「言うことを聞かない子ども」の悪習慣を変える、心理学的な1つの手法

竹内エリカ
2024.04.18 17:16 2024.04.09 11:50

小学生の男の子

夕飯の前にお菓子を食べたいと言ったり、いつまでもYouTubeを見て夜更かしをする子ども…。悪習慣をやめさせようと叱っても、逆に反抗心を持たれてしまうケースがあります。どうしたら反抗心を煽らず、やめさせることができるのでしょうか? 一般財団法人日本キッズコーチング協会理事長の竹内エリカさんが解説します。

※本稿は、 竹内エリカ著『心理学に基づいた 0歳から12歳 やる気のない子が一気に変わる「すごい一言」』(KADOKAWA)から、一部抜粋・編集したものです。

ずっと動画を見ているのをやめさせたいとき

タブレットに熱中する子ども

× 動画ばかり見ていちゃダメ!
〇 見てもいいよ。あとひとつだけね



・させたくないことがあっても「〜しちゃダメ」は避けて
勉強してほしいのに、テレビを見たりゲームをしたりと、一向に勉強する気配を見せない子ども。そんなとき、つい「遊んでばかりいちゃダメ」「ゲームはダメ」という言葉をかけてしまうものです。

しかし、「遊んでばかりいないの」と言われて、子どもは「はい、わかりました」と言うでしょうか? 「ゲームはダメ」と言われて「はい、すぐにやめます」と言うでしょうか?

そんなに素直だったら、子育てはもっと簡単なはず。「勉強しよう」と意欲的になってくれることはなかなかありません。

「もっと遊びたい!」「みんなもゲームやってるもん。なんで僕だけダメなの?」などと反論が返ってくることが多いはずです。実はこれには論理的な理由があります。

これが、心理的リアクタンスのタイプ「禁止型」。「カリギュラ効果」と呼ばれる現象で、禁止されることで逆に「やりたい」という心理が働くというものです。

伏せる子どもを見つめる母親

現象の名前は、1980年にアメリカで放映された映画「カリギュラ」に由来しています。内容がとても過激なために上映禁止になったのですが、それがかえって人々の関心を引いて、大ヒットにつながりました。「見るな」と言われると見たくなってしまう人の心理ですね。

これは子どもにも通じるもので、「宿題をやらないと遊んじゃダメ」と言われると遊びたくなり、「テレビをつけちゃダメ」「YouTubeは見ちゃダメ」と言われるとテレビやYouTubeが見たくて仕方がなくなってしまうのです。

大人も一緒ですね。甘いものを控えようと思うと、ついおいしそうなケーキが食べたくてたまらなくなるとか、今日は早く寝ないといけないと思うともう少しだけ起きていたくなるとか。そんな経験はないでしょうか?

人はしてはいけないと禁止されるほど、そのことばかり考えるようになってしまうのです。

効果的な方法に「いいよ話法」があります。

いいよ話法とは、まずは「いいよ」と受け止めたあとに「◯◯したらね」と条件を出す会話法のこと。「ダメ」と言うと反抗心を刺激するので、まず肯定してあげるのが効果的です。声かけ例を含めて次項で具体例を紹介します。

「お菓子食べたい!」と要求してきたとき

おやつを食べる子ども

× ごはんが食べられなくなるからダメ!
〇 いいよ。ごはんを食べたあとでね



「いいよ」と言った数だけ、子どもの才能が伸びる
子どもが「お菓子食べたい!」「もっと遊びたい!」とおねだりをしてきたとき、反射的に「ダメ!」「ごはん食べられなくなっちゃうでしょ」「もう寝る時間よ」などと言ってしまうものです。

心や時間に余裕がないとつい「ダメ」と答えてしまいますが、このときの声かけにひと工夫することで子どもの反応が変わっていきます。

おすすめしたいのが、「いいよ話法」です。相手が言ってきたことをまず「いいよ」と受け入れ、そのあとに条件を出すというテクニックです。

たとえば、「お菓子食べたい!」と言われたら、「いいよ。ごはんを食べたあとでね」というように。「ダメ! まだごはん食べてないんだから」と言うのとでは、同じ意味でも受ける印象は全く違いますね。

いいよ話法をとることで、子どもの反抗心を煽らないだけでなく、子どもが自由に発言できるようになります。

まず「いいよ」と受け入れてあげることで、子どもは「肯定された」と感じます。そこで満足する場合もありますし、やっぱり食べたいと思った場合は交渉に進むこともできます。

その場合は、

子ども「やっぱり食べたいな」
親「でも今食べたらごはん食べられなくなっちゃうよね」
子ども「ごはんもちゃんと食べるから」
親「じゃあ1個だけにしようか」

のように、少しずつ譲りながら話を進めることで、子どもに交渉力が身につきます。

交渉力が身につくと、子どもは賢くなります。何か問題が起きても「じゃあこうしたらどう?」と提案して着地点が見出せるようになり、できないことが少なくなっていきます。100%願望が叶えられなくても自分の中で合点がいくようになり、精神的にも不満を減らせるようになるのです。

ごはんを食べる女の子

0~2歳への声かけ

今では小さい子でもスマホやタブレットに触れられる環境があります。YouTubeなどの動画は視覚的な刺激が強く、子どもが一度見始めたらやめられなくなります。

「もっと見たい!」とねだってきたら、「いいよ。でもあと1本にしようね」と言うといいでしょう。その際、子どもが見続けてしまわないよう、YouTubeの自動再生設定をオフにする、YouTubeではなくDVDを活用するなどすれば安心です。

3〜6歳への声かけ

買い物に行ったとき「お菓子買って!」と騒ぐ子は多いですね。「ダメだよ」と言っても「はい、わかりました」とは言いませんし、「やだ! 買って買って」とさらに大声で騒ぐ場合も。

そんなときは「いいよ。この買い物が終わったら100円分だけね」と言ってみてください。騒いでいた子どもも、心がラクになるはずです。

7〜12歳への声かけ

この年齢になるとゲームにハマる子が多く、「ゲーム買って」とねだられることもありますね。「友達はみんな持ってるのにどうして僕だけダメなの?」と言ってきたりもします。

高価なものも多いゲーム機器。「高いからダメ」と言いたくなりますが、そこで「いいよ。ただしお母さん・お父さんを説得できたらね」と言ってみてください。子どもは説得するための理由を必死で考えるでしょう。反抗心は確実に収まります。

竹内エリカ

竹内エリカ

幼児教育者。淑徳短期大学非常勤講師。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。20年にわたり、子どもの心理、教育、育成について研究。2児の母。『明るい子どもが育つ 0歳から6歳までの魔法の言葉』(中経出版)他著書多数。

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