子どもがすすんで「お手伝い」をしてくれた理由 池江璃花子さんの母親が子に伝えていたこと

池江美由紀

パリ五輪出場を決めて注目される競泳の池江璃花子選手。あきらめない精神は称賛を集め、また多くの人へ勇気を与えています。

そんな池江璃花子の選手の親である池江美由紀さんは、璃花子さんを含めた3人の子を母一人で育ててきました。時間と家事に追われる美由紀さんを助けたのが、子どもたちの積極的なお手伝いだったそうです。

幼児教室も運営する池江美由紀さんが、著書『子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉』で子どものお手伝いについて触れた一節を紹介します。

※本記事は池江美由紀著『子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉』(PHP研究所刊)より一部抜粋・編集したものです

自分のことは自分でさせる

子どもの自立は、子育ての重要な目的の一つです。いつまでも親が手取り足取り、子どもの面倒を見てあげることはできません。

「自分のことは自分でやる」─これは、子どもが生きていくうえで基本的なことなのです。

親は、子どもの身の回りのことをすべて世話しようとするのではなく、子どもが自分でできるように導いていくのです。

私の3人の子どもたちは、みんな保育園の頃から、上履きは自分で洗っていました。スイミングスクールに通う荷物も自分で準備し、自分で片づけていました。帰ってきたら、私がバッグから中身を出して洗ってやるなんて、したことはありません。

とはいっても、知らん顔をして放っておくのではありません。「スイミングの準備はできた?」「使ったものは洗濯して干しておこうね」「明日の学校は○○と○○がいるんだね。持ち物リストを作ってチェックしよう」などと、折に触れ、声をかけたり、促したりしていました。

池江家のルール「回転ずしで自分が食べたいものは自分で」

家族で回転ずしに行ったときも、自分が食べたいネタは自分で注文するのが我が家のやり方でした。

「マグロの赤身ください!」「サーモンをサビ抜きでお願いします!」

今のようにタッチパネルで注文するのではなく、カウンターの向こうにいる職人さんやフロアの店員さんに、直接声をかけて注文する時代です。子どもたちは臆することなく、大人に交じって欲しいものを自分で注文していました。

外で「トイレに行きたい」と子どもが言えば、たとえ海外であっても、「じゃあ、あの人に、どこにあるか聞いておいで」と言って、お店の人などに自分でトイレの場所を尋ねに行かせました。

親が先回りして手助けするのではなく、必要な情報は自分で取りに行くのだという経験を、小さい頃からさせておくことが大事です。やってくれるのが当たり前ではなく、自分でやるのが当たり前という環境づくりが大切です。

そうすると、結果的に親も楽になりますし、子どもも自立できるのです。

【ポイント】子どもが必要とする情報は、親が先回りするのではなく、小さい頃から自分で取りに行く経験をさせる。

お手伝いで責任感を育てる

お手伝いも、人間教育の一つです。

子どもは、いずれ親の手を離れて、自分の責任で世の中を生きていかなければなりません。身の回りのことを自分でできるようにするだけでなく、家のなかでの共通の仕事の一端を担うことで、将来、社会で責任を果たしていく準備にもなります。

私は母子家庭で仕事を持っていましたから、3人の子がいる家庭の家事をすべて1人でこなすのは、かなり骨が折れました。

少しでも家事の負担が軽くなれば……という思いもあって、私は3人の子どもたちには積極的にお手伝いをさせました。

お手伝いは、子どもが大きくなってからやらせようとしても、面倒なことをやらされているという意識が強くなり、難しくなってきます。小さい頃から、当たり前の習慣として身につけていくことが理想的です。

子どもには、大人のまねをしたがる時期があります。「まだ早いから」「危ないから」と手を出させないようにするのではなく、何でもやりたがる子どもの意欲を生かして、親の見守りのもとでやらせてみるとよいと思います。

もちろん、大人のようにうまくできるわけではありません。でも、初めから結果を求めるのではなく、子どものやろうとする意欲を認め、少しでもできた部分を大げさにほめてあげます。

すると子どもは、自分にもできたという達成感を味わい、「次はもっと上手にやりたい」という前向きな気持ちになります。

子どもにお手伝いしてほしいことは、「これを手伝ってよ」とか、「手伝いなさい」とか言うのではなく、「これはね、しっかりしてる子じゃないとできないことなんだけど、あなたならきっとできると思うわ」と言って仕事を渡します。

子どもがすすんでお手伝いをしてくれるための声掛け

我が家では、「しっかりしてきた」「何でもできるようになってきた」ことのごほうびとして、お手伝いをやってもらいました。

子どもは、何かできるようになることがとてもうれしいのです。そして、親にそれを認められると、さらに意欲が高まるのです。

実際にやってくれたら、(その出来栄え、仕上がり具合はともかく)ほめました。お手伝いは、ほめる”種”を植えることにもなります。こうして家庭のなかでの責任感も育っていきます。

たとえば、我が家では、「洗濯物たたみ」「食器洗いと後片づけ」「おふろの掃除」など、9つの家事をリストアップして、3人の子どもたちで分担してやってもらいました。当番表を作って壁に貼り、今日は誰が何をするのか、わかるようにしておくのです。

私は仕事をしていて時間がなかったので、子どもたちがそれぞれ自分の役割を果たしてくれて、本当に助かりました。

「子どもには難しい」「よけい手間がかかる」と言って、お手伝いをさせないよりも、多少難しいこと、それをやらないと家族みんなが困ってしまうようなことを与えることが大切だと思います。

「自分がやらなければ、ほかの人が困ってしまう。家がまわらなくなる」というくらいのものを背負うからこそ、そこに責任を感じるようになるのです。最初はうまくできなくても、「ママ、助かったわー」と認めて感謝しましょう。

何度も繰り返せば、少しずつうまくできるようになります。小さな「できた」という体験から、自信が生まれ、それはやがて、社会でも何かの役に立ちたいという奉仕の気持ちにつながっていくと思います。

【ポイント】お手伝いは、子どもが大きくなってからやらせるのではなく、小さい頃から、当たり前の習慣として身につけさせておく。

子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉

子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉』(池江美由紀)

競泳の池江璃花子選手を育て、子どもの能力開発教室で指導してきた池江美由紀さん。幼児教室で、また3人の子育てを通して実践してきたこと、学んだことを、【池江式】子育て法としてまとめたものです。
強くやさしい心を育み、才能を引き出す【池江式】子育てメソッドを、イラストや写真を交えて解説しています。