。
時短勤務がなくなる
小学校に関することだけでなく、職場での待遇が変わることで小1の壁を感じることもあるかもしれません。多くの企業で、「時短勤務は子どもが小学校に入学するまで」とされているためです。
そのため会社の規定に合わせて勤務しなければならなくなる方はとても多く見られます。その状況で早く帰らなければならないことがあれば、職場で罪悪感を抱いてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
宿題のフォロー
保育園と小学校とで変わることのひとつに、「宿題」があります。小学校に上がると、子どもの宿題のフォローが必要となるでしょう。音読を聞いたり、わからないところを教えてあげたり。
自宅に帰ってからも宿題のフォローが必要となり、家事が進まないと悩む方も少なくありません。
夏休みや冬休みなどの長期休み
小1の壁として最後にご紹介するのが、夏休みや冬休みなどの長期的な休みがあることです。休みの間は子どもの昼食も用意しなければならなかったり、学童保育が定員に達してしまったりして親は忙しくなります。
共働きの方であれば、長期休み中の子どもをどこにどうやって預けるのか、あらかじめ考えておいたほうが良いでしょう。
国や自治体が行っている小1の壁の対策
国や自治体では、小1の壁を感じている親に向けてさまざまな対策を練っています。たとえば、厚生労働省と文部科学省が連携し、策定した「新・放課後子ども総合プラン」などがあります。
こちらは、放課後児童対策として以前策定された「放課後子ども総合プラン」をさらに推進させるため に策定したプランです。
放課後子ども教室と放課後児童クラブを一体化させたり、学童保育の時間延長をしたりなどの効果が現れています。
それでは、その他に行われている対策についても見ていきましょう。
ファミリーサポートセンター
まずは「ファミリーサポートセンター」と呼ばれる、自治体が運営するサービスについてです。有償ではありますが、子どものお迎えを依頼したり、一時的に預かってもらえたりします。
自治体によって運営されているため安価で利用しやすいでしょう。
放課後子ども教室
放課後子ども教室は、保護者の就労状況にかかわらず、すべての子どもが対象です。地域住民の協力のもと、学習や体験、交流活動、スポーツなどの機会を提供することを目的としています。管轄は、文部科学省です。
料金は自治体により異なりますが、一般的には無料~月数千円程度で利用できます。
放課後児童クラブ
「放課後児童クラブ」は、共働きや親が入院している家庭の子どもが対象となるサービスです。
厚生労働省が管轄しており、利用するには認定を受けなければなりません。しかし利用料金が無料である自治体もあり、放課後に子どもの遊び場や生活の場を作ってもらえるため、条件に合うなら積極的に利用したいところです。
料金は、放課後子ども教室と同様で、一般的には無料~月数千円程度です。
参考:厚生労働省 放課後児童クラブと放課後子ども教室について
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/06/dl/s0608-11c_0068.pdf
小1の壁を乗り越える方法
親にとってつらい小1の壁を乗り越えるためには、あらかじめ対策方法を練っておくことが大切です。小1の壁を乗り越えるための方法について知っておきましょう。
家族内でよく話し合う
まずは家族内でよく話し合うことが欠かせません。子どもの帰宅時間と出社・退社時間が噛み合わないなら、親のどちらかが時間をずらすことはできないでしょうか?
また子どもが預け先に納得しないこともありえます。子どもの意見も聞きながら、親の時間的調整によって解決できないか考えてみることが必要です。
働き方・労働時間を見直す
会社によっては、働き方や労働時間を見直せることもあるでしょう。たとえば最近では、在宅勤務可能としている会社も少なくありません。また残業時間を減らしたり、フレックスタイム制にしてもらったりすることもできるのではないでしょうか?
会社と掛け合って働き方や労働時間を見直せば、小1の壁をクリアできる可能性も見えてきます。
できる限りのフォローにとどめる
小学校に入学したばかりの子どもには、多くの心配を感じるでしょう。しかしできる限りのフォローにとどめることも、子どもの成長の糧となります。
1日中ずっと子どもにつきっきりになると、子どもの自立心を妨げてしまうことも。新しい環境での不安な気持ちに寄り添いつつも、フォローを最小限にして、子どもの成長を見守ることは親の役割のひとつかもしれません。
保護者同士で情報を共有する
小1の壁については、同じように悩んでいる保護者の方もいるでしょう。保護者同士で情報を共有すると、良い情報が手に入ることもありますし、話すだけでも心がスッキリとします。
もちろんご家庭の中での情報共有でも良いでしょう。誰かに話すことで気持ちをわかってもらえたり、良い情報が得られたりするものです。
習い事をさせる
小1の壁をクリアするための効果的な方法が、習い事をさせることです。学童保育は保育園よりも早く終了しますが、習い事ならさらに遅い時間まで対応している可能性もあります。
ただし、新しい習い事を始める場合は、超学校生活が落ち着いてからにしましょう。子どもも新しい学校生活に疲れています。小学校も、学童も、習い事も一緒にスタートとなっては、子どもの心や体にも負担がかかります。ある程度の生活のサイクルができてから、子どもとも相談して習い事にチャレンジしてみるのもいいでしょう。
民間学童を利用する
学童保育ではなく、民間学童を利用するのも方法のひとつです。民間学童なら遅い時間まで子どもを預かってもらうことができますし、夕食を用意してもらえるケースや送迎してもらえるケースもあります。料金はかかりますが、親の子育ての負担がかなり軽減されるでしょう。
小1の壁を乗り越える方法はさまざま
小1の壁の原因や対策法についてご紹介してきました。親にとって大変な「小1の壁」ですが、乗り越えるための方法はたくさんあります。民間学童を利用したり、 親同士で調整するのはもちろん、子どもともよく話し合ってみましょう。
保育園に行っていた頃に比べて忙しい、仕事との両立が難しいと感じるかもしれません。そのようなときは今回の記事を見直して、なにか良い解決策はないか考えてみてください。
関連書籍
こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て(かんき出版 )
メディアに話題になった『イラストでわかる 感情的にならない子育て』(2017年)の第2弾。
著者は、前作同様「どならない、たたかない子育て」を推進し、4万6000人のママとパパにアドバイスしてきた、子育てアドバイザーの高祖常子さん(育児情報誌miku元編集長)。
セーブ・ザ・チルドレンジャパンの2万人アンケートによると、約6割が子どもへのしつけとして体罰(叩くこと)を容認しているという結果が出ているとのこと。
「毎日イライラ」「たたきそうになった」「どなってばっかり」と自己嫌悪するママやパパに贈る、「子育ての困った」をまるっと解決してくれる1冊です。